キスの距離
俺の彼女は、訳あって男装して学校に来てる。
名前は 詳しくはしらねぇけど
竜曰く いいトコのお嬢様らしい。
ま 俺にはそんな肩書き何て関係ないけどな。
がいて 俺がいる。
それだけ確かなら、それでいい。
何時からだろう、俺がアイツを意識したのって。
最初は、女みてぇな奴だなぁ・・とか
華奢だな・・無謀な奴だなぁくらいにしか見てなかった。
けど 段々それだけじゃないって気づいて
仲間思いの無鉄砲?
ちゃんと自分の信念を持ってて、すげぇって思うようになった。
それから色々な事件があり、俺達の絆も強くなって
を男としてじゃなく、女として見るようになってた。
どっちから告ったかなんて忘れちまったけど。
ってさ、すっげぇ大人なんだよ。
俺よりも落ち着いてるし、何か竜みてぇだけど
過去の事を乗り越えてから 強くそれを感じた。
付き合うようになって、互いの事が見えてきても
大人だなぁって見方は変わってない。
つーか、態度に大人の余裕が溢れてんのよ。
男は何時までたっても子供っぽいけど
女の子って、やっぱ大人っぽいんだよな〜
手ぇ繋ぐにしろ、俺ってすぐ照れちまうけど
はそうゆうの自然にやってのける。
偶には俺だって男だし?の照れた顔が見たい。
この身長差とか、活かせねぇかな。
☆☆
つっちーと付き合って、まだ数ヶ月。
今までは見てただけのつっちーが、今はすぐ傍にいる。
傍で見ると実感、身長差・・・・
一緒に歩くと その差が歴然さ。
まるで凸凹カップル。
手を繋ぐにしろ、平気そうにしてるけど実は恥ずかしい。
だってさ、つっちーって俺よりも照れてるのが分かるから
二人で照れてるのもアレだし、どっちかが落ち着いてなきゃかなって。
つっちーには言えないけど。
付き合ってるから普通にデートくらいはする。
でもさ、その・・キスとか抱き合うとかはまだナイ。
元は男として転校した訳だし、男として接してきた。
それをいきなり本来の女に戻れって言われても
出来ない。
それに、キスするにしろ 大変じゃね?
180cm代と160cm代だぜ?
てゆうか、顔が近づくだけでも駄目だっ!
でも触れたい。
こんだけ近くにいても、中々ね・・・
難しいよ、友達から男と女になるのって。
☆☆
さて、お互いの悩みは他所に 日曜日が来た。
取り敢えず この日はデートする事になってる。
楽しみは楽しみ、色々考えるとテンパるな。
待ち合わせは俺んちの前、つまりの住むマンション前。
の服装は、モノトーンのズボンと黒のキャミ
その上に白で肩が出た服を着てみた。
スカートにはまだ抵抗があってはかない。
落ち合う時間は午前10時、今は9時50分。
まだ10分の余裕があるけど、俺は雑踏の中に
一人抜きん出た茶髪の頭を発見。
「つっちー!」
こっちだよ、と手を振ってみれば
無事を見つけ、長身のつっちーが走ってくる。
遠くから見てもデカイのに、近くで見ると更にデカイ。
ズボンはアチコチにポケットが付いてる薄茶のヤツで
V開きのシャツは体のラインがよく分かる感じの白の服。
その上にファー付きの黒ジャケットを着用。
ふーん・・・私服もカッコイイ。
白と黒って示し合わせた訳じゃないが、ペアルックみたい。
「おう、遅くなっちまった?」
「いや、平気だよ。」
「そっか なら良かったぜ。」
「何処行く?」
「あのさ・・俺、んち行きてぇんだけどよ」
「・・・俺んち??」
「駄目かよ」
別に駄目って事はないけど、早くない?
ドキドキと心臓が跳ねる、普通の家だったら
親がいるから駄目とか言えるんだけど、俺一人暮らしだから。
それに今のつっちーの顔は冗談を言ってる顔じゃない。
「いいけど、散らかってるよ?」
「隠す必要もねぇーよ、俺には在りのままを見せちゃって。」
在りのままかぁ・・大らかだよなぁ〜つっちーは。
そこがまた安心出来て好き・・なんだけどさ。
つっちーって、時々可愛いよな。
「さんきゅ、じゃあ上がってよ。」
「やった!」
許可した途端、ガッツポーズをして喜んだつっちー。
その笑顔がまた少年っぽくて可愛かった。
本人に言ったら怒ると思うけど。
の許可が出たから、俺も堂々とマンションの玄関を潜れた。
入って思ったけど・・・広っ!
流石いいトコのお嬢様、一人暮らしも立派な・・・
って 家の事は関係ねぇよな。
互いに緊張してたせいか、部屋に着くまで会話はなかった。
の部屋があるのは、六階建てマンションの最上階。
見晴らしも最高にいい。
このデカイ窓から見る夜景は、さぞかし綺麗だろう。
「適当に座って、何か飲みたいのあるか?」
「サンキュー、そうだな〜コーヒーとか紅茶以外なら何でもいいぜ」
「つっちーらしい言い方、じゃあジュースでいいよな。」
「おう、ついでに食いモンとかもあると嬉しいなぁ」
調子に乗った感じのつっちーの言葉。
それを俺は笑いながら受け流し、言ってろ・と彼に言うと
飲み物を取りに冷蔵庫へ向かった。
この部屋はリビングから直にキッチンに行ける。
カウンターのあるキッチン、そこに食べ物とか飲み物を置けて
人数もいればパーティーも出来るだろう。
そのうち、隼人達とかで賑やかにやってみたいな。
つっちーはキッチンで飲み物の支度をするを見つめた。
私服も男らしい感じだが、仕草とか睫毛が作る繊細な影とか
線の細さを見てると やっぱ女なんだなって意識する。
白い肌に触ったり、髪の毛を触ったり
の全てに触れたいって、常に思ってる。
でも拒否られるのが怖くて それが出来ない。
俺らしくねぇ〜今までは簡単に出来た事が
相手だと出来なくなる。
飲み物を運んで来た、テーブルにつっちーの分を置くと
同時にその手をつっちーの大きな手に握られた。
「つっちー?どうした?」
「あのさ、は何時も大人だけど 照れた顔とか見てぇなって」
「え?大人なんかじゃないよ?」
「そうか?何時も余裕っぽく見えるぜ?」
「んな訳ねぇだろ〜!俺だって何時も緊張してるし
今だって心臓バクバクだよ!」
無神経な感じがして、つい怒鳴った。
怒鳴られたつっちーは唖然としつつも、吃驚してる。
きっと今の顔は、真っ赤になってるだろう。
「わ・・わりぃ」
「けどさ、色んな顔・・・見せてもいいって思ってるよ?」
『つっちーにだけは、色んな俺を見て欲しい』
「!?」
ほんのり染まった頬、俯き加減の色っぽい顔。
うわー刺激強いって!賽が投げられそうだって!
凄い近くで、の照れた顔を見せられ
俺の我慢が何時までもつか。
男として、彼女・好きな奴の可愛い姿を見せられて
我慢出来るヤツがいたら 連れて来い!
「わっ」
勿論 俺に我慢なんて出来るはずもなく
目の前に屈んでいたを引き寄せ、ソファーに座らせると
自分は思い切っての膝の上に寝転んだ。
男とは違った柔らかい太ももが、俺の体重を支える。
この感触・・・どうにかなりそう。
「つつつつつ、つっちー!?何?恥ずかしいって!」
「いいだろ、このアングルから見るのって新鮮だし」
「新鮮って・・・いつものアングルだと、そうじゃねぇみてぇ」
「そんな事ねぇよ、はいつだって可愛い」
つっちーが言うと何か照れる。
隼人が言うと、慣れてる感じがして心に響きかない。
けど つっちーは違う、本気が伝わって来るから
俺の心を捉えて離さないんだ。
「照れた顔、やっと見せたな。」
「つっちーがそんな事するからだ!」
「もっと見せろよ、つーか見たい。・・キスしてもいい?」
殺し文句・・・普段クサイ台詞言う奴じゃないだけに照れる。
俺だって触れたいよ?つっちーの髪の毛とか肌・・とか。
「俺もつっちーと触れ合いたい」
「マジ?チョー嬉しいんだけど!」
「ホント?」
「バリホント!ずっと触りたかった、けど大事だから無理強いしたくなくて言えなかった。」
下から見上げられる視線、熱視線。
つっちーは俺の事大事に思ってくれてたからなんだ・・
俺から心を許してくれるの待ってたんだな。
「ありがと」
「どーいたまして」
照れ臭そうに笑った、同じく照れた顔で笑ったつっちー。
それからは自然に触れ合った。
つっちーの腕が、伸ばされて俺の頭を引き寄せる。
屈む感じになった俺の体。
つっちーも少し顔を上げて、目を閉じる。
俺もゆっくり目を閉じた。
そっと触れた唇、最初はたどたどしかったけど
互いの熱に慣れた唇は、更なる熱を求めて重ねられ
「ん・・んっ・・はぁっ」
「・・・」
熱に浮かされたように出たと息交じりの声。
煽られるようにつっちーも俺の名を呼んだ。
つっちーの勢いは凄く、俺は体勢を保てなくなり
起き上がったつっちーに、反対にソファーへ寝かされた。
顔の両側に逞しい腕が置かれる。
「 マジ可愛い・・止まんなくなりそ」
さて この後どうなったかは、ご想像にお任せします。