子供の特権



タケに呼ばれて、んちに来た。
それまではよかったんだけど、其処に18歳のはいなくて
代わりに ミニがいた。

これがかなり可愛くて、ずっと見てたら死ぬって位 犯罪。
必死に俺と竜の膝に乗ろうとしてた姿なんて 悶絶・・

どう見ても・・3歳児じゃね?
今着てる甚平、どうやって見つけたのか・・・
つーか、最初からコレ着てた訳じゃねぇだろ?

「なあタケ、は最初からコレだったんか?」

第一発見者のタケを呼び、自分の膝に乗ってはしゃいでるを示し
ふと思った疑問をぶつける。

聞かれたタケは、何故か一瞬頬を赤く染め
不思議そうに見てる俺と竜に言った。
最初はちゃんとパジャマだったよ・と。
ちょっと待て、つー事はだ・・甚平に着替えさせたのは・・・

「タケ・・てめぇ、のハダカ・・・!!」
「見てないって!俺だって混乱してたんだから!」
「隼人、よく考えろよ。タケは小さくなってから甚平にしたんだろ」

興奮した隼人は、が膝の上にいるのも忘れて
クワッ!とタケへ掴みかからんと怒鳴る。
其処へ、冷静に指摘したのは 竜。
小さくなってから、甚平に代えたんなら子供としてのハダカしか見てない。

何時もの無表情で事態を冷静に分析した竜。
ピタッと動きを止め、竜を見てからタケを見ると
必死にコクコクと頷いてる。

どうやら竜の言う通りのようだ。
って言ってもさ、子供としてのハダカは見たって事だよな?

何か腹立つかも・・・。

さてはて、何故かしらねぇが子供になっちまった俺。
隼人は何を考えたのか、タケを問い詰めたが
的確な指摘をした竜のお陰で、事なきを得た。

こうして見ると、普段俺よりデカイ2人が(タケはそんなでもない)
子供になったせいで余計にデカく見える。

誰かの膝に乗せられて、優しい眼差しに見守られ
子供の姿にならなきゃどれも体験出来なかったな。
親達には、こんな風にされた記憶がないし
だから余計に・・世話を焼いて貰えるのが嬉しいんだ。

「なあ、それよりも学校どうすんの?」
「いーじゃん、サボれば。」
「今日はそれでいいだろうけど、その後は?」
「・・・・・」
「戻る方法だってわからねぇ、はどう生活してげばいいんだ?」
「う・・・俺達が交代で、とか。」
「ふーん・・料理とか作れんのか?」

遠慮のない言葉の攻撃、どれも正しい指摘だったから
隼人もタケもロクに反論出来ない。
自分達には、仲こそいいとは言えなくても親がいる。
でも 家を出て来てしまったには、いない。

竜の指摘は正しい、かろうじて誰かが出来たとしても
そう何日も続けて通ったりは無理がある。
空気もスッカリ重くなり、辺りに沈黙が漂う。

隼人達が自分のせいで悩んでる。
こんな事になったせいで・・

「ごめんなしゃい・・俺のせい」
・・オマエのせいじゃねぇよ。」
「そうだよ、きっと何とかなるって」
「・・・・」

とっても申し訳なくて、は幼い口調で謝る。
見下ろす肩は震え、ギュッと甚平を握る指に涙が落ちた。
泣き出したに気づき、隼人とタケは優しく声を掛け
その姿を竜は黙って見つめた。

それからふとケータイを出すと、の前に行き
目の前に屈んで、小さい頭を撫でてから言った。

「オマエには俺等がいる、だからあんま心配すんな。」
「りゅう・・・」
「おい・・いいトコ取りすんなよ。」
「俺だって言おうと思ったのに〜」

柔らかい笑顔と、力強い言葉。
あの竜が笑ってる!凄い貴重な物が見れた。
自分の傍には、頼もしい仲間がいる。

嬉しい

「りゅう、ありがとう!」
再び立ち上がろうとした俺、けど衝撃がそれを止めた。
あどけない声が俺を呼び、体当たりをするかの如く
小さいが、抱きついてきた。

しっかりと俺の学ランを掴むこの小さい手が、心を惹きつける。
だから・・可愛すぎだってーの。
どうにかなりそうなのを耐え、小さな体を抱きとめる。

「やっぱ美味しいって・・、竜は。」
「俺も抱きつかれたい〜!」

そんな2人を前に、隼人とタケがぼやき
タケの言葉に隼人が オマエさっきまで抱っこしてただろ!
と突っ込みを入れてるのを、呆れたが普段通りな様子に
竜は苦笑のような、呆れた笑みを浮かべた。

子供になったから分かるけど、自分から竜に抱きつくのって
あのままな姿じゃ 絶対に無理!!
恥ずかしさが優先されるからね〜そう思うとさ

今のこの姿って、特権をフルに使えるって感じ。
子供になった今なら、素直に甘えられる。
広い胸に飛び込んた俺は 凄く安心出来た。
学ランからは、竜らしい香りも・・

を抱っこしたまま、竜はケータイを開き
何処かへ電話をかけた。
誰にかけてるのかは隼人達にも分からない。

「なあ、朝メシ喰った?」
「ううん」
「よっし!何か喰いたいモンある?」
「隼人・・作れんの?」
「握りメシなら」

竜の電話を待つ間の時間潰しとして、隼人が聞いてきたのは朝御飯。
勿論食べてない、だって朝起きてすぐだもん。
疑いの目を向けたのは、電話中の竜とタケ。
何か作れるのかと聞かれ、隼人が隠しもせず言ったのはおにぎり。

それくらいなら誰だって作れるじゃん。
頭では思っても、敢えて口にしないタケ。
此処でキレられても煩いだけだし。←酷っ!

「そうゆう訳だからさ、誰にも言ったりすんなよ?」
【勿論だ!私に任せておけ!】

自信満々な相手の声を聞いた竜の顔は、心配の色になる。
一応口止めはしといたが、アイツの事だどっかしらボロを出す。
完全に危機が去った訳じゃねぇし、気が抜けねぇな。

キッチンで賑やかにおにぎりを作る隼人とタケ。
最初は隼人だけだったんだけど、タケも混ざり始めた。
あーだこーだ言いながら、おにぎりを作る姿は
何だか兄と弟って感じで見てて面白い。

「でんわ、おわったの?りゅう。」
「ああ、それよりいいのか?隼人達に朝メシ任せて。」

キッチンのテーブルに座る、通話を終えてから行くと
くるりんと大きな目で、俺に問いかけてきた。
早く慣れねぇと・・・と思いながら、問いかけに答える。
顔が赤くなる前に、視線をから隼人達へ向けた。

竜の葛藤も知らない俺は、無邪気に平気だよって言った。
寧ろ この賑やかな空間での、朝御飯が楽しい。
そんな俺に、そっかと言った竜が笑った。

竜が笑うと何故か照れる、だって滅多に笑わないし。
でも 笑顔を見せてくれると、嬉しい。

その頃、竜がケータイで呼んだ人物が コチラに向かっていた。