勘違い



学校に着くと、つっちーとヤンクミは
俺達を教室に残し、会議室へと行った。
其処で処分を決める会議が行われる。

会議なんて言っても、どうせ一方的な非難だけで
つっちーの話なんか聞かずに決定させそうだ。
つっちーは、ちゃんと考えるって言ってくれた。
だからつっちーは大丈夫。

俺はつっちーをしっかり見てきた。
調子者でムードメーカーなつっちー、けど皆仲間思いで
つっちーは、弱い者にも平等に接してくれるし守ろうとしてくれる。

どんなに自分の立場が苦しくても、一度決めた事を曲げない。
俺の事を庇って退学の危機に瀕しても・・・。

、昨日俺達と別れた後 どうした?」

席に着いてもソワソワして落ち着かない
視線は会議室のある方を向いてる。
その背に、気になってた疑問を竜がぶつけた。

突然聞かれて驚いたが、適当に誤魔化そうと思い
問いかけた本人の方に顔を向ける。

「俺なりに、宮崎さんと話し合ったよ。」
「話し合いは俺達がいないと出来なかったのかよ」
「え゛?ああ・・・まあ、だってさ怖がらせそうだったから。」
「それは、俺達の顔が怖いって事?」

竜の方に顔を向けたのに、其処には隼人達もいた。
内心だけで驚いて、平常心を装い答えれば
更に鋭く切り返された。

女として話し合いに行ったから、いない方が良かったんさ。
・・・なんて言ってみろ、絶対騒がれる。

それを防ぐ為、用意しておいた別の返事をした。
怖がらせそうって思ったのは本当だしね。
でもそう答えたら、隣からタケの悲しそうな声。

案の定、そっちを見ればタケのウルウルした目が!
止めろって!その捨てられた子犬みてぇな目!

俺さ〜タケのその目に弱いんだって!
つーかタケもそれが分かったみたいで、使ってくるんだよな。
付き合いが長いせいか、性格が竜に似てきてない?

「タケ!駄目だ!オマエは竜みたいになっちゃ駄目!」
「「「は?」」」

竜の隣で、同じような顔して冷静に突っ込みを入れてる様が
勢い良くの脳裏に浮かび、慌ててそれを掻き消すと
隣にいたタケを、ガバッと抱きしめた。
その途端、三人の目が点になる。

抱きつかれたタケは、嬉しそうな顔になると
抱きついたを抱きしめ返す。

目が点になってた三人も、その光景に気づき
抜け駆け反対!とか叫びながら、タケをから引っ剥がす。
引っ剥がされた俺に、誰かの影が近づいた。
顔を上げれば、不機嫌そうな竜の顔。

「何だよ今の・・俺みたいになるなって、何考えてたんだよ。」
「いやぁ、だから(確信犯的)な部分が似てきたなぁって」
「濁すなよ」

濁すも何も、そんなに見つめられると言い難い。
告白されたのとか思い出しちゃうし。
意識しなくても勝手にして、顔が赤くなりそう!
変に逸らせば、周りにも気づかれそうだし。

傍から見てた隼人は、の異変に気づいてしまう。
隼人は知らない、が竜に想いを告げられたのを。
だから、顔を赤らめて言葉に詰まってる様は

・・・って、竜の事好きなんか?

が竜を意識してるように見え、このような誤解が発生するのだ。
先に告白した側としては、全くもって嬉しくない状況で
同時に焦りも生じる。
このままだと、竜にを持っていかれちまうと。

が女だと打ち明けてから、明らかに皆の態度も変わってる。
目に見えて分かる場合と、分からない場合。
隠すのが上手い奴ってゆうか、態度を変えない奴もいる。

アイツの事を意識してる側としては、難しい。
つーか・・面白くねぇ、むしゃくしゃする。
他の奴がを好きでも不思議と勝てる気はあるけど
竜が相手だとすると、簡単には行かないと思える。

何かムカツくなー!
これじゃあ竜に勝てねぇって言ってるようなモンじゃん。
が竜と付き合ってる姿なんか、ちっとも見たくねぇ。

アイツが他の誰かの物になるなんて、考えたくもない。
アイツが他の誰かの隣で、笑う姿も見たくない。

には・・・俺の傍で笑っていて欲しい。

そう思って、気づくと視線はへ。
竜の問いかけに、何とかはぐらかそうと頑張ってる姿。
俺には、全てが可愛く見えちまう。

「何でもねぇってば!しつけぇって竜・・・」

机に両肘を着き、組んだ手の上に顎を乗せて
竜やタケ達と話をしてるを見てた隼人。

不意に、雑談をしていたの言葉が途切れた。
その目は下へ伸び、それから視線は隼人の方へ来る。
自分も不思議に思い、の顔を見て・・・

その視線を辿って気づいた。
知らないうちに、自分の手がの学ランの裾を握ってた事に。

「あ〜わりぃ・・」
「いや・・別に?」

何とも微妙な雰囲気。
平然と答えたけど、としてはさっきの隼人の行動に
結構ドキッとしたりした。

だってさ、黒銀の頭でビビられてる隼人がだよ?
タケ並みに可愛く俺の服の裾、握ってるんだよ??

これは・・告白されたからとか関係なく可愛い!!

俺に気づかれた隼人も、妙に落ち着いてる。
だから俺も、そんなに過剰に反応する事なく
別の考え事に没頭してしまい、隼人の視線に気づかなかった。

俺との会話も少し上の空っぽかった隼人。
が目線を外してから、隼人はの隣に立つ竜を見た。
色々な表情を見せるようになった
その様子を、竜はとても柔らかい目で見てた。

うわ・・コイツ完全に、に惚れてやがる。
ピンと直感した隼人。

え?じゃあ何だ?コイツ等って両想い?
口にしてねぇだけで、両想いになってんか?
じゃあ・・が、俺に返事しねぇのは
竜が好きだから?

マジ?
そんなら俺、出る幕なくねぇ?
学校見学の日、竜との雰囲気が変だったのは?

こうゆう時、カンがいいのはヤだなぁ。
つまり、竜にコクられたって事だろ?
うわ・・俺ってバカじゃねぇ?
バカじゃん・・俺って。

「はぁ・・」
「隼人?何暗い顔しての〜?」

乗せた顎を、手の上から下ろし代わりにオデコをつけて
深々と溜息をついた隼人。
それに気づいたのは、偶々近くに来たタケ。

スルリと片腕を隼人の肩に回し、顔を近づける。
横から伺うように聞いてくるタケに
思わず胸の内を言いかけたが、周りに竜もいる為
ギリギリで飲み込んだ。

後ろで大きな勘違いをしてる隼人に、俺は気づかず
ずっと会議室へ連れて行かれたつっちーの事や
宮崎さんの事を考えてた。

この隼人の勘違いが、後々問題を呼ぶ事になろうとは・・・
つっちーの事で頭がいっぱいだった俺には、予想も出来なかった。

そろそろ来てくれる頃だろうか?
ちゃんと来てくれるのか・・そういった不安はある。
だから、すっごく玄関に行って待ちたい。

「ちょっと俺、トイレ行ってくる。」
「そんじゃ俺も行く行く♪」
「タケが行くなら俺も、イクイク♪」
「・・・響きが違うんじゃねぇか?」

タケに便乗して挙手した浩介に、冷たく突っ込む竜。
何時もと何ら変わらない光景。
けれど、そこに足りないムードメーカーのつっちー。

てゆうか、全員が来たら驚かしてしまう。
あんまり騒ぎにするのもマズイな。

「連れションはすんな、つーか俺女。」
「今更何恥ずかしがってんだよ〜男子トイレだって個室あるじゃん」
「だから、そうゆう問題じゃねぇ!」
「でもさ、確かに○用に個室あるよな」
「いや、それ以上言うなって。」

流石にピーッとゆう音声が入りそうな隼人の発言に
黙って聞いていた竜から、ストップの声が入る。
いい具合にオチ(なのか?)もつき、俺は教室を出られた。

でもこの後、俺は玄関に行ったけど彼女には会えないまま
会議室に向かっていた。