覚悟
滝『今日からSnow Manに加入して貰う』
そう私は滝沢さんに呼び出され告げられた。
ついに来たか、という感覚を味わった。
岩本達の末っ子だと滝沢に知れてから数ヶ月・・・、まさに怒涛だった。
兄達のレッスンを見学しないかと誘われ、
その後Snow Man単独公演に招かれ見学し
現地で迷った挙句SixTONESの高地さんには
ぼんやりと兄弟って事が知られてしまった。
まあこの際それはいい。
問題はそれの先だ・・・
私の能力を謎に評価してくれた滝沢さんと
まさかの社長さんに直々のスカウトを受けたのだ・・・
ジャニーズに入らないか?と。
勿論断る気でいたんだよ?
ジャニーズの世界は男性だけの世界だし
幾ら男装してるとはいえ私は女だ。
断る為に私は滝沢さんと社長に打ち明けた。
🌕『お話は光栄ですが私は、女です』
長いジャニーズの歴史の中に女が入ったら
過去の歴史に汚点を残してしまうかもしれません、と。
カミングアウト迄に数分を要し
思い切って打ち明けた私に掛けられたのは
意外と穏やかな滝沢さんの言葉だった。
滝『・・・薄々その可能性は感じてたよ』
だが君という可能性と才能に
賭けてみたくなったんだ。
ジャニーズという長い歴史に
新しい風を呼び込んでくれる
君ならそういう存在になるってね。
意外すぎる言葉に顔を上げ滝沢を見れば
その横に座るジャニーとも目が合う。
社『私も滝沢と同じ考えだよ
これからは男女関係なく才能ある若者が
世界で活躍するべきだ、私は君にその可能性を見た。』
Youにならそれを託せる。
ジャニーズの新たな体現者になって欲しい。
熱の篭った言葉を滝沢と社長から貰った
断る気でいたのに胸が熱くなるのを感じた。
その日はジャニー最後のスカウト者となり、
このまま雑誌の撮影に行かされ
後のジャニーズ新時代を築く存在となった。
数ヶ月後、ジャニーズJrとなった。
今日からSnow Manとしてレッスンに参加
兄達は兄達で舞台やらの稽古に向かう為
もその稽古場に行く、が
先にJrとして最後になるステージに出るので
そっちを終えてから稽古場に行く流れだ。
内心かなりドキドキしてるし緊張してる。
今までは一生関わる事ない世界と思ってたし
キラキラした兄達を見てるだけで幸せだった
それがひょんな事から自らがそこへ飛び込み
キラキラした世界の一員として
レッスンを受ける日が来るとは青天の霹靂。
緊張とドキドキで食欲が湧かなかったが
トーストだけを口にし、玄関へ向かうと
すぐ後ろから声が掛けられた。
💜「今日からだよな?」
🌕「・・・うん🙂」
💜「兄ちゃん達先に待ってるからな」
🌕「大丈夫、ちゃんと全うして来るよ」
💚「ふっかは心配しすぎ(笑)」
💜「阿部ちゃんは心配じゃないのかよ~」
💚「俺はなら大丈夫って思ってるから」
話しながら靴に履き替えた。
呼び止める形で声を掛けたのは深澤辰哉。
彼はこの家の長兄であり、同じメンバー。
ついこの前までは同じ養父母を持つ兄弟で
共にシェアハウスで暮らす兄という括りだけだったが、
今日からは更に新しい肩書きが加わる。
同じSnow Manのメンバーという肩書きが。
更に言うならジャニーズJrの先輩になる。
🌕「亮兄ありがとう頑張って来るよ!」
💚「うん、終わったらLINEね」
💜「俺だって応援してるぞ!」
🌕「ふふふ😊ふっかさんありがとう」
💜「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙朝から可愛いいい」
環境の変化を噛み締め、2人の兄に向き直り
決意を新たにニカッと笑みを浮かべる。
不安もあるけどワクワクする気持ちもあった
亮兄は優しく笑みで応えiPhoneを弄る仕草を見せ、連絡を忘れるなよと示唆。
そういう辺りさすが亮兄だなぁ(笑)
良い感じに緊張が解れてきたとこに
急に差し込まれたふっかさんの声。
やたら食い気味で乗り出して来たから
なんか必死感が出てて笑ってしまった(酷い)
でもふっかさんは満足そうに笑ってくれた。
何を言っても優しく受け止めてくれるから
つい甘えてしまうのだ。
💚「ハイハイ、行っといで」
🌕「亮兄、ふっかさん行ってきます」
💜「おう 行ってこい行ってこい!」
勢いでをハグしようとした深澤を
ナチュラルに襟首掴んで引き戻した阿部。
深澤は意に介していないのか
引き戻されながらを見送った。
元気よく振舞ってはいるが
の様子から僅かな緊張を感じ取っていた
今までJrとしてバックで踊っていた。
持ち前の目の良さ、勘の良さ。
優れた音感を武器に数々のステージをこなし
経験を踏んで来ただが
特に技術が優れている訳でもなく
振り覚えの良さやレッスンに臨む姿勢やらを
滝沢と社長に認められての抜擢になった。
だから、若しかすると良くない事が起きる・・・
がスカウトされ入所したのが7月半ば。
先輩方のバックを務めたのはそこから2ヶ月
そしてSnow Manに抜擢されたのは9月半ば
異例のスピード出世だ。
当然これを良く思わないJrも出て来るだろう
これを憂いたのは本人も含まれる。
だから表情には出さずとも兄達は察していた
💚「ねぇふっか・・・」
ふっかに心配しすぎと言った手前
あまり過保護な事は言いたくないが
つい横に立つ深澤を見てしまった阿部。
💜「分かってる、終わる頃見に行くか?」
💚「えっ、でも抜けれるかなぁ・・・」
💜「同じ稽古に入るメンバー迎えに行くんだし、大丈夫」
💚「・・・うん」
視線を受けた深澤はいつも通りの調子で言い
、その様子は阿部を安心させた。
普段と変わらない深澤の様子は頼もしい。
同期でもあり、兄弟でもあるからか
不安を感じる場面があっても
深澤の傍に居ると安心感を得られた。
🕺「よーしレッスン始めます!」
兄2人と別れたは
Jrとしては最後になるレッスンに参加。
鏡張りの室内に集まった人数は15人程。
今からJrとして最後のレッスンが始まる。
まああれだ、出演するのは少年倶楽部です🙂
何の括りもないジャニーズJrとして終わる
はずが、同時にSnow Manへ所属に。
他のJr達の反応が気にならない訳がなく
レッスン着で現れた際はまだ大丈夫だったが
彼らの反応が変化したのは振付師の一言から
🕺「今日の収録を最後にはJrを卒業し、Snow Manのメンバーとして
皆と共演する日が来ると思うから宜しくしてやってくれ」
とかいう挨拶を口にしたのである。
振付師の意図は多分、皆も向上心を忘れずに
切磋琢磨して行こうなという気合い入れ
だったのかもしれない。
だが一瞬だけレッスン場は騒めき
チラチラと居心地の悪い視線は送られた。
でもそんな眼差しに混ざって
🧑「くん凄いね!Snow Manに入れるなんて凄いよ!」
🌕「ありがとう・・・!」
🧒「頑張ってな!」
🌕「うん!Snow Manになってもまた顔出しに来るよ🙂」
🧒「楽しみにしてる!」
という温かな言葉をくれる仲間も居た。
そんな彼らに勇気を貰えたお陰で
居心地の悪い視線も気にならなくなった。
今日の少クラでが踊るのは先輩の曲。
まだグループ括りの無い、
ジャニーズJrに成り立ての子供達の数名と共に歌う先輩のバックだ。
歌唱する先輩は厳つい顔面だが人気のある人
後輩からも慕う子が複数居る。
自身は見た事があるだけの先輩。
例え同じステージに立つとしても
レッスンは別々に受ける。
が、偶に同じレッスン場を使う事はあった。
それは今回もで、一瞬室内がざわついた。
丁度10分休憩に入った時。
ざわつきの正体を探す為視線を彷徨わすと
容易にそれは判明した。
🦓「今日も賑やかだね~」
🦅「そりゃあ少クラだからねぇ」
👥「おはようございます!」
🌕「おはようございます」
🦁「元気だな~お前ら(笑)」
🐻「皆おはよ~」
🦔「お前ら早いわ行くのが!」
🦇「高知がモタモタしてたからじゃん」
とまあ入って来ただけなのに
一瞬で空気がピーンと張り詰めた。
これには休憩中のJr達も色めき立ち
パラパラと集まるや一斉に頭を下げて挨拶。
勿論もJr達と並び
先輩にあたる6人に挨拶してから一礼。
からすると先輩でもあり
兄達と親しい人達という感覚でもある。
特に高知さんとは顔見知りだから
先輩とか言うよりは兄の友達?みたいな感覚
今も遅れて入って来た高知さんを見ていたら
不意に目が合い、手を振って貰えた🙂
吃驚こそしたが悪い気はしないし嬉しいので
ヒラヒラと胸の前で小さく手を振り返す。
的に心が温まるやり取りだったが・・・
その光景を見ていた何人かが
冷ややかな眼差しをに送っているの迄は
生憎と気付けなかった。
そしてレッスンが再開。
の場合、振り覚えは既に完璧。
生まれつき宿り、自ら開花させた能力。
瞬間記憶能力が働いて振付師の全ての動きを
頭から最後まで1寸違わず再現出来る。
それでも驕る事無いは
残り時間を自主練に充てる。
🧒「は熱心だな~俺も見習わなきゃ」
🌕「そうかな、ありがとう」
🧑「覚えるのも早いし完璧だもんね」
自主練をし始めると祝ってくれた仲間が現れ
感心しながらキラキラした眼差しをくれる。
凄く絶賛してくれるから気恥しい。
完璧だよねに対しては謙遜したくなり
訂正をしようと2人を見た直後
笑い声と心無い言葉が
の胸を無遠慮に貫く。
👤「完璧すぎてロボットみたいだよな」
👥「だな、あんなロボットでもSnow Manになれちゃうなら皆選ばれるよ」
🌕「――・・・!」
それは自身も気を付けようとしてた事。
同時に気にしている事でもあった。
鋭い言葉はナイフのように傷を付けて行く。
ただ自覚のある指摘な為、特に反論せず
視線を声の方から外すに留めれば
そんな姿を見た2人の方が強く反応していた
ガタンと椅子を鳴らして立ち上がり
ひと塊のJrらを見渡しながら声を張る。
🧒「今言ったヤツ誰だよに謝れ!」
Jr「・・・・・・・・・・・・・・・」
🧒「直接言う度胸も無いくせに悪口言うな」
🧑「ホントだよ、がどんだけ頑張って来たかも知らないでさ!」
🌕「2人ともいいよ、俺気にしてないから」
🧒🧑「がいいなら・・・」
自分の事のように腹を立ててくれた2人。
兄達以外にもこういう人は居るんだ。
そう思った喜びの方が大きかった。
🕺「そろそろスタンバイだぞ~」
👬「はい!」
騒ぎが治まったタイミングで振付師が現れ
レッスン場に残ったままのJr達に呼び掛けた
大人からの指示にJr達はそれぞれ動き出す。
私もJr仲間の2人と一緒にレッスン場を退室。
その足で衣装部屋を目指した。