自覚して下さい
と上田の留守にパソコンを弄って調べ物中の二人。
取り敢えずあの水道はガムテを剥がして貰ったから自由に水が飲める。
「カメ持ってきてやったから飲めよ」
「んー?おお、サンキュ」
「にしてもネットってすげぇな、検索掛けただけでこんなに候補があるとは」
「だよな〜・・・一つの言葉調べて、その中にまた気になるのあったらクリックするとまた候補が出るし」
「掘り下げてったらキリないわ」
ドアを開けて赤西が持って来たコップの水を受け取る。
冷蔵庫を勝手に開けるのは遠慮しておいた。
んで調べてたんだけど、天照大神で検索するだけで数ページ分の情報が出る。
ウィキペディが詳しいからそれ読んでた。
赤西は須佐之男について検索かけてたらしい。
二人いるから結構早く調べられるかなと思ってたけど
甘かったみたいだな、俺ら。
一つを検索すると、その一つに関係する別の言葉の事も気になるし
一つを説明する言葉だと、それを理解してないと読んでてもわからねぇから説明の言葉もクリックするじゃん?
そうするとその言葉の意味が分かって読み進められるんだけど・・・・
古事記の出来事だから、説明の言葉をクリックする回数が半端ない。
下手すれば本文よりも説明してる語句をクリックする方が多かったり。
流石にそればかりが続くと目が疲れる訳で
俺と赤西は休憩する事にした。
『手伝えなくてごめんな〜』
『俺だって猫じゃなけりゃ一番役に立てるのになあ』
『田口が?すげぇ想像出来ねぇー』
『だって俺ゲーム好きだからパソコンも慣れてるしさ』
『いやーでもさ、調べ物する事にゲームの得意不得意は関係ねぇだろ』
『ウンウン』
疲れてる様子の二人を見た中丸は猫語だが申し訳なさそうに呟き
亀梨の膝に飛び乗って猫足を使ってマッサージ。
そんな気持ちが伝わったのか、苦笑しつつ亀梨は中丸猫の頭を撫でる。
それを眺める田口が凄く残念そうに漏らした。
役に立っている様が想像出来ない聖、ストレートにそれを言うと得意げに田口は理由を話したが
亀梨の膝の上から冷静に突っ込む中丸。
猫になってる彼等の会話は理解出来なかったが、何となく田口が言い負かされてるのだけは分かり
亀梨と赤西は普段と変わらない様子が逆に自分達を落ち着けてくれた気がして笑い合う。
昼飯をどうするか考えてる所に電話が鳴った。
マウスをカチカチさせてる赤西を残し、電話に向かう。
しかし勝手に出る訳にはいかねぇよな〜・・・・
近づいてみてから悩む。
俺達は此処に本来いない人間だし、結構知れてるグループ。
そんな立場の俺らが此処にいると分かったら
逆にへ迷惑をかける事になるしなあ・・・
ふとディスプレイされた番号を見る。
の交流関係も分からないし、番号だけで判断出来ないな・・・・ん?
名前が表示されてる・・・あ!
「もしもし?か?」
[あ、良かった出てくれた〜]
「まさか何かあったのか?」
[そうじゃないんだけどそうなような?]
「いや意味が分からんから」
[あのね、その・・・・ちょっと困ってて・・]
[先生、さん来ないなら俺が――]
「誰だ今の声、てか何が起きてんの」
[仕事場の荷物が意外にも多くて・・・・]
「行くから場所教えて、絶対上田から離れんなよ?」
メモ帳に場所をメモるとすぐ電話を切った。
受話器から聞こえたの声は、少し困ったような物だった。
困った事、と言ったの背後から聞こえた知らない男の声。
それから荷物が多いって言葉。
まさかあの声の男が、手伝うとか言って此処に来ようとしてんのかも。
から場所を聞いた亀梨は、パソコンの部屋に戻り赤西へ言った。
荷物がどのくらいあるのかしらねぇけど、二人で行く方がいいと思ったから。
幸いの職場は、此処から徒歩でも行ける。
土地勘のない此方としては、公共機関なしで行ける距離が有り難い。
亀梨からそれを聞いた赤西も顔色を変え、椅子から立ち上がった。
「悪いけどお前らちゃんと留守番してろよ?」
「世田谷のデザインビルだ」
「やっぱ虫除けは俺らじゃないと駄目だったみたいってか?」
「猫の上田だと厳しかっただけだろ」
「猫でなくても上田じゃあな〜・・・・(女の子みたいだし)」
「取り敢えず急ぐぞ」
「おっけーい」
薄手の服の上にカーディガンめいた物を羽織ながら赤西が軽口を叩く。
上田がいたとしても、猫である限りを守ってやれない。
きっと上田本人も歯がゆく思ってるだろう事が二人にも分かるからこそ
からかう様な口調でやり取りし、玄関へ。
その途中、赤西は玄関脇に置いてあった折り畳みの台車を抱えてマンションを出た。
++++++++++++
ピッ、と機械音をさせ通話を終える。
まさか兄さんが来られないなんて〜・・・・
でも真梓羅君には手伝ってもらえないし・・
来られたらバレちゃうもの。
皆を守る為には誤魔化さないと。
はあ・・・思わず和也達に電話しちゃったなあ・・
私のせいでバレたりしたら、私は彼らを守れる?
「ニャーン・・」
ケージを掻く音に、上田の方を振り向く。
表情はよく分からないが、心配そうに見えた。
おもむろにケージのドアを開けてみると
ゆっくり出てきた上田は一声鳴いてからの手に擦り寄る。
安心させようとしてるように感じ、抱き上げてビルの玄関を眺めた。
ちゃんと正しく教えたはずだからきっと来てくれるはず。
和也のつけてたネックレスをつけた上田君を抱っこしてると不思議と落ち着いた。
「さんに電話したんですか?」
「ううん、知人よ」
「そうなんですか〜・・あ、チンチラは毛が抜けますよ?」
「ニャッ」
「あ」
外を見て来たのか、玄関から入ってきた真梓羅。
問いに答えるべく体の向きを変えたその腕に、チンチラが抱えられてると気付くと
服に毛がつくからと抱えられていた上田を下ろした。
別にそんな事を気にしてる訳じゃない。
温もりがあるとホッとするから、私を気遣ってくれる上田君を蔑ろにされてカチンとキタ。
上田を地面に下ろすと、何事もないように振舞う真梓羅。
その態度が更にを煽る。
「この子に乱暴な事はしないで」
「え?いや、俺はただ先生の服が汚れたりしないかなって・・・・」
「服なんていい、動物にも心はあるんだから」
「あ・・ハイ。それと迎え来ないなら俺本当手伝いますから」
「怒ってごめん、でも迎えはいいの。」
「でも――」
「もう平気だから戻ってて」
「ニャーッ」
見てて苛々してます。もう引っ掻きたくて堪らない〜
早く来ないかなカメ達。
猫の俺なんか庇っちゃってもうー
見るからにさんに気があるっぽいよこの人。
さんも自分が美人でモテるって自覚して欲しいな〜
流石に見てられなくなり、の前に回って上田は毛を逆立てた。
しつこい真梓羅に鉄槌(猫の手だけど)を下すべく睨む。
もそんな上田に気付いて慌てて抱き寄せた。
もしかしたら怒って何かしてくるかもしれない。
そしたら私が守らなきゃ!と
その時だ、上田のつけている石が鈍く輝いた。
何だろう?と二人して見たタイミングで、遠くから聞こえる声が
其処には此方へ駆け寄るスラッとした長身の二つの影。