仮初の始まり
20XX年4月
都内某所、ここにあるビルの中で
あるグループが打ち合わせを行っていた。
個性ある面々が集まって結成されたグループ。
(この時点では赤西君も在籍してます)
今年4月から始まる冠番組の打ち合わせ中。
地域密着型の内容を目指しており、打ち合わせでも各自がアイデアを出している。
初回はメンバーがダーツで選んだ地域に出向き、興味のある職場を体験すると言う物。
後はゲストを招いたり、一般人を番組に参加させる形式を取る予定でもある。
「亀は何処行くか決めた?」
「あー・・俺はやっぱ野球ショップかな」
「やっぱそう来るか」
「じゃあ仁は何処なんだよ」
「俺は〜・・・・んー・・」
「何だよ決まってないの?」
打ち合わせの合間交わされた会話。
名前で分かった人も多いだろう・・・・
各自の姓、その頭文字がグループ名になっている。
そんなグループと言えば1つ。
キンキのバックとして結成された、今をときめく人気グループのKAT-TUNだ。
Kの亀梨和也
Aの赤西仁
Tの田口淳之介
Tの田中聖
Uの上田竜也
Nの中丸雄一
冒頭で会話しているのは、ツートップとの呼び声高い亀梨と赤西。
初回のスペシャルで訪れる職場は決まったかと言うやり取り。
各々が趣味を活かしたりして職場を選んでいる中
赤西だけはまだ職場を決め兼ねていた。
自由に生きているように見える赤西だが、実は色々と考えていたりする。
好きなのは歌とダンスだ、しかしそれを活かした職場ってのは中々ない・・・
舞台も考えた。ドラマやらで演じる事も好きになったし・・
けれど心から好きなのは芝居ではない。
・・・・・悩む・・・
亀は野球ショップ。上田は服屋・・聖はバイク店、田口はゲーム店・・・中丸は・・・・何処だっけ(
まあ兎に角俺だけ決まってないんだよね〜・・・・・
「まあさ、気晴らしに先ずは飯行こうぜ」
「おー・・・・」
「後10分打ち合わせしたら解散だしさ」
「そうだな」
悩む赤西を気遣ったのか、亀梨は肩を叩いて打ち合わせ後の打ち上げを提案。
気遣いを無碍には出来ないので、気は乗らなかったが承諾した。
それから部屋に戻り、残りの打ち合わせを済ませてこの日は解散となった。
亀梨の声掛けでメンバー全員が打ち上げに参加。
打ち上げってのはまだ早いかもしれんがまあ亀梨なりの計らい。
入ったのは普通にファミレス。
時間は深夜に近い、故にお客さんも少ない時間帯だ。
深夜とは言え自分達は芸能人だから、窓側ではなく壁側の奥の席に陣取った。
「取り敢えず飲み物頼もうぜ」
席に着くや否、メニューを広げて亀梨が言う。
その声を合図に席に着いた面々が各自飲み物を決めていく。
サングラスを掛けた亀梨がオーダーを頼むと
全員リラックスして喋りだす。
始めの話題はさっきまでしていた打ち合わせ。
久し振りの冠番組で、メンバーも一層に盛り上がっていた。
そんな中、上田の目が珍しい相互点に気付く。
「あれ?亀梨と赤西って同じブランド付けてんの?」
「ん?ああコレか」
「ホントだ、デザイン同じだな」
「何、お揃いとか?」
視界に入ったのは、亀梨のネックレスと赤西の指輪。
仕様はシンプルな蒼玉のネックレス
指輪の仕様はシルバーで、クリスタルの珠が付いたシンプルな物。
どちらもシルバー製で同じ仕様のアクセサリー。
彼等が偶然同じアクセサリーを買うとは想像出来ない。
その事が余計にアクセサリーの存在を気付かせたのかもしれない。
問われた本人達は、さして驚く事無く説明を始めた。
「俺らが共演した事ある女優さんから貰ったんだよ」
「女優さん?」
「ああ、ハリウッドでも活躍してたスゲー人」
「それって 夕さん?」
「すげーっ!!マジ超有名な人じゃん!!!」
「聖シーーーーッ」←全員
深夜のファミレスで大声で叫ばれるのはかなり迷惑だ。
慌てて一斉にメンバーが田中を睨む。
指摘された田中もハッとして口を抑えた。
店員から苦情が来てからでは遅いので余計だったりする。
夕
この名は国内ならびに国外でも広く知れている名だ。
10代から子役をこなして芸能界に身を置き
女優や舞台もこなし、各方面に広いパイプを持っていて
あらゆるジャンルのセレブやら俳優やら歌手やらと交流があった。
亀梨達が出会うきっかけになったのは
あの森光子を通しての出会いである。
過労で倒れる前のカウントダウンコンサート会場で森光子本人が
全てのジャニーズに紹介したのが、 夕だった。
世界的に有名な女優の登場に、先輩ジャニーズ達も興奮していたあの日。
『貴方達にこれを差し上げたいの』
カウントダウン後の集まりの時に突然の言葉だった。
他メンバーは別のジャニーズらと会話を愉しんでいる時で
夕に声を掛けられたのは、亀梨と赤西だけだったのだ。
その時貰ったのが、今見につけている物。
縁も所縁もない全くの初対面だと言うのに、彼女は二人にそのアクセサリーを手渡した。
『これは?あの、頂いていいんですか?』
『貴方達なら預けられると感じたから持っていてちょうだい』
『それって・・・?』
『そのアクセサリーは三つで一つのセットなのよ』
手渡されたのはネックレスと指輪。
今確認出来るのは二つのみ。
彼女が言うには、もう一つは耳飾りなのだと言う。
尚更二人には預けられる理由が分からない。
困惑する二人に彼女は真摯な眼差しで告げた。
”残りの耳飾りは私の大切な孫娘が持っているの、大切なのはそれらが意味を持つのは三つで一つと言う事よ?
開かれるべき扉は三つが一つにならないといけないの。
出来るならばこれらを大切にして守ってあげて?あの子は希望の星・・・最後の望みだから”
正直全く展開について行けてなかった二人だったが
あの大女優に真摯に頼まれては断れなかった。
何よりも何処か謎掛けめいた言葉に惹かれたのかもしれない。
そしてその日から数日後、大女優 夕はこの世を去った。
手掛かりは彼女に孫娘がいる事と、シルバーの耳飾りをその孫娘が持っているとの事。
彼女が謎掛けにして自分達に遺した言葉の意味とは?
一年経った今も、大半が謎のままだ。
しかしKAT-TUNの面々、黙って聞いていたが抑え切れない衝動に任せてまたも聖が叫んだ。
「ちょ、すっげーワクワクして来たんですけどぉっ!!」
「つかお前黙れ」←
「聖・・お前ココが深夜のファミレスっつー事忘れてるだろ」
「・・・・・はぃ」
「兎に角、経緯はこんな感じ。これを守れって意味はサッパリなまま」
「ふーん・・?けど俺も気になるかも、さんの言葉の意味と・・・そのお孫さん」
「そうだねぇ〜」
「だよなぁ。」
叫んだ聖に冷静に突っ込みを入れる赤西。
意味はサッパリだが気にかかっていると漏らす亀梨。
それに同意した上田。
その後に続いて漏らした田口と中丸。
各々が言葉の後に亀梨と赤西の身につけているアクセサリーを眺める。
見た感じなんら変哲もないシルバーアクセサリー・・・・
店内の蛍光灯の明かりを弾いて輝くクリスタル。
その輝きが一瞬ぐにゃりと歪んで見えた。
不思議に思って目を擦る赤西。
眠いの?とか突っ込まれるかと思っていたが
実は全員同じタイミングで目を擦っていた。
異変は始まり。
現は仮初となり、仮初は現となる――――