感謝の
仕事で忙しい毎日がずっと続くと思っていたある日
それは突然目の前から消えた。
代わりに訪れたのは何とも有り得ない日々でした。
それは六匹の個性溢れる猫達。
アメショー、黒猫、三毛猫、ロシアンブルー、チンチラ、チャトラ。
仕事で缶詰になってただけに、もう癒されたわ。
何か物凄く可愛くて、私の言ってる事も理解してる感じなのよ。
それとおばあちゃんから預かったアクセサリーも持っている。
彼等を信用して預けたんだと思うけど
どうして彼等だったのかが分からない。
和也もよく分からないままみたいだし。
それは昨晩彼と話をしてみて分かった。
どうして私に渡さなかったんだろう、って疑問を投げかけたら和也も首を捻ったから。
三つ揃わないと意味を成さない。
このおばあちゃんからの言葉は、和也側と私側で共通する謎掛け。
調べるとしたら・・・この家に受け継がれてきた指輪達ね・・・・
うーん・・その前に先ずは和也達か・・・・
昨夜は人に戻ったのに、今朝見たらまた猫に戻ってしまってた。
どうして人に戻れたのか、どのタイミングで猫に戻ったのか
そのサイクルと理由が分からない。
私一人で調べるのにも限りがあるしなあ。
冷蔵庫を開けると、先ずは何を作ろうか試案。
猫の姿とはいえ、彼等は全員人間だと言うしね。
かぶりつくのに抵抗はあると思うけど・・
食べなきゃ死んじゃうし、そう思えば食べられるはず。
って訳で朝は冷凍食品とかでもいいかな←
実は料理って苦手なんだよね・・・・・
今まで一人で生きてきたし、食事とかかなり適当だったからな〜
偶に兄さんが食事に誘ってくれたりで構わなかったものね・・
猫がきっかけってのも変だけど、練習でもしようかしら。
最近じゃレンジだけで出来る奴もあるし。
ニャーン・・・
冷凍庫からオカズになりそうな物を物色していると
足元から猫の鳴く声が。
ふと其方を見ると、白いチンチラ(上田)が懐っこく擦りついている。
この子可愛いなあ〜・・スカイって名づけたけど本名昨日和也に聞いとけばよかった。
「ごめんねお腹空いたよね」
『気にしないでおねーさん』
「丁度良かった、この中から食べたい物選んでくれる?」
と言って見せたのは、ミートボールとミニオムレツ。
それからチキンライスとサケとカニクリームコロッケ、鯖の味噌煮。
選びやすいようにチンチラを抱えて見えるようにしてあげる。
優しく抱き上げられてちょっとドキッとしつつ早速それを眺めた。
んー・・喋れたら、おねーさんで!とか言ってみたかったけど(殴)
冗談はさておき、どれにしようかな。
食べやすさを考えるとこれか?
考えた末に上田が猫の手で示したのはミニオムレツ。
「分かった、有り難う」
「ニャニャン♪」
「ニャー」
「あ、皆起きたみたいね」
『何てめぇ抱っこされてんだよー』
『いいだろ〜さん凄くいい匂いがするよ』
『だから上田が言うと何か洒落に聞こえないっつーの』
チンチラの頭を撫でていると、和也を先頭に残りの皆がキッチンに現れた。
皆口々にチンチラに向かって何か唸っている。
猫の姿のせいか、やたらと微笑ましく見えてしまう。
それは兎も角残りの皆にも同じメニューを見せて選んで貰った。
五匹の猫達が真剣な様子でメニューを選んでいる。
それを眺めつつカウンターキッチンの中側に立って眺めた。
申し訳ないけど今回のは全部水いらずのメニュー。
あんな事さえなければ全然好きなのにな・・・・・
彼等がメニューを選んでる間、備え付けの椅子に腰掛けてデザイン画を進める事にした。
これの〆切は来週だけど余裕持って仕上げたいし。
こんな時にあれだけどさ・・・・ペット用の服とかどうよ。
何か散歩とか連れてってみたい(笑)
おっと脱線してしまったわ。
猫達を見ると、まだちょっと決まってない感じ。
先に決まった上田は、ちゃっかりの傍でデザインを眺めている。
デザイナーってだけあって、下絵の段階でもうセンスの良さが溢れてるなあ
感心しつつそれを眺める上田。
数分経つと漸く全員のメニューが決まった。
そしてやっと一品ずつだがレンジで温め開始。
ふと赤西が呟く。
『ってかさ、もう一品くらいなら鍋で温められるんじゃね?』
『あー・・ミートボールとか出来そうだよな』
『さん気づいてない感じ?』
『教えようにも猫語じゃ自信ないわ』
『ジェスチャーとかは?』
『ジェスチャーする猫がいるか?ええ?』
『だって他に方法ないじゃんかー』
ミニオムレツを温め終えたに聞こえる猫達の声。
何を会話してるのかがサッパリなのが残念だなあ〜
ミニオムレツを小皿に出して、次のを温める為に小皿を出しに行く。
亀梨達は知らなかった。
が直面し、隠そうとしている物を。
ミートボールまでもレンジでやろうとしているのは何故なのか。
自身も分かってはいる。鍋で温めれば早い事も。
分かっていても出来ないのだ、水を極力避けているから。
勿論彼等に話すつもりはない。
だって、今彼等はる猫になってしまってるってだけで大変な状況。
そんな彼らに此方の事を話しても迷惑なだけだ。
バレないようにしなきゃ・・・・・
でも避けられない事が一つだけあるのよね・・お風呂よ・・・・・
彼らも猫のうちは体とか洗ってあげたいしさ。
人に戻れた時もお風呂沸かす必要があるからね
もし戻った時だったら手伝って貰うとかしてかわせるけど←
其処まで考えた時、クイクイッと服の袖口が引っ張られた。
視線を向けると、いつ傍に来たのか分からないが
こっちを見上げた体勢で袖口を銜えた赤西猫がいた。
「あ、ごめんごめん。クロはチキンライスだっけ」
『悩み事とかあるなら言えよな』
「??・・もしかして心配してくれてる?ふふ、有り難う。」
『!?』
『あぁああああっ!!!!』←ほぼ全員
猫だし表情は変化ないんだけど、どことなく心配してくれてるように見えて
感謝したくなった私は自然な動作で、黒猫赤西へキスを落とした。
その途端、五匹が一斉に鳴いたけど何処吹く風。
さして気にする事無くはチキンライスを温めに向かった。
何か先を越されたような気分になった面々、特に亀梨は自分が言いたい事を先に言われて不機嫌だ。
固まっている赤西に講義しようと詰め寄ったのだが
数秒して突然軽い爆発音がしたと思ったら、白い煙に包まれた。
「え?」
妙な音に振り向いた私。
またしても固まる羽目になった。
だって、白い煙が晴れたら其処に
とんでもない美青年がいたんだもの。
和也が戻った時も驚いたけど・・・これはまた・・・・・
戻った側の赤西もいきなりの事でかなり驚いていた。
キスされて戻るとか何このベタな展開!!
「あ、えーと初めまして・・・?」
「その姿では初めましてだよね、本当の名前って教えて貰える?」
「そりゃあもう教えますよ、赤西仁って言います」
「君が赤西君か〜和也の事と赤西君の事はおばあちゃんから聞いてたの、会えてよかった。」
幸いに一昨日の服のままだった事に亀梨同様ホッとした赤西。
残り五匹の視線を受けつつ改めてに自己紹介した。
出来れば普通に人間としてのまま初めましてしたかったデス。
とか赤西が思ったのを誰も知らない。
取り敢えず原因不明だが、赤西も人間の姿に戻ったと言う事になる。
が、相変わらずそのサイクルは不明のままだった。