怪我の功名?



私とつぐみは、全国のテニス部が集う合宿の船に同行し南の島へ向っていた。
けれど、途中出くわした嵐で船が座礁。
全員無事に脱出したけれど、つぐみのおじさんやテニス部の監督達とは別々になってしまった。

その島にはロッジがあって、私は海側。
つぐみは山側に、テニス部員達も両方に別れて自給自足の生活が始まった。
私の行った海側には、氷帝・ルドルフ・山吹・立海・比嘉。

結構皆仲良く助け合ってるんだけど・・・ただ一校が協力を拒否。
それは沖縄から参加した、比嘉中の人達。

本土者とは仲良くしたくない、ってゆうのが彼らの言い分。
分かるような分からないような?

でも今はそんな事言ってる時じゃない。
だから私は、なるべく彼らの所へ顔を出すようにした。
だって、放っておいたら何するか・・・・

最初は怖そうって思ってたんだけど、話してみると皆優しいしいい人達なんだよね。
そう言ったら怒ると思うけど。
何て笑っていたら、誰かに声を掛けられる。

「やー・・何笑ってるさー?」
「Σえ?あ、甲斐君。私笑ってた?」

呆れた声で声を掛けてきたのは、その例の比嘉中の1人。
帽子がトレードマークの、甲斐 裕次郎君。
私が最近、ちょっと気になってる人。

思い出し笑いを見られたのが正直恥ずかしかったけど
甲斐君と話せるのは嬉しいから、見られて良かったかも。

「やー、助平・・・・」
「ち、違うわよ!」
「ふーん?」
「そ、そんな事より!甲斐君何処か行くの?」
「(あ、誤魔化した)あい?まあ、ちょっと森に行ってみるつもりさー」
「私も一緒に行ってもいい?」

「別に・・・わんの傍からあんま離れんようにするなら」
「うん!有り難う!!」

一緒に行く事を許可して貰えたのが嬉しくて、笑顔で頷く。
いられるなら、一緒にいたいもんね。
小さく笑った甲斐君の後を、離れないようについて行った。

◇◇◇◇◇◇

何か見つからないかと海岸沿いを歩く。
歩きながら甲斐君と、色々な話をして道中を歩いた。

その途中からだろうか、不意に痛みを覚えた下腹部。
一瞬冷や汗が滲む、盲腸?とか。

幸い甲斐君は気づいていない。
こんな事で迷惑掛けるのは嫌だから。
チクン・・・チクン・・・・

でも、そんな私の気持ちとは関係なしに、下腹部の痛みは増す。
もしかして・・・アレ?

「海が近いから、潮風が気持ちいいやんにー」
「そ、そうだね。」
「けどベタつくから、そんなに長くはあたってられんな」
「うん・・・」

甲斐君が少し黙ってしまった私に、飽きずに話しかけてくれる。
ちゃんと話したいのに、もっと一緒にいたいのに。
どうしてこんな時になるのよ〜

なるべく気づかれないように痛む下腹部を抑える。
けれどそれで痛みがなくなる訳がない。
冷や汗が滲み、頭がクラクラしてくる。

どうしよう・・・血が垂れてるのが分かるよ。

「やー何かさっきから元気ないな」
「そんな事ないよ、ちょっと疲れたのかな・・・・」

返事が曖昧になってきた私に流石におかしいと感じたのか
甲斐君がこっちを見て、心配そうに聞いて来る。
適当に誤魔化すんだけど、ヤバイ・・・お腹、痛い・・・――

甲斐君を見上げた途端、視界が暗転。

「ん?・・・・あぶねっ!?」

グラッと揺らいだ体を、ハッと気づいた甲斐が腕を伸ばして抱きとめる。
逞しい胸に抱き留められた感覚を最後に、私は意識を手放した。

◇◇◇◇◇◇

意識が戻った時、先ず最初に見えたのはロッジの天井。
下腹部の痛みは変わらずあるけど、さっきよりはマシになってる。
あれ?私、いつ戻ったんだろう。

――!!

「おっ気がついたな?やー」
「かっかっかっ!甲斐君!?」
「やー面白いな、いきなり倒れたから驚いたさー」
「もしかして、甲斐君が運んでくれたの?」
「そりゃあなやーをそのままにしておけんだろ?」

顔を動かしてすぐに甲斐君を見つけて、もう飛び起きたいくらい驚いた。
やっぱりあの逞しい胸は・・・・甲斐君だったんだ。
うわー恥ずかしい!!重くなかったかな、私。

笑顔で甲斐君は言って、大きな手を私の額にあてる。
少しひんやりした甲斐君の手は、火照った肌には心地いい。

「重かった?」
「全然。寧ろ軽いくらいさー、ちゃんとくってっか?」
「食べてるよ・・・ごめんね、折角探索してたのに」

迷惑掛けたくなかったのに、結局は甲斐君の邪魔をしてしまった。
何よりも、一緒に探索が出来なかった。
俯いて黙り込んだ私の額を、甲斐君が指で弾く。

鈍い痛みに顔を上げると、ニッと笑った甲斐君がこう言った。

「そんなちらするな、探索くらいまた行けるさー」
「でも・・・折角甲斐君と一緒に探索してたのに」

不意に彼の顔が赤く染まる。
その顔を見て、自分が恥ずかしい事を言ったのだと気づく。

恥ずかしくて目を逸らすと、甲斐君が笑ったような気がした。
それから、少しの間の後。
彼の気配が私に近づいて・・・・

「やーが元気になったら、幾らでも一緒に探索してやるさー」
「甲斐君・・・」
「それにわんも、やーと一緒に探索したいやし。」
「わ、私も・・・・」
「なら今は、ゆっくり休むさー・・やーが寝るまで傍にいてやるから」

耳元で聞こえる甲斐君の声。
心臓がドキドキして口から飛び出そうなくらい。

素直に頷くと、甲斐君は満足そうに笑って
よく眠れるおまじないと呟くと、私の瞼に口づけた。



長くなっちゃいました。もう甲斐君好き過ぎて!!
歳柄にもなく、9歳も年下の彼にメロメロ(死語)
ヒロインはドキサバの彼女、ロッジまで甲斐君がどう運んだかは皆さんの妄想に委ねます。
ぶっちゃけドキサバで、彼のスチルが少ないのが腑に落ちなくて
妄想イベントを書いてしまおうと思って書いちゃいました。