因果
一抹の不安を覚えつつ、始まった犯人探し。
けどさぁ・・・・この絵はないだろ。
「・・何が言いたいかは分かるから、その顔やめろ。」
呆れたような目を向けてると、気づいたのか隼人が指摘。
分かってるなら、もっと詳しく調べてから描けよ。
公園で誰が描いたか分からないが、とにかく見つけ難い事
この上ない似顔絵を手渡され 全員解散。
俺は何時ものメンバーと、町を回りながら冒頭の会話をした。
もうスッカリ、隼人とはぎこちなさもなくなり
何時も通りの態度で接している。
あんな事を気にしてるより、今は目先の問題を解決する事。
結局収穫がなくて、パチンコ屋の出口に向かうトコだ。
その間、俺は教室で聞いた高校の事を考えていた。
竜神学園・・それは、俺が一度たりとも忘れた事のない名。
俺を車道へ突き飛ばした奴等が着ていた制服のバッチ。
その文様は、竜が模られたバッチだった。
憎き相手・・・その当時の奴等の名は知らないが
手がかりを掴むには、其処へ行けば分かるだろう。
卒業生だ、俺よりも一つ上だったし。
「ぜってぇ捕まえてやる」
憎々しげに呟いたの言葉を聞き、隣の誰かが同意する。
「の言う通りだ、俺も絶対偽者捕まえたい!」
思わずドキッとした、吃驚して声の人物を見る。
それはタケで、しかも言ってる事は偽者の事。
そりゃそうだよ・・タケは知るはずが無い。
「此処も収穫なしかよ〜」
「やっぱあの絵がきつかったんだよ」
「顔ナシだもんなぁ」
「けど高校生が堂々とパチンコ屋から出てくるたぁいい度胸してるよな」
しばし全員で納得。
先に気づいたのは浩介、あれっと思って隣を見れば・・
「「「山口!?」」」
「「ヤンクミ!?」」
いつの間にか、つっちーと浩介の間に久美子がいて
俺達はそれ相応の反応をした。
竜だけは、何も言わず顔だけ向けて驚いてる。
うーん・・冷静だ。
☆☆
さて場所は変わって、夕方集合した公園。
「犯人探し?」
「仲間がハメられたってのに、黙ってる訳にはいかねぇだろ。」
早速事情を聞き出した久美子は 意外な訳を聞き
それでも少し嬉しそうにそうか・とだけ言った。
「お前等、こっそり友達思いだな。それで、何か手がかりは見つかったのか?」
嬉しそうに言った久美子に、後ろから竜がチラシを手に声を掛ける。
「こんなんじゃ、探しようがねぇよ。」
手渡されたチラシに、久美子も納得して言葉を失う。
渡し終えると、竜はつっちーの隣に腰掛けた。
俺は上の段に座ってて、隣にはタケと浩介。
すぐ下の段には、俯いて座る隼人。
しかし・・・腹がいてぇ。
女な自分を呪いたいぜ・・・・
腹を摩りながら久美子の言葉を聞く。
今日は帰れ、と久美子は俺達に言った。
「、まだ具合わりぃの?痛むのか?」
「大丈夫だよ、昨日よかは辛くない。」
俺達の会話に気づき、久美子も隼人達も危惧した目を向ける。
隼人と目が合い、つい目線が隼人の唇を見てしまう。
厚みのある柔らかい唇。
『俺はおまえが好きなんだよ!!』
こう言われた事も、合わせて思い出す。
「嘩柳院、大丈夫か?」
「無理すんなよ、。」
隼人から視線を逸らせずにいると、下から久美子が声を掛け
続いてすぐ下からも、隼人が心配し 声を掛ける。
他の仲間達も、心配して俺を見ていた。
「おや?おやおやおや〜?こんな時間に皆さんお揃いで 課外授業ですか?」
和やかな雰囲気を、憎たらしい刑事の声が壊した。
妙に笑顔なのが、怒りを煽る。
睨むように見ていれば、前に立った刑事と目が合う。
ヤバイ雰囲気を感じたのか、タケと浩介が
俺を隠すように腕を前に出した。
それに吃驚したが、二人の気遣いに心が温かくなる。
「刑事さんは見回りですか?」
「ええ、最近物騒な事件が起きてましてね・・・」
「物騒な事件?」
「事務所荒らしや、ひったくりですよ」
話を変えるように問いかけた久美子、刑事もそれには答え
突然あ!と大声を出すと、俺達を見回してこう言った。
「まさかお前等じゃねぇだろうな!」
「言い掛かりもその辺にしねぇと、ゆるさねぇぞ?」
「んな訳ねぇだろ」
プチンと来た俺と隼人が、刑事へ掴み掛かろうとするのを
「待て、矢吹 嘩柳院。」
久美子が前へ来て、俺達の腕を掴み 止める。
そのまま笑顔で刑事を振り向き、証拠もなく疑うのは止めろと言った。
言われた刑事は、将来ある若者・の言葉に鼻で笑い言う。
「将来ある若者ですか・・まあせいぜい頑張って。」
嫌味ったらしい笑顔、アディオス!とか言い残して去って行く。
去り際に、俺の方を見ながら。
「「ムカツク!」」
カチンと来た俺と、怒りを堪えた久美子の声かハモった。
その後久美子は帰って知らないが、俺達には災難が降りかかる。
大人しく帰ろうと、さっきの公園とは違う公園を通り抜けようとした。
他愛ない会話、浩介はつっちーと腕を組んでる。
この二人はよく一緒につるんでるから、仲もいい。
俺は隼人とタケの隣、隼人の右横に竜がいる。
腹の痛みもダルさもピークに達していて、あまり喋りたくない。
家に帰る事だけを考えていた。
「痛む?」
度々俺を心配したタケが、可愛く聞いてくる。
うーん・・癒される。
「タケ〜」
「なになに??大丈夫?っ」
ついつい甘えたくなり、隣のタケへ寄り掛かってみる。
するとタケは、吃驚して寄り掛かったの腕を握って支えた。
背丈も近いので頭をタケの肩に乗せ易い。
これにショックを受けたのは、隼人と竜。
つっちーと浩介はひゅーひゅー!と冷やかしてる。
「コラ〜ッ!俺の許可ナシにイチャイチャすんな!」
「おまえが許可したら、していいのかよ」
「・・・それも駄目。」
ズルイ!と叫びながら間に入った隼人。
思わず叫んだ言葉に、冷静に竜が突っ込みを入れる。
鋭い突っ込みに、隼人も考えた後否と答えた。
その時だ、ゾロゾロと自分達の前に不良らしい者達が現れたのは。
またしてもトラブルかと、タケとつっちー達が『え〜』と言う。
あの時も、こうやって囲まれた。
抗う術のない俺達を、竜神学園の生徒が。
「隼人、竜・・」
勝手に体が恐怖を思い出し、近くにいた二人の名を呼ぶ。
の異変に気づいた二人はとにかく傍へ行く。
「平気か?」
「とにかく俺等の傍にいろ」
背でを隠すように立った二人。
小声で俺へ、二人は囁き現れた頭と向かい合った。
現れた頭の顔を見た竜の顔が、驚きに変わる。
「工藤さん・・」
そう呟いたのは、竜だけ。
他の隼人達は顔色一つ変えない。
当然 転校した来たは知らない。
「あれ?コイツいたっけ?」
「最近転校して来たんだよ」
「ふーん・・綺麗な顔してんじゃん」
「・・そっち系?」
近寄って来たのと、竜がちょっと動いた為
後ろの方にいた俺は その工藤とやらに気づかれた。
ニヤニヤした顔で顔を褒められても、虫唾が走るだけ。
同じく嫌そうな顔をした隼人が、俺を再度隠しながら指摘。
いや・・自分でも同じ事思ったからさ〜否定出来ねぇ・・・
「ふざけんな、まあそれはともかくどうだ?有名になった気分は」
「アンタらがやったんだ」
仲間と顔を見合わせて笑い合う様を見て、ピンと来た隼人が
気だるそうに言えば、元値もかからねぇしな・と
楽しげに制服の事を言った。
どうやら、コイツ等は黒銀の生徒だったらしい。
「学校辞めたアンタ等が、今更何してんすか?」
「ちょっと暇だったから遊んだだけだよ」
とかふざけた事を言ったかと思えば、隼人と竜を勧誘。
アンタ等の中に、隼人と竜が入る訳ねぇじゃん。
生理で苛々する中、は勤めて冷静に工藤を見る。
クソみてぇな学校にいたって、つまらねぇだろ?と
工藤が二人に言った。
「そうでもねぇよ、別に面白くねぇ事もねぇし・・。」
「ははっ・・確かに」
「言えてる」
学校嫌いだっただろ、と言われた竜だが
皆の視線が集まる中 楽しくない事もない。と答え
これを聞いた隼人がフッと笑い、俺も同意した。
今の俺達の頭には、同時に久美子の姿が浮かんだだろう。
「スカウトしてやってんだろ、返事は。」
「わりぃっすけど、俺 アンタ等みたいなのに興味ないっすから」
笑い合う俺達三人に、不機嫌そうな工藤の言葉が掛かる。
少々脅しめいた響きの声。
タケ達は終始黙ってそれを見守っている。
竜が断ると、俺の手を引いたまま隼人が前へ進み出て
工藤の目の前に立つと。
「暇じゃないんすよ、じゃね。」
ピースを作り、指を動かすとその横を通り抜ける。
当然頭に来た工藤は、仲間に囲むよう指示。
立ち去ろうとした俺達を、ゾロゾロと工藤の仲間が囲った。
あちゃ〜逆撫でしちゃったみてぇだな。
ややこしくなる事態に、は小さく舌打ち。
しかも工藤達の手にはナイフが握られている。
俺は最悪の事態を予想した。
そこへ、隼人の指示が響く。