小さな異変
夢を見た。
それはそれは不思議な景色で、私はすぐに夢だと理解した。
明らかに景色は現ではなくてまるで琥珀色の幻想。
ビルも街も何もかもがない景色。
そして、青い月が照らす大地に私はいた。
大地を照らす月を眺め心がとても澄み渡り
四肢の力は入らず、夢の中だと言うのにこの穏やかさの先には
『死』が待っているのだと分かった。
不思議と怖くなくて、ただ心は静かに凪いでいる。
死を待つ私は、大地ではなく誰かの腕の中にいた・・・
【私のせいだ・・すまない・・・私のせいでお前を らせてしまった】
私を抱く人は男の人で、その声は震え、頬の涙が落ちた。
自分のせいだと責める男の人の声に、死に行く私は何と答えたんだろう。
謝る声はとても悔いていて夢を見る側のの心も痛んだ。
胸がギュッと締め付けられて、自身を責める男の人に貴方のせいではないのよ・・と言いたくなってしまうくらい。
そう言いたいのにその人の顔だけは、見えなかった。
ずっと自分を責めるその人の声だけが聞こえていた・・・・
そんな私達を青い月だけが照らす。
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闇が去り、光が地上へ差す頃。
深い眠りが過ぎ、は眠りから覚める。
そして気付いた。
不思議な夢を見ていたと言う記憶と、濡れた頬。
どうやら泣いていたらしい・・・・・
あれは何だったんだろう?
全く見た事のない景色だった。
まあ夢だし・・見た事ない景色が出て来る場合もあるっちゃーある。
しかし自分が死ぬ所の夢とか初めて見たわね・・
ベッドから上半身を起こし、カーテンを開けに向かう。
シャッと両手で開けられたカーテンからは、眩しい朝日が降り注いだ。
暗い室内に明るい光が入り込む。
昨日は上田君が戻って、それと共に新たな課題も出来た。
八神とか言う私も和也達も知らない第三者が、このアクセ等を探している事。
このアクセには何の意味があるのか、これらを何故家が代々管理して来たのか等々。
上田の提案で調べ物班は二手に分かれる事となり
亀梨・赤西がネットで日本の神について調べ、は自分の家について調べる事になった。
ついさっき見ていた夢も気になったが、先ずは目先の問題が先だと順位付け
身支度を整えると、は自室を出てリビングへと向かった。
一方大部屋←
時刻は朝の6時。
が起床した頃、部屋が用意出来るまで猫達と共に寝起きしている参謀上田。
胸の辺りが重い事から目が覚めた。
「・・・・・このケツは中丸だな」
朝一で上田の口から出たのはそんな言葉だった。
とてもアイドルの発言だとは思い難い・・
上田の胸の辺りで丸くなって寝ているのはチャトラ柄。
つまりは中丸である・・
いつ上ったのかは知らんが、人間だと仮定して考えると恐ろしい光景だ。
薄ら寒い想像をしてしまった上田は、身震いしてから中丸を床に落とし←
隣の客室に向かいつつ、まだ暗い廊下を進んだ。
が起きているとは知らずに向かったのは赤西の部屋。
この先の部屋に亀梨がいるんだが、近さで選んだ。
ソッとドアを開けると、スヤスヤと眠る赤西を見つける。
まあ早朝のこの時間じゃ、まだ寝てるわな。
とか思いつつ室内に進入して、探したのはパソコン。
あの大部屋にはパソコンが置いてないんだよね〜
元々仕事部屋だったのかデスクワーク向きの造りで、置かれてるパソコンも最新。
行動に起こすなら早い方がいい。
と思いつつ入れる電源。
・・・あれ、反応がないなコレ・・・・・
電源を入れたにも関わらず、起動するそぶりがない。
最新式なのに壊れてるって事は有り得ないはず・・・・
となると?
元が入ってないのかな・・あ、やっぱりそうみたい。
何やらご丁寧に赤西の奴、元のコンセント抜いてやがった。
まあ節電にもなるからいいだろうけどさ。
プラグを手に、ベッドの横にあるコンセントに向かう。
その時赤西のつけてる指輪が目に入った。
三貴子の一人、月の神の神器とか言う月貴石の指輪。
にしてもエライ事になったよね〜・・・まあ猫になった時点で十分凄い事だけどさ。
何て事を思ってたら、前触れもなく何かが聞こえた。
最初は声だとは思ってなくて、プラグをコンセントに差し込もうと屈んだ時だ
―大神・・―
は??
聞き慣れない言葉が誰かを呼ぶ声。
勿論俺の事じゃないでしょ・・・・・
だって俺の名前、オオミカミとか言う大層な名前じゃないし
―応えよ、光の子・・・―
え?だからそれ誰だよ。
内心で否定したら、それを打ち消すみたいに強く聞こえる声。
訳が分からない。
朝っぱらから俺寝惚けてるのかな。
頭の中で否定すると、更に否定を赦さないみたいに頭痛が襲った。
「――った・・・!」
重く痛む頭に手を当て、壁に片手を付き立てて耐える。
ガタン、と響いた物音で赤西の眠りが一瞬覚めた。
ぼんやりと目を覚ました赤西は、先ず人の気配に意識を覚醒させた。
ハッと寝返りを打って今度こそぶったまげた赤西。
「―――ちょ、上田?何してんだよこんな朝っぱらから・・・・・?」
「イタタタタ・・・っ」
「え、上田?どした??」
「何か頭、割れそ・・・・」
「は?平気かよお前」
人の気配に起きてみればベッドサイドには上田がいて
何やら頭を押さえて痛みに耐えてるようだった。
ただならぬ様子にベッドから出ると隣に立つ。
荒々しい呼吸の合間に出た言葉通り、かなり辛そうだった。
傍に立つその肩を支えようと手を伸ばし、上田の片腕を肩に回して支えてみる。
ベッドへ寝かそうかと思った時、一瞬月貴石が光った。
何だ?と意識が指輪へ向いた瞬間、支えていた上田の体から力が抜けて膝から崩れたのを慌てて抱き留めた。
「―――っ、上田!?」
ガクン、と赤西へ体を預けるようにして気を失った上田。
改めて見た顔色は悪く、青ざめている。
頭痛に耐える上田を支えたら、眩く輝いた指輪の石。
そしたら意識を無くして倒れた上田・・・・
朝っぱらの頭では、その展開に気後れしてしまった。
にしても上田に何が起きたんだろう?
つーか何で俺の部屋にいたんだ?
上体を肩口に寄り掛からせて支えつつ思案。
部屋を見渡してその答えは出た。
電源の入れられたパソコン・・・・
つまりはこの朝っぱらから此処に調べ物をしに来たんだろう。
それよりもカメ起きてっかな。
上田が来た理由を理解すると、さっきまで寝てた自分のベッドへ倒れてしまった上田を寝かせた。
野郎を姫抱っこしちゃったぜ←
まあ上田は軽いし本人気絶してて知らないからいっか(
それから先ずは履歴から亀梨の番号を表示して通話ボタンを押す。
静かに部屋を出て、隣の客室・・つまりは亀梨の部屋の前まで移動した。
呼び出し音を鳴らしながらドアをノックする。
10回手前で、室内から苛立った声が聞こえ
同時に荒々しく目の前のドアが開けられた。
「何だよ赤西ー・・・・モーニングコールとかいらねぇんだけど」
「いや、俺も野郎にモーニングコールする趣味とかねぇから」
「じゃ何だよ」
「さっき上田が俺の部屋で調べ物してたんだけどさ、何か倒れちゃったんだよね」
「へぇー上田がねー・・・・・・って、は??どう言う事?」
「急に頭が痛いって言ったと思ったら倒れちゃったんだよ」
「ちょ、兎に角何処?」
「俺の部屋」
寝癖の髪を直しながら現れた亀梨。
ザッと説明したが、理解出来てないのか赤西の説明が下手なのかは分からんが
直接説明聞くより部屋に行った方が早いと解釈、赤西の体を押し退けて赤西の部屋へ。
ドアを開けて入ると、言葉通り、赤西のベッドには
顔色の悪い上田が寝かされていた。
小さな異変は別の所でも起きていたのである。