本当に大切な事
20XX年 8月
時は全国大会。
日本一を決めるテニスの大会。
私は比嘉中のマネとして、東京の会場に来ている。
沖縄しか知らない身としては、東京の広さと人の多さには驚かされっぱなしだ。
それと参加する学校の選手達にも目が行く。
大会三連覇を狙う、立海とか・・・曲者揃いの六角。
関東大会で立海を降した青学、その青学にリベンジをしようとしている氷帝。
不動峰・四天宝寺とか?比嘉中が勝ち進むためにも情報を集めないとね。
辺りを見渡しながら歩く事数分。
うちと当たる六角の面々が、アップしてるのを見つける。
まだ一年生なのに部長になっている、葵 剣太郎君。
長いラケットを操る天根ヒカル、パートナーの黒羽春風。
隙のないテニスをする、佐伯虎次郎。
あと1人の人の名前が出てこない(失礼)
アップだけど見学して皆の為にも情報を集めないとね。
◇◇◇
その頃、コートに向かう比嘉中の面々。
独特なユニフォームに身を包んだ彼らは、注目を集めていた。
九州を制した今日まで、全国に名の挙がらなかった名前だけに目立っている。
「わったーあんし目立ってるさぁ」
「当然でしょうね、我々比嘉中が全国に進んだのは初めてでしょうから」
「わったー比嘉中の力、本土モンに見せてやるさー」
「そうだな、それよりマネージャーは何処行ったさー?」
各々にラケットをコート際に置きながらの会話。
目立ってる事に気づいた凛、辺りを見回しながら得意気に言う。
それにサラッと答えたのが部長の木手 永四郎。
この木手が、比嘉中を初の全国へ導いた。
張り切って意気込む甲斐の後ろで、知念だけがふと気づいた事を口にした。
その瞬間、全員がしらける。
凛は咄嗟に辺りを見渡してみた。
確かにマネージャーの彼女の姿が見えない。
「あにひゃー・・何処行った」
「試合はそろそろ始まるぜ?」
元気に自分達の周りを駆け、あれやこれやと世話を焼きたがる彼女。
その姿がない、まさか迷ってるのか?
不安が過ぎった途端、自分の体は動いていた。
「ちょっとわー捜してくるさぁ!!」
「凛!?わーも行くさー!!」
ラケットを慌しく置き、駆け出した凛。
反射的に甲斐も凛を追ってコートを後にした。
木手と知念は、呆気に取られつつも2人を見送る。
皆が騒ぎになってる頃、私はそうとも知らずにコートを歩き回っていた。
六角を見終わったから次は四天宝寺ね、と歩き出したタイミングで
視界に1つの影が入り込み・・・・ドンッと肩と肩がぶつかった。
「きゃっ!?」
鈍い衝撃と痛みにも、少しよろめいてしまう。
ぶつかった相手も驚いたような声を発し、肩を押さえながら此方を振り向いた。
誰かにぶつかったって分かった途端、私は慌てて相手に謝る。
よそ見してたって訳でもないけど、ぶつかったのは確かだし。
だが相手は、相当怒っていた。
「てめぇ・・・ぶつかっといて謝るだけか?」
「そうだぜ彼女〜コイツ今日試合あるんだぜ?痛めてたらどうしてくれるんだよ」
「ごめんなさい!でも、見た感じそんな腫れてないし・・・・」
「あぁ?てめぇは医者なのか?」
「コイツ痛がってるんだろ、慰謝料くらいくれるだろうなぁ?」
「はぁ?慰謝料?女の子とぶつかったくらいでおかしくなる腕なら、テニス部入れないんじゃない?」
しかし私も腹が立った事に違いはない。
有り得ないでしょう!?そんな強くぶつかってないのに腕が腫れたりするもんですか!
スポーツしてる男子と、そんな力のない女子の違いくらい分かってるくせに。
私がそう言い返した言葉で、彼らは更にヒートアップ。
これはマズイかも?
でも今更逃げるなんてしたくないし、負けたくないもの(何か違う)
一歩も引かずに2人の顔を睨みつければ、逆上した相手が私に腕を伸ばし
乱暴な動きで腕を掴んできた。
力の差があるから、かなり掴まれた腕が痛い。
此処で悲鳴を上げれば負けると思って、小さく呻くだけで耐える。
外野も騒ぎに気づいて集まり始めていた。
「放してよ!私は急いでるんだから」
彼らの怒りのメーターは、この言葉で頂点に達したらしい。
怒鳴り声と共に、私の頬が高く鳴った。
◇◇◇
マネージャー探しに出た凛と甲斐。
探し回る先に、人垣を見つける。
こんな所で注目を集める誰かでもいるんだろうか?
隣に立つ甲斐と顔を見合わせ、人垣へと近寄って行く。
すると段々聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「このアマ、調子にのってんなよ?そのジャージ・・・見た事ネェな」
「比嘉中じゃねぇ?」
「だったら何よ!」
嫌な予感がした。
本能のままに人垣を割り、中心へと進む。
そんな凛を追うように、甲斐も人垣を中心へ進んだ。
「マネージャーの非礼はそいつ等も同罪だろ」
「調子に乗るなって挨拶してやらねぇとな」
2人の男は怪しく笑い、私の腕を引き寄せる。
じわりと恐怖が芽生えてきた。
私のせいで、皆に迷惑が掛かってしまう。
此処で揉めさせてしまったら、彼らの努力が無駄になってしまう。
私が何とかすれば、彼らには非が及ぶ事はない。
彼らに何とかそれをさせないように頼み込もうと口を開くより先に、それは聞こえた。
「わったーにどう挨拶するんだって?」
「ぬぶしらんけーのも、うぬぅあてぇーしいにやみわぁー」
凄く不機嫌なのが伝わってくる声。
でもそれは、とても心強い彼らの声だった。
パッと顔を向ければ、金糸の髪を靡かせた凛ちゃんと
帽子を目深く被り、他校の2人を睨んでいる甲斐君の姿。
相手も私も野次馬も2人の登場に驚いてる中、凛ちゃんが颯爽と傍に来て私を解放してくれた。
その男子よりも、ずっと優しい動きで。
「凛ちゃん!甲斐君!」
とっても嬉しくて、思わず目の前の凛ちゃんに抱きついてしまう。
それを見た甲斐は羨ましそうに凛を見つつ、彼女を護るように傍に立って笑った。
こんなにカッコイイ2人に迎えに来てもらえるなんて、恥ずかしいけど嬉しすぎる。
抱きついた時に、ふわっと凛ちゃんの付けてる香水が香った。
「やーそのちらどうしたさぁ!?」
「えっとこれは・・・・」
「ぬぶしらんけーのはやったーの方みたいだな、コイツの非礼って奴わんが此処で返すばよ?」
「・・・臨む所だ!」
「駄目、甲斐君!!私の非礼の借りならテニスで返せばいいよ!こんな奴のせいで甲斐君に怪我して欲しくない」
赤く腫れた頬をそのままに叫ぶ姿に、ピタッと甲斐も動きを止める。
凛から離れ、自分を見つめるその顔は少し泣きそうに見えた。
その顔にわったーは弱い。
渋々分かったさーと呟いた甲斐君に、にふぇーでーびると私も返す。
折角全国に来れたんだもの、テニスで勝負すれば文句ないわよね。
私の言葉に渋々頷いた甲斐と凛だが、鋭い目は他校の2人に向けたまま。
見た所、あにひゃーは殴られてる。
それをわったーに言わない所からして、わったーの為にあにひゃーは我慢してんだな。
「分かったさぁ・・・やーの言う通りテニスで返してやる」
不敵に怒りを含んだ目で凛が言い、一先ず彼らは私達の前から立ち去った。
喧嘩にならなくて良かったと先ず安堵。
そんな私の肩を、どちらかが掴んだ。
ぶつかった時の痛みが、今更甦る。
「つぅっ・・・」
「やー無理してんな、怪我してるんじゃあらんば?」
「平気だよ、それより早くコートに・・・・」
「ちょっときちみー!」
肩を掴んだのは凛ちゃんだった。
私の言葉も聞かずに、痛めてない方の手を引く。
置いて行かれた甲斐は、小さく楽しげに笑うと
自分達を待ってるだろう木手達の所へ、一足先に戻る事にした。
◇◇◇
連れて行かれたのは水道のある水飲み場。
さっきからずっと凛は黙っている。
怒らせてしまったのかしら・・・・
凛の態度を不安に思っているうちに、水飲み場前のベンチに座らされた。
目の前に屈む凛、綺麗に整った顔が同じ目線に来る。
屈む凛に合わせて金糸の髪もふわりと舞った。
そんな動作だけで見惚れてしまう。
バレないように目を逸らすと、真剣な顔の凛ちゃんが私の額を指で弾いた。
「いたっ!」
「やーはふらか?なんしわったーを呼ばないさぁー」
「だって・・・喧嘩になって欲しくなかったから、折角掴んだ全国大会だよ?こんな事で無駄にしたくなかったの」
「やーの気持ちは嬉しいさぁー、けどな、やーが居て初めて全国来た実感があるんばよ」
「凛ちゃん・・・」
「やーには笑ってわったーを応援して欲しいさぁー、悪かった・・痛かっただろ?」
殴られた頬に触れ、悲しそうな顔をする凛。
私だって、凛ちゃんにそんな顔させたくない。
皆には楽しんで試合をして貰いたいもの。
私の無理が、凛ちゃんをこんな顔にさせてしまうなら
凛ちゃんの言う通り、私は笑顔で皆を応援しよう。
「平気だよ?凛ちゃんと甲斐君が来てくれたから・・2人が傷つかなくて良かった」
「ぬうがよ、それはわんの台詞さぁー。」
「試合に行こう、凛ちゃん。私、応援するから」
「そうだな、わったー比嘉中が優勝する為にも・・・やーの応援が必要さぁー」
可愛らしく微笑む姿が愛しくて、この腕に抱き締める。
わんはやーがいてくれるだけで・・・強くあれるんばよ。
続いては凛ちゃん相手デス。
ちゃんとそうなってるかが心配ですが・・・・
昨日全国大会のDVDをレンタルしてから、何度も見まくってますw
PC越しに写メをとりまくりました(主に甲斐君を)
このまま比嘉中夢が増えていけば、部屋を作るかもしれません。
早く2巻借りたいな〜〜〜日々妄想しながら仕事を頑張ってます。
ぬぶしらんけー「調子に乗るな(のは)」うぬぅあてぇーしい「いい加減にしろ」あらんば「ないのか?」
ふら「バカ」ぬうがよ「何だよ」