家族
玄関で必死に止めている赤西の奮闘に亀梨も何とか雑誌を運ぼうと試みる。
気付いた中丸が雑誌の下に両足を入れて浮かし
銜えやすいようにしてみたりして協力を試みた。
『もちゃがんねぇっ!』
『くそーー猫って何て不便なんだ!!』
『不便以前の問題だよ、猫の手って物を持つ為の手じゃないし!』
『けどこのままだと猫缶かキャットフードだろ!』
『あーくそくそくそっ!!』
例え手助けしても雑誌は滑って掴めない。
この爪とかあっても引っ掛からないし苛々だけが募る。
全員苛々したらしく、それぞれが苛立ちを露に文句を言いまくる。
すると、その声が玄関まで聞こえたのか
赤西を抱っこした家主が戻って来た。
これ幸いとばかりに、持ち出そうとした雑誌を見せるように亀梨は叩く。
取り敢えず偶然捲れたコンビニ弁当紹介のページを
肉球の手でパシパシと叩いて見せた。
「え?まさかこっちが食べたいの?」
『俺ら猫缶は流石に食べられないんで・・』
『俺はこの焼肉弁当がいいなー・・・とか言ってみたり』
『俺はこっちのステーキ弁当』
『じゃあ俺はから揚げ弁当がいいな〜』
『いや、ちょっと待てお前ら。この口で弁当とか無理だろ』
『ガーーーーーン』
ぶっ、可愛い!!!
ニャーとしか全部聞こえてないけどロシアンブルーの猫が鳴いたら
一斉に五匹が落ち込んで見えたのが物凄く和やかに見えて、噴き出した。
おばあちゃんが亡くなってからずっと仕事だけしてきたは
久し振りの賑やかな光景に思わず笑ってしまった。
弾けるようにカラカラと笑う姿に、思わず弁当を選ぶ亀梨達も目を奪われる。
クール系に見える女性の意外な姿と言うか、気取った風のない笑顔がちょっと可愛らしいと思った。
うーん・・猫缶は嫌で人間の食べる物が好きな猫・・・・
変わった猫ちゃん達だなあ。
けど捨てるのは忍びないし、アクセの事もあるし。
このマンションはペット禁止でもない。
六匹とも何か私の言葉が分かるみたいな反応をするし何より可愛いし(
「よし分かった、貴方達は私が飼ってあげる!」
『わー話がぶっ飛んだ〜』
『けどそれはそれで助かるよな?』
『ああ、どうやって過ごすか気にしなくていいしな』
『わーい俺綺麗なおねーさん大好き〜』
『あっコラ上田!』
「ふふ、君も此処に住みたい?私の家族になってくれる?」
『なります大歓迎ですよおねーさん♪』
「人懐っこいね〜・・・・有り難う、猫ちゃん」
『??』
思い切って提案したら、チンチラちゃんが私に擦りついて来た。
その姿が宜しくね、と言っているように見えて嬉しくなった。
だだっ広いこのマンションに、少しだけど賑やかさが戻るのでは
寂しさを押し殺す必要もなくなるのでは
気を紛らわす事が出来る気がして、何処かホッとした。
あの訳の分からない気配も、この子達がいたら乗り切れるかもしれないって。
家族になってくれる?と言う些細な言葉に
深い思いが籠められてるように感じた亀梨は、笑顔で上田猫を抱き締めている家主を見つめた。
いつか戻れたら色々聞きたい。
そう、心に芽生えた。
++++++++++
「皆毛並み綺麗だね〜・・今夜はそのまま寝ようか」
『まあ猫になったばかりだしな』
『しっかしさんがあんなに不器用だとは・・・ぷぷぷ』
『けど可愛いいよね、一生懸命な姿とかさ〜』
「その仕草だと入らなくていいみたいね」
『上田の場合何か洒落にならないな・・・・聞こえ方が』
「そうだ、飼うからには名前とかつけないとだよね」
結局何をあげればいいのか悩んでるうちに夜になっており
どうしようかと思ってるより出前取る方が早いと気付き
出前のチャーハンとシューマイ、野菜スープを頼み
小分けにして六匹に与える事にした・・・が
猫のように食べるのがどうにも難しい亀梨達を見かね
はレンゲの先端に少しチャーハンを乗せて、先ずは亀梨の口許へ。
面食らったが、そうしないと食べられない為
甘んじてゆっくりと食べさせてもらう羽目に。
申し訳なさとテレを同時に感じた面々。
中でも上田はやけに嬉しそうだ・・・・・・
それから家主さんは俺らに名前をつけようと張り切り始めた。
クールな第一印象は既になくなっている。
亀梨にはリュウ、赤西はクロちゃん、田口はミケ、聖はルイ、上田はスカイ、中丸はヤマト。
本名とは全く違う名前だけどまあいっか(笑)
偶然にも懐かしい役名と同じ名前をつけられた亀梨。
そして家主の人は俺たちに名前を教えた。
・・・ 。と。
一気にざわめく六匹を不思議に思いつつ、は六匹の寝床を作り始める。
無駄に広い間取りを活かさないとね。と
使っていなかった空き部屋に、余っていた絨毯を敷き詰め
ふかふかの毛布を数枚畳んで配置。
『なあ・・・・もしかしなくてもさあの人』
『間違いないだろうな・・彼女が夕さんのお孫さんだ』
『だな、指輪もしてたし。チラッと見たけどデザインは赤西のと同じだったぜ』
『その事伝えたくても猫じゃあなー』
『先ずは戻る方法探さないと駄目だな』
『だね、』
『何ソワソワしてんだよ田口』
『いやあ・・ホラあれからトイレずっと行ってなくて・・・・・』
『マジかぁあああああ!!!!!!!』
五人がについて確信を得ている時、田口だけが落ち着かずに辺りを見渡している。
それに気付いた亀梨が問うと、何と田口はトイレに行きたいと言ったのだ。
しかし此処にはペット用トイレはない。
それにトイレを借りるにしても女の人の手を借りるってのも抵抗が・・・っ
だが今は緊急事態だ!!と絶叫した亀梨は空き部屋に行ったの所にダッシュ。
猫の足は人の時よりも断然軽やかで速く走れた。
開いたままのドアに駆け込み、毛布を畳んでいるを発見。
傍に駆け寄ると手首の袖を口に銜えて、グイグイと引っ張った。
言葉が喋れないだけでこんなに面倒だとはっ
懸命に袖口を引っ張るアメショー、リュウに気付いたはどうしたの?と声をかける。
説明しようにも今はニャーしか出て来ない為
兎に角袖口を引っ張る。
不思議に思いつつもは立ち上がって、先導するように歩くリュウについて行く。
そのままついて行くと、円陣になった五匹の猫達がいる。
一匹のミケ(田口)を囲むようにしているその様は、口論してるように見えた。
猫の口論・・・・・聞いてみたい( ´ー`)
じゃなくて何だろう?
リュウは前足でミケを示しながら何か鳴いてる。
しかも他の猫達までも同じように何か言って、いや・・鳴いてる。
あーー通じてない!by亀
田口に自分でトイレだって知らせろよと促した。
すると田口、腹を括ったらしくトボトボと歩きつつトイレを探す。
気になって自然と追いかけたは、三毛猫の行く先を読んで気付いた。
「わかった!トイレに行きたいのね?」
『そうなんですーーー』
手を叩いて口にすれば、小躍りしそうな勢いでタタラを踏んだミケ。
はヒョイッとミケ(田口)を抱えると、玄関横のドアを開けて中に入り
ちょっと考えた末、お腹付近を支えて便器の上の位置でキープ。
恥ずかしいが背に腹は変えられない田口・・
諦めてそのまま大人しく用を済ませた。
俺らいつまでこのまんまなんだろうな〜・・・・・
夜22時過ぎ、用意してもらった寝床に向かい
毛布の上に乗ってから一人、亀梨は思案していた。
まさかの事態が起きるとも知らずに。