桜襲



今年も春がやって来た。
毎年春はあまり好きではなかったりする。

出会いと別れの季節でもあるけども
その前に大敵の花粉の季節だからよっ
発症は10歳、今は24歳。もう14年の付き合いだわ。

今年も恒例の花粉でかなり外に出るのが辛い。
けどこの季節を乗り切らないとならない・・・・
花粉症だからって仕事は休めないしなあ(当たり前

4年付き合った彼氏とは先月別れてたりするし(別に関係ない
まあ兎も角私『 』はいつも利用する電車へ乗車した。

会社に行く時必ず利用してる。
そのせいか全然接点のない他人の人でも、勝手に顔見知り感覚だ。
あ、この人また乗ってきた、とか、今日はこんな格好なのか〜とかね。

勝手に親近感って言うか、そんなような物を感じたりしていた。
人間観察って面白いね(ぇ

電車って、結構出会いの場所だったりするよね。
始発に近い車内は人も疎らにしか乗っていない。

外を見れば白み始めていて、何気に朱と紫の混じった色が好きだ。
情緒溢れるって言うか何て言うか、儚い感じがしてちょっと切なくなる。
空から視線を戻して鞄の中から一冊の愛読書を取り出す。

降りる駅まで1時間くらい乗ってるから余裕で読めるのだ。
鬼の青年が人の子を愛してしまうと言う、禁忌な物語・・・・

この現代社会に鬼なんてまるっきし空想その物だけど
そんな現実離れした設定だからこそどっぷりと浸かる事が出来るって訳よ。
仕事の前にそんな本の世界にどっぷり浸かる、私はこの時間がとても好きだ。

早速枝折を抜いて本の活字を目で追っていく。
すぐに吸い込まれるように意識は本の世界へ導かれる。
禁忌を侵した鬼の青年が、人間の少女を連れて里を飛び出す。

待ち受ける困難も意に介さずに。
いいねぇ〜・・・何もかも投げ打って相手だけを信じる・・私には出来ない。否、出来なかった。

まあそれが出来るのが物語りの世界なんだろうなあ。
何処か冷めた感じで一息を吐こうと顔を上げた時
次の駅のプラットホームに電車が滑り込み、乗客を乗せるべくドアが開く。

そして数人の乗客がパラパラと乗り込み、ドアは閉まった。
始発だから乗って来るのも男性が多かった。

殆どがサラリーマンとかだけど、その中に一人若い男性が映る。
またあの子だ、いや・・知らない人だし話した事もないけど
毎日大体この時間の電車に乗ってくるの。

いつも目深く帽子を被ってて顔は見た事ない。
細身の長身が目を引いて、不思議と記憶に残ってしまった。
まあ私が勝手に覚えてしまっただけで向こうは全く私の事は知らないだろう。

他人に無関心なのが都会の常。
今日はニット帽にサングラス・・・目許は見えないけどきっと美青年だと思う。

目の保養よね←
毎日一緒の時間、同じ電車。ただそれだけ、そんな些細な物でも何かいいなと思っていた。
この先言葉を交わす事がなかったとしても・・それもアリかなって。

日課になりつつある彼との遭遇、仕事に行く前の密かな楽しみになってた。