君の温もり



そう、それはあまりにも突然だった。
何気なく一緒につるんでる5人の仲間。
皆カッコよくて、桃女からの人気も厚い。

そんな彼等と、私は幼馴染。
正しく言えば 竜と幼馴染だって事。

そうなれば、竜と幼馴染の隼人とタケも幼馴染。
私は桃女に通ってて、学校も向かい合わせだったせいか
学校帰りとか、よく5人と鉢合わせたりして
そうしてるうちに、他の2人とも仲良くなった。

土屋君と日向君。
土屋君は背が高くて、扇子がトレードマーク。
怖そうに見えたけど、本当は優しい。

日向君は、カラフルな柄シャツがトレードマーク。
こっちも怖そうだったけど、タケと仲良くしてる姿は可愛い。

黒銀では不良ってゆうか、問題児クラスに属し
この辺の不良達の間でも 彼等を知らない奴はいないくらい
周りから恐れられている。
私は怖いなんて思わないし、不良って決め付けるのは嫌。
幼馴染として、小さい頃から一緒にいるから平気。

仲間思いで、とても真っ直ぐな心を持つ人たち。
結構助けられた事だってあったんだよ?
小学校の時とかさ、虐められてた私を守ってくれたり。

本当の彼等を知ってるから、好きになっちゃうのは自然だった。

離れてみて、別の高校に通うようになって気づいた。
私は、ずっと・・・竜が好きだったんだって。

竜の事を考えると、訳もなく涙が浮かんでくる。
悲しくなんてないのに、竜の事が好きすぎて・・切なくて。
強く意識したのが何時からかなんて分からない。
気がついたら、竜の姿ばかり探して・・・竜の事ばっか考えてた。

ねぇ?竜は・・・今どうしてる?誰を想ってるの?


幼馴染だったアイツが、桃女にいるって分かって
正直吃驚したけど、懐かしさで胸がいっぱいになった。
それと、久しぶりに見たが 綺麗になってて驚かされた。

昔から可愛かったけど、18になった
可愛いじゃなくて、綺麗になってた。

もう心臓跳ねまくり。
帰りが一緒になる度に、肩とかぶつかっただけでも
俺の心臓はドクンと跳ねる。
でも 触れた肩は細くて、小さくて・・・愛しくて・・ヤバイ。

の事を、隼人達も見てる。
綺麗になったアイツを、特別な目で見始めてる。
それがどんなに嫌か・・・馴れ馴れしく触れるつっちーの手。

その手を振り払って、言ってやりたい。
は 俺のモンだからさわんな・・って。

もうただの幼馴染じゃいられない。
俺の目が、を特別な目で見始めた今
幼馴染としての関係は、崩れ始めた。


ある日の放課後、私は竜に呼び出された。
と言っても、学校が違うから前もって登校の時に言われたんだけど。

とっても真剣な目をしてた竜、必死に照れるのを我慢した。
待ち合わせた場所は、近所の公園。
待つ事しばし、公園の入り口にいるだけで目立つ美青年が現れた。
歩き方までもに独特のオーラが・・・!

「待たせたか?」
「平気だよ、そんなに待ってない。」

私の前に来た竜に、嬉しさと照れ笑いで答える。
はにかんだ笑顔のを見て、またしても竜の胸が高鳴った。
これはかなりの重症と見ていいな・・・。
の仕草を見るだけで、こんなにも動揺すんなってさ。

竜の変化には気づかない、おずおずと問い掛けた。
問われたのは呼び出した理由。
竜は、ああ・と反応を見せ 竜みたいに鋭い目を私に向けた。

溶けそう・・・
鋭いのに、同時に色気が漂ってるその目。
飲み込まれないようにして、私は竜の言葉を待つ。
少しの間の後、一歩だけ竜は私の方へ足を踏み出した。

と離れて、また高校で逢って気づいた。」
「・・・・・」

バスまでは行かないが、低いテノールの声。
私だって気づかされた事があるよ。
そんな風に思いながら、ひたすら先の言葉を待つ。

が好きだ、他の誰にも渡したくねぇ。」

迷いも偽りもない目、その目に自分が映ってる。
もう心拍数がかなり早くなった。
答えは決まってる、のにすぐに言い出せない。

私だって竜が好き!って何で言えないの?
どれだけ、この腕に抱かれるのを望んだ?
幾夜 竜を想って泣いた?
緊張のし過ぎなのか?それとも嬉しすぎるから?

「また此処で返事聞かせろよ、今日はそれだけ言いたかった。」
「う・・うん」

すぐに答えられずに黙ってると、そう助け舟が出され
今日の所はそこまでで、互いに帰路に着いた。
・・・吃驚したけど、夢みたいだ。
ずっと想ってた竜に想いを告げられるなんて。

何よりも、竜も私を想ってくれてたって事が嬉しい。
あのままあそこにいたら、泣いてしまってたかも。


まあそんなこんなで、時は流れまして。
竜が曜日を指定してなかったけど、返事を告げる日は来た。
私の気持ちも、決まって来たし長く待たせるのも失礼。
待たせすぎて竜の気持ちが変わってしまったら・・と不安にもなった。

その日は日曜日で、朝から雲行きも怪しかった。
梅雨入りでも迎えそうなくらいの。
待ち合わせはこの前の公園、竜はもう来てるのかな。

だとしたら、待たせる訳には行かないよね。
雨も降りそうだし、傘持って行かなきゃ!

そんな事をしてたからか、玄関を開けた時には
もうどしゃ降りの豪雨になってた。
マズイ!急がなきゃ!

慌てて傘を差し、この前の公園に走る。
こんな時、免許でも持ってればいいのになぁ。
無いものねだりはよくないよね、早く竜のトコ行かないと。
は靴やズボンが汚れるのも構わず、走った。

思う事は唯一つ、竜に一刻も早く逢いたい。
あの声で名前を呼ばれたい、あの腕に包まれたい。
触れたい・・・

濁った空の下、公園に駆け込んだ私は竜を見つけた。
思った通りじゃないけど、彼は傘も差さずに私を待ってた。

水も滴るイイ男・・とは、竜の事を言う。
も駆け足で駆け寄り 声を掛けた。
自分を呼ぶ声に、竜の顔が上がりへ向けられる。
その瞬間ね、信じられないくらい柔らかく笑ったの。

いつもの竜って、あんまり笑わないじゃない?
それなのに、今凄く優しい笑顔になった。
うわ〜可愛い!何て言ったら怒られるかな・・・

「竜!ごめん、待たせた!こんなに濡れちゃって・・」
「別に、俺待ってるの好きだし。・・限定だけどな。」

駆け寄ってから持ってた傘を、竜に差し出す。
近くに来た私に、いつもの調子で答えた竜。
笑顔は一瞬だけだったけど、その後の極めつけのセリフ。
隠す間もなく、顔から火が出そうなくらい照れた。

すぐ顔に出るを見て、満足げに竜は笑った。