大事な物を失くした
本当に人形みたいなツラになっちまった。
淀んだ目には何も写してなくて、感情が伺えない。

心が完全に壊れちまう前に早く写真を見つけねぇと・・
毛嫌いしてた奴だけど、ほっとく訳には行かなくなった。



虹色の旋律 二十三章



ジャニーへの質問が続く中、ハイフンの位置にを座らせた。
席に着いてもの表情は変わらない。
に質問が来た時は喋れるのか、メンバーはハラハラして座ってるしかなかった。

「では此処で、新しくメンバーに加入されました君からコメントを頂きましょう」
「・・・・・・・」
・・?」(聖
「おーいー?」(淳
君?」(ア
、マイク持ってあげる」(上
「―――っ・・はい・・・すみません」
「・・・・」(赤・和

ついにへ質問が向けられた。
やはりは呼ばれても無反応で、司会者も記者も不思議そうな顔で見てくる。

どうするか悩み、先ずは両端の田中と田口が声をかけてみた。
だがは反応を見せない。

テーブルに置かれたマイクがさっき座らせた時に斜めになってるのを見た上田は
さり気なくその位置を直し、疲れてる設定のへ優しくその直したマイクを向けた。
その時だ、今まで誰の声にすら反応しなかったが初めて声を発したのは。

上田の方を見つめ、ぎこちなく謝ると顔を上げて少し驚いた顔をした
大方今まで心此処に在らずだったが、今我に返って改めて前を向いたら会見が始まってて
予想以上のカメラの台数と記者の数に吃驚した・・とか言う所だろう。

結構に信頼して貰えてたかと思ってたけどちょっと意外だったかな。
は上田の声だけに反応したとか言う辺りが。

それと、上田を見る目に少しだけ憂いが含まれてた。
今まであんな顔した事ねぇし・・・其処が俺も仁も中丸達も驚いたんだ。

「この度メンバーに選ばれてとても驚いていますが、自分の力を試す場としては十分すぎる場なのでとてもワクワクしています」
「それは活躍が楽しみですね!社長、彼のお披露目公演は今夏のイベントですか?」
「そうなりますね、舞台も今月末からですがあちらは数週間では無理と思った為です」
「先にある舞台は見学、と言った所でしょうか?」
「見て学ぶ事も沢山ありますからね、そのつもりですよ」
「成る程、ではお時間も迫っていますので今日はこの辺でお開きになります!」

のコメントの際には一番多くのフラッシュとシャッターが切られた。
ジャニーと司会者のやり取りも続き、漸く会見の終わりもやってくる。
終わったのは午前11時、ほぼ一時間の会見だった。

ジャニーを先頭に席を立ち、カメラへ一礼すると一人ずつ退室して行く。
には上田が付き添うようにして席を立たせ、会場を出る事に。

何はともあれ誤魔化す事は出来た。
その安心感と共にメンバーは揃って控え室に戻る。
ドアを開けて中へ入って先ず、赤西の声が発せられた。

「てめぇやる気あんのかよ」(赤
「・・・・・ごめんなさい・・」
「それより仁、先ずはの落とした物探すのが先だろ」(和
「受けた事は責任もって最後までやれ、お前はもう一般人じゃねぇんだからな」(赤
「そうよ・・早く見つけないと・・・・早く・・・」
「おい、聞いてんのかよっ」(赤
「――仁!!」(和
「お願いします・・・・探すの・・手伝って下さい・・・あれは大事な物なんです・・・・」
「くそっ」(赤

苛立ちのままにへ怒鳴る。
落とした物は探すつもりでいた、だからこそにも立場を理解してきちんと会見に臨んで欲しかった。

なのに思った以上にボロボロで赤西は何故かショックだった。
此処へ来た当時のような覇気が全く感じられなくなっており
自分の言葉にも逃げる事無く向かって来たあの姿はない。

『―――気持ちを籠めないで歌っても踊っても、見てる人には何も伝えられません!』

この言葉で俺は気付かされたんだよ・・・・
俺は歌が好きで、踊るのも好きでこの世界に入った。

観手を愉しませるのも大事だけど、一番大事なのは自分自身が愉しむ事だった。
こっちが心から愉しんで舞台に立てば、観てる方も愉しむ事が出来る。
そう教えたのはお前だろ?・・・

後ろの壁に襟を掴んで押し付けたの口からはやはり同じ言葉しか出て来なくて
目は再び虚ろになってしまい、六人の心を痛めた。

赤西を制止し、衣装のまま亀梨が率先して控え室から探し物を開始。
誰も皆がの様子にショックを隠し切れなかった。
を此処まで落ち込ます落し物とはどんな物なのか、知るのは亀梨と赤西のみ。

メンバーには写真を探すようにと言ってある。
探す物は分かっているが、何が写ってるのかは知らない。

も探しているが一心不乱であり、冷静さを欠いている。
見つからなかったらどうなるのかとか考えたらゾッとした。

メンバーは方々に分かれて控え室を探している。
ドア付近を亀梨、窓側の隅を赤西。
テーブルの下を上田、化粧台付近を中丸。

椅子の辺りはTTコンビが探していた。
そんな中、衝立の奥も探し始めた赤西の目に一枚の紙が・・・・
夢中で手を伸ばして掴み、すぐにそれがの探し物だと気付いた。

そしてゆっくりとその写真を裏返す・・・・・
赤西の顔は、( ゚Д゚)←こうなった。

え?ちょ、これって・・上田ァ?!
写真に写ってたのは、軍服に身を包んだ20代くらいの男。
それだけならいいんだけど、その顔がメンバーの上田にクリソツだった。

が熱心に眺めてたのはこれに間違いねぇ。
でもコレ・・・上田・・・・じゃねぇよな・・・
だって軍服着る仕事なんてやった事ねぇし。

クリソツだけど全部が同じ訳でもない。
だからさっき上田の声にだけは応えたのか?

「めっかったか?」(和
「いや、こっちには落ちてなかった」(上
「こっちもねぇなあ・・・」(中
「これだけ探してもないって事は誰か持ってっちゃったのかな」(淳
「えー?けど楽屋なんて勝手に入んねぇだろ普通」(聖
「駄目です・・見つけないと・・・あれがないと・・」
「取り敢えず今日はもう移動しねぇとマズイ」(赤
「絶対また探しに来るから今日はもう戻ろう?」(上
「・・・・・はい・・・」

咄嗟に赤西は上着のポケットに写真をしまった。
少し様子を見たかったのもある。
それから会話を合わせ、一旦移動する旨を伝えドアへ向かった。

も渋ったが、上田の言葉に俯きつつ頷き
相変わらず感情の消えた顔のまま控え室を出た。

面白くない←
上田の言葉にだけ反応示すとか何んだソレ。
まあ確かにきつい事言ってたけどさー・・・・

にしてもそっくりだな〜
これが誰なのか、それを聞いてから返しても遅くねぇよな?
早い方がいいかもしんないから今夜にでも探ってみっか。

この後のスケジュールは、以外の六人はDREAM BOYの練習が予定されている。
KAT-TUNと関ジャニとで公演する舞台が4月30日から来月の7日まで

その後の8日から21日までタッキー主演でまたDREAM BOYがある。
結構ぶっ通しで舞台が続いてるから練習もハードだし、体調管理もしっかりしないとならない。
それからこの年の8月8日から行われるSUMMARYでがお披露目となるのだ。

舞台まで日がないからはDREAM BOYではなく、SUMMARYの練習に力を入れる為今日はオフだ。
見学させるってジャニーさんは言ってたけど・・・今のこの状態じゃ意味ねぇかもな・・・・・

「お前今日は家帰ってろ、そんなんで見学しても意味ねぇし」(赤
「・・・私の・・写真・・・・」
「聞く耳もねぇってか・・ったく・・・」(赤
「まあそう言うなよ仁、けど確かに今は無理だよな」(和
「マネに送って貰う?」(聖
「そうだね、先に帰ってて。俺達練習終わってからで遅くなるけど」(上
「・・・・・・」
「・・・?あれ、嫌?」(上
「・・・・上田送ってやれば?」(赤
「え?遅れたら怒られない?」(上
「事情が事情だし、俺達からも言っとくから」(和
「そう?じゃあ俺と一緒に帰ろうか、。」(上
「・・・・はいっ・・」

わー・・可愛い笑顔・・・・byカメ

帰るよう提案した赤西にメンバーも打開策が見つからずに賛成。
中丸に目配せしてメールを送らせた。
だが、写真を見つけ出したいは二の足を踏んでいる。

赤西はさっき気づいた事を活かそうと決め
上田にを送るように仕向けたが、そうするまでもなくも無言だが上田の腕を掴んでいた。
何か胸がムカムカするが、自分達ではその役目を担えないのは事実。

だから上田に送るように言った。
ただでは帰りたくなさそうだったし?

上田は何も知らない。
進んで嫌われ役を買って出たけど、俺って損な役回りだよな〜
見た?あのの嬉しそうな、ちょっと安心したような笑顔。

嬉しそうに上田の後をくっついて行く小さな背中を
俺達はそれぞれに見送った。