魔法の源を上手くコントロールするには
使い手が 知らなくてはならない事がある。
それは 誰かを大切に想う気持ち。
人を愛する事とは、簡単なようで難しい。
第三幕 『扉』と『鍵』
さてさて、問題のレイディア学園に来られた。
出迎えの双子 コウとライに連れられて、学園長室を目指す。
さっき二人してコソコソしていたのが気になるけど・・・
「二人は、学園長から迎えに行くように言われたの?」
歩く速度を落とし、双子と並ぶようにして問いかける。
二人は顔を見合わせてから、今度はライが答えた。
「まあね、自主的って部分も少しは含まれてるけど。」
言われるままに来た訳じゃないんだ。
それを聞いてちょっと嬉しくなる。
だって、言われたから迎えに来たって・・・悲しいもの。
「転校生を早く見たかったのと、興味があったからかな。」
きょ・・興味ですか(照)
ニッコリ笑って言うライの姿に、自然と顔が熱くなる。
好きとかじゃなくて、カッコ良すぎるから。
笑顔とかに弱いかも・・・ライさんの。
それからチラッとコウを盗み見る。
双子なのに、こっちのコウさんにはあんまり笑顔がない。
とゆうか、滅多に笑わないのか・・・無口だ。
きっと笑ったら、ライさんと同じになるのかなぁ。
「どうした?」
「え?あ、何でもないです・・・」
見ていた事に気づかれ、慌てて目を逸らす。
ギクシャクと手足を動かして歩く様に、コウは小さく苦笑。
残念ながら、それをは見れなかった。
「おまえ・・・幾つ?」
階段ではなく、エレベーターに乗り込んだ時 聞かれた言葉。
ぶっきらぼうな言い方に、それがコウさんからの問いだと分かる。
「えっと、17歳になります。」
「じゃあ僕達と同い年だね〜♪」
ニコニコと割って入ったライさんを、コウさんは睨む。
へぇ・・・こんなに大人っぽいのに、私と同じ歳かぁ〜。
しみじみと双子を見比べてしまう。
そんな視線の中、コウは近くのボタンを押した。
何階だろう・と見てみれば、5階のボタンが光っている。
そうだった・・・此処は普通の学校と違うんだった。
レベルが違い過ぎるんだよねぇ・・。
―チン―
少し高い音響き、エレベーターの扉が開く。
どうやら目的の階に着いたようだ。
「この階は学園長と生徒会長専用だ。」
は?スケールのデカさに、思わずコウさんを見たまま呆ける。
「・・デカイ口だな」
それをジッと凝視してから、コウさんはポツリと呟く。
「コウ、女の子にそれは失礼だよ。」
横からフォローしようと、ライさんが口を挟む。
しかし、の方を見て 思わず噴いた。
「おまえだって笑ってるじゃねぇか。」
「こんな顔してるって思ってなかったんだよ。」
でも そんな顔も可愛い♪本気の言葉なのか、ライさんはそう付け足した。
ったく・・・二人して、好き勝手言ってくれちゃって。
むくれた顔で、双子を見てから視線を前へ向ける。
「ねぇねぇ、じゃあその二人はどんな事に此処を使ってるの?」
二人は来ないの?質問立て続けにしてやった。
笑ってくれた仕返しよ〜。
連続質問にも、動じる事なくコウがその問いに答えた。
「個人的な仕事場にもなってるし、私的な部屋だってある。
俺達や他の生徒会メンバーは、会議以外で此処には来ない。」
淡々とした喋り、でもちゃんと質問には答えてくれてる。
それにしても、プライベートルームまで校内にあるなんて
次元が違い過ぎるね・・・。
「どうして?トップ同士の使う階だから?」
「どうして・・っておまえ」
そんな風に聞いてきた奴 初めてだ。
「生徒会って仲間が集まってるような物じゃない?」
今までそんな風に考えた事はない。
俺達はあいつの手伝いをしてるだけ、仲間とは思った事もない。
仲間とかじゃなく、上下関係で繋がる関係。
問いかけてるうちに、コウはすっかり黙ってしまった。
あれ・・?何か言ってはいけない事言ったかなぁ・・・
「おまえには関係ない」
「なっ」
しばらくの間の後、急に突き放した感じで冷たく言われた。
驚いてるうちにもコウはスタスタと歩いて行ってしまう。
「ごめんね ちゃん、あいつの事許してやって。」
ライさんのこの言葉に、首は振ったけど空疎感が残った。
何か・・見えない壁があるような・・・
でも 校門前で私を助けてくれた時のコウさんの腕は優しかった。
抱きしめられて、ちっとも嫌じゃなかったし 寧ろホッとした。
絶対コウさんは優しい人よ、じゃなきゃあんな気を持ってないもの。
は瞳に、前を歩くコウを映した。
コンコン
いよいよ学園長室に着き、慣れた手つきでコウが扉をノックする。
「入りたまえ」
すると、中からノックに答える聞き覚えのある声。
先頭のコウが、扉を押し開け先に一歩入って行く。
それに続いてが入り、最後にライが入って扉を閉めた。
「ご苦労だったね、コウくんにライくん。」
聞き覚えのある声は、迎えに行ってくれた双子を労い
次に 中間に立っているに目を向けると
影として現れた時と同じように、柔らかく微笑み口火を切った。
「改めてようこそ、レイディア学園へ。」
そう言いながら、学園長はその場に立ち握手を求める。
もおぼつかない足取りで前へ出て、しっかりと握手した。
「早速一悶着あったようだが、彼等を送って良かった。」
あの時言った君を守る者達は彼等だよ。と丁寧に説明。
も、直接本人達から聞いたと 学園長に報告。
その報告に、学園長は満足そうに頷いた。
「後の者も紹介しよう、入りなさい。」
学園長の言葉と、視線の先を向くと自分達が入って来た扉が開き
長身の青年が三人入って来た。
それも・・双子に並ぶ美青年集団。
「メンバー紹介をしてあげなさい」
優しく促す学園長の言葉に、先頭で入って来た美青年が
小さく頷くと、ポケーッとしているに向き直り口を開いた。
「まずは初めまして、私は生徒会長のカムイと申す。
こっちは副会長のルイ 書記のエリック。」
会長が紹介する人全てが、ラナムにはいない美青年揃いだった。
カムイという人は、ストレートで長い髪が銀髪で紅い瞳。
ルイという人は、深緑の髪と金の瞳。
この人の髪型は一風変わっている、横の毛をサイドから後ろでまとめ
其処以外の髪はショートカットになってる。
それから、エリックという人は紅い髪と碧の瞳。
うわーうわー・・こんな集団に守って貰えるなんて・・・・
皆の前だというのに、は頬を興奮で染めて喜んでしまう。
「これからの事は彼等から聞きなさい、明日から頑張って。」
「はい、有り難うございました。」
学園長とは、生徒会長のメンバーを紹介して貰っただけで部屋を出た。
これから生徒会室に行って、色々と説明を受ける。
5人の美青年に囲まれて、集中出来るかなぁ。
は会長のカムイと コウを見比べてさっきの言葉を思い出す。
―おまえには関係ない―
仲間と私が口にした事で、急に不機嫌になってしまったコウさん。
一緒にいるのに、気を使い合ってるなんて変な関係。
どうしてかな・・・一緒にいるのに、ピリピリしてるってゆうか
空気が・・・言葉に出来ないや。
黙々と歩く一行は、やがて一つの部屋の前に来た。
扉の上には、『生徒会室』と書かれている。
どうやら、学園長と生徒会長専用の階に生徒会室があるみたい。
「どうぞ」
扉を開き、に先を促したのは紅い髪の青年。
確か・・エリックさんだったかな。
「有り難うございます」
彼の好意に、軽く会釈して応えは扉を潜った。
中に入ると言葉に詰まった、流石としか言い用がない室内。
飾り付けが凄く豪華で、サリムじゃあり得ない位の贅沢ぶり。
「此処がこの学園の生徒会室だ。」
後ろから聞こえた心地よいテノールの声。
振り向くと、扉を閉めたカムイの姿。
長い銀髪を靡かせ、此方へと歩いて来る。
うわ・・っ近くで見ると益々カッコイイ・・・・
他の人もカッコイイけど、彼は他の人とは違う雰囲気を纏ってる。
鮮麗されてるってゆうか・・気品が溢れてるってゆうか。
「どうした?座らないのか?」
「え?あ、いえ座ります!」
どうやら自分を見てたのは、席を勧めてくれていたから。
って事に気づいたら、何だかとても恥ずかしくなった。
見惚れてるのがバレたら、もっと恥ずかしいかも。
の感じた心配は、悟られる事はなかった。
が腰掛けたのは カムイの正面。
左手側に、副会長のルイさん。
その隣に書記のエリックさんで、右手側に会計の双子。
「さて、さん。この学園の事を説明しておこう。」
全員が座った所で、早速カムイは席を立ち声を発した。
その声にの顔も、自然とカムイの方を向く。
「見た通り、此処は男子校だ。だが君はただ一人の女生徒。
校門前でのように、男子生徒にとって君は興味の対象・・・
時に良からぬ事を考えた者達が君に何かするかもしれない。」
それを防ぐべく・・とカムイは言葉を切り、メンバーを見渡すと
それぞれの顔を見ながら、切った言葉を続ける。
「この学園の生徒達をまとめる、我々生徒会メンバーが
君に害を成そうとする者達から守る。」
改まって言われると、かなり照れるんですけど・・・・
真っ直ぐカムイさんを見れなくて、遠慮気味な視線になる。
頬が高揚するのを隠せない。
「それと、この学園には二つの課がある。
一つは魔法を学ぶ者達が集う魔法課と、それらには縁のない
普通の学生のみが集う 一般課。」
カムイは、説明しながら片手を一旦閉じ 念を込めるようにしてから
開くと其処には半透明の珠が現れていて、中に映像が映った。
はひぇ〜流石魔法使いがたくさんいる国の学園だなぁ。
感心するを見て、微笑むのはライとルイ。
「君をどっちの課にいれるべきかだが、学園長と双子の勧めもあり
魔法課へ転入してもらう。」
「どうしてですか!?だって、私今まで魔法なんて・・・」
「あの光」
思いも寄らぬ提案と決定事項に、席を立ったへ
静かな声が別け入った。
その声の強さに、の言葉は飲み込まれ其方へと目が動く。
「校門前で魔法課生徒の使った魔法を、簡単に解除した光・・
確かにおまえの中から湧き出てたぜ?
今まで魔法すら知らずにいたおまえが、どうしてそんな事が出来る?」
た・・確かにそうだけど、何か最初の時より意地悪じゃない?
聞き過ぎたかもしれないし、反省してるのよ?
「コウ、そんな不躾に聞く物じゃない。」
明らかに言葉を詰まらせたを見て、言葉を発したのは
悠然とした態度で話し合いを見守っていた副会長のルイ。
苛立った様子のコウを見てから、眉を寄せ言葉を詰まらせた
を見る。
「コイツの言う通りだ、結論を急いだり解を押し付けるな。」
ルイを筆頭に、続いて会長のカムイもコウを嗜めた。
何か・・・凄く嫌な雰囲気になっちゃった。
コウさんも、どうしてそんな風に苛立ってるの?
まだ私の言った事、気にしてるのかな・・・
「あの光が発せられた時、俺達は力の大きさを感じ取った。
力その物が動き 自分達の力がまるで共鳴しているような感じ。」
短く嘆息してから、一旦目を閉じてカムイはその時を
思い出しているかのように、語り始めた。
どうゆう意味だか、全く分からないけど・・・
それをしたのが私だったゆうなら、私は何者なの?
「不安?大丈夫、ちゃんには僕達がついてるんだから。」
「そうだぜ?何かあったら俺達に言えよ。」
視線を落とし、机を見つめていると左の肩が軽く叩かれ
直ぐに柔らかい声と、太い声が掛けられた。
一人はライさんで、もう一人は書記のエリックさん。
二人の言葉が嬉しくて、はニッコリと微笑み返した。
「カムイ、今の話が本当なら彼女は・・」
話題が逸れた間を割り、真剣な眼差しのルイが
立っているカムイに掛けられる。
「恐らくな、その光は魔法の源を開放した時の物。
コウとライもそれに気づいて を魔法課に入れると
決めたんだろうな。・・・だが、こんなに早く見つかるとは。」
ルイの言葉に頷くと、鋭くなった紅い瞳をへ向けた。
「外界や他の生徒に知れたら、彼女は危険に晒されるよ?」
「分かってる、あいつは俺の国を守る為に必要だ。」
「それだけの為?さんを守るのは。」
意味深なルイの言葉、真意が読めないのは相変わらず。
この質問も、自分にとっては愚問。
民一人守れぬ者に、王座を手に入れる資格はない。
もともとその為に自分は、この学園に来た。
口元に、危なげな笑みを作り ルイへ答える。
「ああ」
冷たい言葉だね、とルイはそれだけ言いカムイから離れた。
所詮自分達は、彼に従うべくこの学園に集い
国の為に身分を隠しているこの者を守るべく、此処へ来た。
仲間でも何でもない、ただの主従関係。
互いに信じてるのは自分と、身近な者だけ。
そんな環境に、は立たされていた。
つづく