虹色の旋律 二十九章
着いたのは事務所。
数人いた出入り待ちの子等も、送迎の車に気付いて手を振ったりしている。
普通は彼等も徒歩で通う扱いだが、イベント前でありもお披露目前との理由で送迎されているのだ。
まあデビューとなったら徒歩で来る訳にも行かなくなるだろう。
正面に対し横向きで車を停止させた四月一日。
この方が正面から乗り降りの姿は確認されない為。
車を降りてメンバーは会議室へと案内される。
其処には衣装担当のデザイナーが待っているのだ。
突然参加と加入が決まったの衣装も急ピッチで完成させたらしい。
のパターンは5つ、色は赤や白・・黒がベース。
KAT-TUN vs NEWSがテーマでもあるので、相対する色が使われる。
「さて、集まったね?取り敢えず一着ずつ配布するから。場面も一緒に確認するように」
会議室に集うと、其処にいたデザイナーが短く説明をした。
一着ずつ渡すからその際に、どの場面で着る衣装なのかを照らし合わせながら受け取れと。
先ず配られたのは、赤が基調にされたモコモコ衣装。
メンバーのズボンの横にはかなりの量でモコモコが付けられている。
急参加ののは赤をベースに白いシャツと赤と黒のチェックが刺繍されたズボンだ。
その次は、国ごとの場面で着る物。
スペイン担当のKAT-TUN、色はまたも赤。
だがこれはスーツ仕様になっている。
のもスーツで、シャツは黒でファスナーラインは赤だ。
次はKAT-TUNとして歌う歌の時着る服・・
これは黒の衣装であり、も黒いジャケットに黒いネクタイ。
後乱闘の時に着る赤を使った動きやすい衣装。
それから後半に着る白い服。
首にはモコモコした布をSUMMRYタオルの代用で巻く。
大分豪華な服である。
デザイナーが自分の為にその人だけの服を作るなんて凄い事だ。
あの時代では滅多に出来ない事だったもの・・・・
「早速着替えてみて欲しいんだ、着心地が悪かったりしたら踊り難いだろうからね」
「はーい」(全員
「此処で着替えてもいいんっすか?」(赤
「別にいいよ?」
「よっ―――!!!!」
「え?、何?」(和
「いや、その私は・・・・」
「あ!!」(赤
「何だよ急にデカイ声出すなっ」(聖
合わせるだけかと思っていた、デザイナーの言葉に顔色を変えた。
思わず『宜しくないです』と叫びそうになったを全員の目が捉える。
何と言ったらいいかモゴモゴしてるの様子に、気付いた赤西が声を張り上げた。
逆にその声がから赤西へ注意を移した。
皆の視線を受けながら赤西は吃驚しているの背中を衝立の方へ押しながら言う。
「お前胸に何か傷、あんだろ?配慮するとか言ってたし、こっちの衝立の後ろで着替えろよ」(赤
「あ、はいっ」
「そう言えばそんな事言ってたよな、ごめん気付かなくて」(上
「いいえっとんでもないです・・・・」
「じゃ俺等はこっちで着替えてるから」(中
「早着替えの練習も兼ねてなるべく急げよな」(赤
「はい、あ・・あの赤西さん」
「―――?」(赤
「その・・・有り難う、ございました」
「・・・・別に・・それと俺も昨日、無神経な事言ってわる――――」(赤
「ホラホラ赤西君も着替えないと〜」(淳
「だぁ!!てめ、だから田口っっ!!!!」(赤
赤西の言葉で他メンバーも気付いた。
次々に謝罪すると、衣装を持って着替えに向かう。
衝立の向こうへ戻ろうとした赤西の腕を、咄嗟に掴んでは引き止めた。
驚きもあった、けども素直に嬉しいと感じたから
昨日の出来事なんて忘れてしまうくらいに、赤西の気遣いが嬉しかった。
一方で腕を掴まれて引き止められた赤西、内心吃驚しつつ平静を装って顔を向ける。
身長差もある為、視線を合わすとからの上目遣いに見えてしまい
よく分からないが一瞬ドキッとしてしまった。
何俺男相手にドキッとかしてんだよ・・ないわー・・・・
そんな赤西の動揺など知りもしないは、さっきの言葉に対する礼を述べた。
そう言われた赤西、このタイミングなら昨日の失態を取り消せるのでは?と思い
自分からは謝り難いであろう赤西が、珍しく自分から謝ろうとしたその矢先。
例によって例の如く、田口が現れた。
瞬間掴んでいた赤西の腕を放したには気付かず、ニコニコ微笑みながら謝ろうとしていた赤西を連れて行ってしまった。
拍子抜けしてキョトンとなったまま見送った。
赤西が言いかけた言葉は覚えている・・・無神経な事言って、わる・・・・・かった?かな?
私も泣いてしまったりして気を遣わせてしまいましたね・・
間の悪い田口を怒鳴りながら連れて行かれた様が、何やら微笑ましかった。
赤西さんの笑顔を見れる日は、近そうな気がします。
数分後
一着目から四着目まで順番に袖を通して行った。
君は小柄だから結構裾とか袖を詰めたのよ、とデザイナーさんに言われ苦笑を返しといた。
肩幅も詰めたのよーとか言われたのには必要以上に焦った←
早着替えとか言われたから焦って脱ぎ着したせいか、捻った足首に気を回せずに何度も顔を顰める羽目に。
あー・・・そうだ、こっそり四月一日さんに聞いてみましょう。
とか思ってたら不意に真横から話しかけられた。
「終わった?」(上
「( ゚Д゚)ビクゥ」
「ぷ、面白い顔(笑)」(和
「お前等で遊ぶなよ(笑)」(中
「着替えは終わりました、お待たせしてすみません;;」
「多分そのうち自然に早くなるよ」(淳
「何だその多分って」(中
「次ドリボの練習だよな?今日は、見に来るだろ?」(和
「あ・・・・はい、でもその前にちょっと寄る所があるので」
「そうなん?まあ済んだら見に来いよ?」(赤
「はいっ」
吃驚しつつ受け応えるの頭を噴き出しながら亀梨が撫でて行き
その亀梨に後ろから中丸がツッコミを入れてからへ、なあ、と言うとまたも頭をポンポンとさせた。
やたらと頭を撫でたり叩いて行ったりするメンバー。
メンバーからのスキンシップにはやっと慣れてきた。
前は行けなかったレッスンの見学に誘って貰えたのだが、四月一日にも用があるのでその事を先に伝えといた。
コレも慣れって奴ですね・・・此処に来たばかりの時にされてたら
パニックになって自刃してしまったかもしれません←
さっきの着替えの時もドキドキの連続でした・・・・
衝立の外側で殿方が着替えているんですよ??
もう体が緊張して、捻挫の痛みなんて吹き飛びました←
けどまあ、今になって気が抜けたのか痛みがぶり返しましたけどもね。
なので早速四月一日さんに聞きに行かなくては。
誰も居ないのを確認してから、右足を庇うような歩き方に変えた。
歩きながらケータイを取り出して四月一日の番号を呼び出す。
そんな仕草も徐々に板について来た。
「あの四月一日さんですか?です、少し足を捻ってしまいまして何か冷やす物はありますか??」
『腫れてんの?』
「えっ??あの、四月一日さん・・・では?」
『ごめんね今四月一日さん離れてんだよね、何なに?足捻ったの?』
「え、あ、はい・・?」
呼び出し音が10回を超えた頃、漸く電話が繋がった。
なので四月一日の応対する声を聞かずに用件を一気に喋った。
四月一日は職場でが女だと知る唯一の存在。
甘えるつもりはないが、頼りにしている部分が多い。
だから隠す事無く足を捻挫したと話してしまった。
四月一日だと思って疑わないの耳に聞こえてきたのは全く別の声。
明らかに四月一日とは違う声で、軽い調子で聞き返された時頭の中が一気に真っ白になった。
相手が誰なのか分からないままの会話。
独特な感じの声だが、嫌な感じではない。
しかし何方なのかが全く分からない(
戸惑うを受話器の向こうで相手が笑い
気遣うような口調で言った。
『初めましてだよな、俺は嵐の松本潤。君はKAT-TUNのルーキー君だろ?』
「あらし・・(四月一日が渡した事務所のグループ一覧確認)先輩っ!!!いやその、捻挫の事は内密に・・・・」
『ぶっ(笑)面白いね〜・・・いいの?メンバーとかに言わなくても。』
「迷惑掛けたくないので・・・・こっそり治したいんです」
『こっそり?捻挫を治すの?それ面白いね(笑)まあいいか、今何処?四月一日さんまだ来ないから俺が湿布持ってってやるよ』
「面白くないですよ――・・えっ??申し訳ないですよっ」
『いや面白いって、いいよ俺顔出しただけだから暇だし。で、何処?』
「えっとその、会議室前の廊下です・・・・・」
『おっけー』
ブツリ・・・切れてしまいましたぁ・・・・・
事務所の先輩と言う人に知られてしまうなんて迂闊でした・・・
うーん・・何とか黙っていて貰えるように頼まなくちゃ。
松本を待つ間、はその事ばかりを考えていた。
どのくらい待っただろうか、左程待たずに一人の男がへ近づいて来た。
長身で颯爽と歩いて来る様はかなり様になっている。
日本人ぽくない顔の造りが男の魅力を引き立たせていた。
の傍まで来ると、誰も居なくなった会議室に入るように手招く。
招かれるままに出たばかりの会議室に入ると
テーブルに1つの箱を乗せた松本が振り向いて口を開いた。
「さっき電話に出た松本が俺ね、救急箱持って来たから湿布貼っとけ」
「あ、はいっ!初めまして、KAT-TUNのハイフンに任命されました、です!」
「ハイフンに就任したんだ?何かって中性的な声してんだな」
「こ・・個性って事に・・・・あ、しっぷ・・・有り難うございますっ」
「個性ね(笑)そういやメンバーとは仲良くやってる?KAT-TUNは個性派揃いだから大変だったろ」
「最初は皆さん戸惑ってました、でも今は皆さん良くして下さいます」
「へえ〜特に赤西はプロ意識強いから中々受け入れなかったでしょ」
「確かに厳しい事を言われましたけど、赤西さんは優しいですよ?よく言葉を聞いてみると分かります。」
箱の中から白い布みたいな物を取り出して手渡してくれる。
そのまま患部に乗せてみると、松本が笑いながら布についてるセロハンを剥がしてに返した。
松本は松本で、初めてルーキー君とまみえじっくり観察していた。
小耳には挟んでいたから赤西とルーキーの確執は知ってた。
確執って言うか赤西の一方的な敵視だろうけどな。
ふーん・・?すっげいい子じゃんルーキー君。
ハイフンに選ばれたのも納得かもな。
慣れない手つきで湿布を貼る様が微笑ましく思えた松本、包帯を遠慮してただが包帯で足首を固定するように巻いてやった。
テーピングじゃ包帯は隠せないしね〜・・・・
も靴下に隠れるように巻いてくれた松本に感謝しつつお礼を言った。
松本のお陰で用件も済んだので、はメンバーのいる練習場へ行く事にした。
手当てをした松本、彼も救急箱を手にドアへ向かう。
ドアを出た先に、意外な人物が居た。