――こんにちは異世界
思わず浮かんだ始まりの文章。
此処は何処、
そしてアンタは誰
§架空亭§
なん、だこりゃ?
『架空亭』とか言う
見るからに不自然な店に
葛藤の末、興味本位で入った私
次の瞬間広がる光景には
その場で呆然とするしかなかった。
此処は何処よ
と聞かれたら奥さん←誰
きっと皆、架空亭の中デショ?
と答えますね、マル
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
―――ばっきゃろぉおお!!
これの何処が店の店内だっっ
見せられたら見せてやりたいわ
店の中に入る気満々だったよ
でもね、今この目で見てる光景は
雑貨屋でも
本屋でも
甘味処でもなければ
この世の何処でもない空間だった。
広がる光景にある物は
見た事もない生活雑貨と窓。
床には黒と白のタイルが敷き詰められ
壁紙も黒と白のストライプ。
・・モノクロ好きk
カーテンなんて黒いベルベット
・・・お金持ちk
天井には硝子細工のシャンデリア。
えー・・・・・何処の成金?
思わず口があんぐりと開く。
とてもじゃないが、店の中だとは考え難い。
けどさ、あの一瞬でこんなだだっぴろい空間が現れるか?
まるで・・・・・
空間その物が別の空間に繋がったとでも?
あの扉は別の空間に繋がっていたのだろうか?
「その通りだよ」
まるで私の考えを読むかのように
その声は耳に届いた。
「こんにちはお客人」
「・・・・アンタ誰」
「ご挨拶だな口の悪い客人さん」
「何そのお客人って、此処――」
「察しだけはいいな。此処は『この空間』は俺の住処だ」
届いた声の主は目の前にいた
気付かなかっただけで、目の前の椅子に
こっちに背もたれを向けて座ってた男。
やたら上から目線の喋り方。
しかし無駄にイケメン←
くせっ毛の黒髪を無造作に垂らし
白いシャツに黒いベスト。
同じく黒いズボン、そして向けられた瞳は金。
遊郭の花魁みたいに肩には着物を羽織ってる。
一体何者なんだろうか・・・
「此処は現世から修繕される本が集う所だ。
集うと言っても、現世から自動的に送りつけられて来る
お前のように直接来られる所じゃない」
椅子から立ち上がった男がゆっくりと此方へ距離を詰める。
近づいてくると長身なのが分かり迫力も満点だ。
って言うか何の話ですk
誰か夢だと言って―――
男の話を聞きながら
私はそれだけを呪文のように繰り返した。
「では何故お前は来れたのか」
「そんなのこっちが聞きたいし」
「お前何か此処へ来る前に聞かなかったか?」
「此処に来る前・・・・?」
目の前で考える仕草を見せる男
此処へ来る前に聞いた物・・
・・・・ある。
アレの事じゃない?
ってかそれを認めたら私完全に
凄い事に直面してるって事に!?
寧ろ夢だったらいいな的な淡い期待は崩れ去る。
げ・・・現実・・・・・かよ
「どうやら聞いたみたいだな」
「(こくり)」
「それは本のコエだ。」
「ナニソレ・・誰にでも聴こえるの?」
脱力気味に男に問う。
私だけに聞こえた訳じゃない
誰にでも聴こえる、そう言って欲しかった。
「残念ながらNOだ」
しかし見事に打ち砕かれた。
残念賞とか絶対イラナイ
「コエはある人物にしか聞こえねぇ」
その先を聞きたいような
聞いたら戻れなくなりそうだとか
耳を塞ぐかそのまま聞くか
そんな岐路に立たされる私の前で
何ら躊躇いもなく男は次の言葉を口にする。
「『御言葉使い』唯一人にしかな。」
何ですかそれぇえええ・・・
お前がその御言葉使いみたいだな
とか勝手に納得してるし・・
勝手に招きいれて変な所には連れて来られるわ
仰々しい名前のソレにされるわで散々だ。
「そんなのどうでもいいから帰して」
「どうでもいい、で済まねぇ事態まで来てるんだよ」
「・・・・ハァ?」
大げさに呆れる男。
思わずつられて真似してしまった。