向日葵
買っちゃった。
5月に初めて言葉を交わし、先月には本屋で遭遇。
その時教えて貰った青年のお勧めの小説。
興味がなかったのに中古を勧められて今買って来ました←
読んでみて予想通りのだったりして?とは思ったが
笑顔で勧められてしまった手前、読まない訳には・・・・
あつーい夏の日。
は買った本を胸に抱いて炎天下を歩いていた。
帰ったらクーラーの利いた部屋でゆっくり読もう。
『笑っちゃってごめんね、何か必死な様が可愛くてさ』
とか不意に青年の言葉が甦る。
可愛くて・・・・とか言われ慣れてない。
簡単に言わないでーとか思う、のよ。
別れた男にすら言われた事ないんだから・・・
何であんなサラリとナチュラルに言っちゃってくれたんだあの人。
サングラス外したらイケメンってズルイ。
またもや名前は聞けなかったんだけどさ・・
縁があってまた会ったら聞けばいいかなと思う事にした。
暑い・・・兎に角暑い。
先ずは電車乗ろう、クーラー利いてるだろうし。
青年と遭遇した本屋を出て、駅に向かう。
駅へ続く道の途中には数件の店が軒並みを並べている。
お昼はもう買ったし、後は駅に向かうだけだった。
「・・て・・・・すよね?」
「キャーーッ生で・・・・下さい!」
「・・・めん・・そいでるから・・・・」
ふと聞こえてきた意味の分からない会話。
何かミーハーな女の子が騒ぐような声。
その合間に聞こえる気を遣ったようなそれでいて困った声が聞こえる。
足を止めて通りの反対側を見て、は見つけた。
二人の女の子に行く手を遮られるように立たれ
どうした物かと困ってる一人の青年。
物凄く見た事のある背格好・・・・・・もしかしなくてもあれは・・・
誰なのか分かった瞬間、私は持っていた本を鞄に突っ込み
その手で会社の封筒とクリアファイルを取り出し
お洒落眼鏡を掛け直すと、全速力で横断歩道を駆け抜けた。
急いで歩道を走り、その現場へと近づく。
そして近づきながら私はこう言った。
「遅くなりました!現場入りは10分後だそうです!早く向かいましょ!得意先待たせる訳にはいきません」
「は?」
「何この人・・・・?」
「あ!ホントだ、寄り道しすぎましたね。急ぎましょう!」
「えっ?あ!待ってよサインちょーだいってばーー」
「いつかねっ!」
思わず駆け寄って青年の腕を引っ張る。
突然現れたに虚を突かれ、少女二人が怪訝そうに睨む。
だが必死な私はそれさえ気づかないまま、駆け抜け
引っ張られた青年も意図を解し、口裏を合わせワザとらしく時計を見ると
少女らの隣を駆け抜け、去り際に曖昧な台詞も残して去った。
彼女らを置いてどのくらいか駆け抜け
何区画かを曲がって見えた公園でやっと立ち止まった。
初めて見る景色、呼吸を整えてハタと気付く。
「ごめんなさいっ」
夢中だったから青年の腕を握ったままだった。
何か勝手に走ってきちゃったけど、平気だったのかな。
自分と同じく呼吸を整えてる青年に謝る。
困ってるように見えたからついやっちゃったけど・・・・
ジッと見ていると、青年は漸く顔を上げてまたも眩しく笑った。
「マジ最高、ああ来るとはね」
「え?え?」
「機転利くんだな、サンキュ。かなり助かった」
「良かった・・・思わず腕とか掴んじゃって、もし違ってたら迷惑だったかなって思ってたから・・」
「必死だった?でもホント助かったから、ありがとな。」
サングラスを取って笑う様が絵になる。
少しだけ胸がざわついた。