葉月の物語



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そして夕方。
明日に控える納涼祭に参加する為
は支度を開始した。

着替えとかメイク道具やら?
こういう道具を見ると
あ~・・・私女の子だったねって再確認出来る。

かなり忘れがちになっちゃってるから(笑)
最近じゃ、スカートよりパンツ派だし
女の子って可愛いよねとか思ったり
取り敢えず現地で必要そうな荷物を詰めた。

🌕「ついで、かぁ・・・」

不意に毀れた呟き。
それはふっかさんが言った言葉だ。

(架空の)従妹に逢えるかが重要で
納涼祭はついで。
ふっかさんに言われると何だか悲しかった。

私のステージよりかぁ・・・。
って、は私だっつの

💚「何がついでなの?」

手を止めた際毀れた呟きは
コトリと落ちるだけだった筈が
急に現れた誰かに拾い上げられた。

驚いて振り向けば、戸口に立つ長身の兄。
唯一私が女の子だと知る亮兄の姿があった。

良かったぁ・・・聞かれたのが亮兄で
人知れず胸をなで下ろし亮兄に笑ってみせる

🌕「ただの独り言だよ」
💚「ふーん?じゃあ支度終わったら寝るんだよ、明日現地にはバスで行ける?」
🌕「うん、さっくんが乗せてってくれる」
💚「いつの間に約束したんだね了解🙂」
🌕「亮兄は見に来てくれるよね・・・?」

誤魔化すのはしたくなかったが
自分の気持ちなのに説明のしようがない事を
わざわざ兄に話すのも躊躇われ、誤魔化した

亮兄は数秒私を見つめていたが
話を変え、明日の交通手段を聞いて来た。
深くは聞かず話を変えてくれた兄に内心で感謝し、向けられた質問に答える。

佐久間からは祭りの話が出た後LINE通知が個別で送られ
会場まで乗せてってあげるよと言ってくれたのだ。

そう話したら亮兄は何故か苦笑。
ちゃっかりしてるなぁと呟いてもいた🤔

それから訊ねた問い。
深澤の事があり、確認したくなったのだ。
亮兄は自分を見に来てくれるよねと。

💚「勿論見に行くよ?」
🌕「ついで・・・なんかじゃないよね」

妙に必死さも伴う声に阿部は気付いた。
不安気に"ついでじゃないよね"と確認する様から、自ずと察する先程の独り言。

💚「誰かがそうに言ったの?」

努めて柔らかい聞き方で確信に迫ると
気まずそうに俺を見たが頷いた。

誰だよそいつは🤨
と眉間が険しくなるがすぐ察した。

納涼祭の話は限られた兄弟しか知らない。
居合わせた佐久間とふっか。
今居ない兄弟らはまだ仕事で不在・・・。

この後グループLINEで話す予定だから
に心無い言葉を言った犯人は2人に絞られ
且つ特定も容易に出来てしまった。

💚「・・・ふっかのアホか」
🌕「――!」
💚「当たりみたいだね(笑)」
🌕「亮兄鋭すぎ」

名前を出せば分かりやすく肩を揺らした
しかし幾ら深澤でも、本人を前にそんな事を言うだろうか?と疑問も湧く。

直ぐに確認したらなるほどとなったが
あんにゃろめとも思った。

てか、事態がややこしくなってたみたいだね
6月にふっかは女の子姿の彼女と会っていた
理想の出逢い方をしたと言ってたのって・・・
もし俺の予想通りなら、まあ・・・悔しいかな。

あとだって知らないからって
末っ子として目の前に居る
ついで発言は許し難いねぇ・・・(^ω^#)

💚「ふっかのバカには謝らせるよ🙂」
🌕「大事にはしたくないから大丈夫」
💚「大丈夫には見えない顔だけどね?」
🌕「・・・私にも分からないの」
💚「話せる範囲で良いから話してごらん」
🌕「久しぶりに箏が弾けて嬉しいんだ・・・」
💚「うん」
🌕「なのに、気持ちが晴れなくて・・・」

眼下のはずっと沈んだ顔をしており
それは阿部に深澤の事、彼に言われた事を打ち明けても晴れる兆しはなく

優しく促してみた結果、紡がれた悩み。
多分だが、ふっかに"ついで"と言われたのがネックになってるようだった。
確かに架空の従妹に逢えるかもしれない、そのついでに見に行くと言われたら何それと感じるかもしれない。

が、見た感じの気落ちした理由は
それだけには見えなかった。

💚「ふっかに言われたから悲しいの?」
🌕「うん・・・」
💚「言われた時、どう思った?」
🌕「・・・私より従妹に会いたいんだな~・・・」
💚「同じ事を俺や佐久間に言われたら?」

真相を探る問いが続くが素直に答える
今のとこだとよくある感情で
家族間、友人間でも感じる感情の範囲。

更に突っ込んだ問いに対し
私は他の兄達に言われたらVerを想像する。

💗『も応援に行くけどにも会いたいな~!』

ってニコニコ笑顔で言うさっくんをイメージ

🌕『もしかしたら会えるかもね!』

・・・うん、ノリで返せる気がする。
亮兄もまた然り・・・あれぇ?

目の前で私の一人芝居を見ていた亮兄が一言
疑問で埋め尽くされた私の思考を一気に晴らす事を口にした。

💚「ふっかに言われたのが悲しいんだね」
🌕「・・・そう、なのかな」

なるほどねぇ・・・そうか、ふっかなのか~・・・
俺や佐久間に言われてもそこまで悲しくないが、ふっかに言われたから悲しい。

もう答えは出てるじゃん~・・・。
よりにもよってふっかなのが悔しい(酷い)
そっかぁ・・・俺じゃないんだね・・・
うん、思ったよりショックかも(笑)

🌕「亮兄?」
💚「悲しく感じる理由、分かると良いね」

の気持ちを察してしまい
思ったよりショックだった阿部だが
何とか切り替えて励ましの言葉を贈った。

何処の馬の骨とも知れない男に取られるより
まだ身近な人間に取られる方がマシだと
そう思う事にした・・・。

叶うか分からない戀になるかもだが。
そこはの強さを信じよう。

それだけ言った後、亮兄は自分の個室へ。
何だか急に元気が無くなったみたいに見えた兄から聞かれた問いをもう一度だけ懐古。

他の誰に言われてもショックは受ける筈・・・
でもいつまでも気にしたりしないと思う。
ただ1人、深澤を除いて。

何故なのかはまだ分からない。
でも亮兄は分かったんだと思う・・・。
だから元気じゃなくなったのかな?
て事は、理由が分かったら私も落ち込む?

🌕「取り敢えず今はいいや・・・早寝しよう」

急いても事を仕損じるから考えるのは放棄。
今は目の前の事に集中しよう。

そう決めて私は荷造りを終わらせ
目覚ましをセットしてから眠りについた。


そして翌朝。
妙に高揚してしまい目覚ましより先に目が覚め、はベッドから抜け出た。

今日は午前中に納涼祭の会場に向かう。
箏に触れるのは軽く9年ぶりになる。
幾ら記憶にはあるとて慣らす必要があるのだ

恐らく指は覚えてるだろうから
軽く慣らすだけで十分だろう。
後は『真秀』さん側と打ち合わせに充てる。

初めましての方々との演奏だ。
彼らの『音』や呼吸に触れる必要もある。
自前の箏は失われてしまったから
箏を借りた場合の調整もしなきゃならない。

やる事がいっぱいで嬉しかった。
ふっかさんの事を考えずに済むから。
そう思ったタイミングで個室のドアが鳴る。

💗「おはよ~!起きてる?」
🌕「はいっ!」
💗「お、ちゃんと起きてたな?偉い偉い」

ノックの後聞こえた元気な声。
声の主はすぐ佐久間だと分かり応えた

開けるでやんすよ?と断る声に是を返せば
ガチャっと開いたドアから小柄な兄が。

💗「朝メシ食ったら出発するからな!」
🌕「うん、ありがとうさっくん」
💗「俺はの兄ちゃんだし遠慮すんなよ」
🌕「はい(´∀`)」

それじゃ着替えたらすぐ行きます、と答え
意外にも支度の済んでる兄に会釈すると
ほい!と応えた兄の気配が遠のいて行った。

正直ふっかさんと顔を合わすのは気まずい。
本人に悪気が無い以上、向こうは何とも思っていないだろう。

私が受けたショックも悲しい気持ちも。
何一つ察さずリビングに現るはず。
やっぱり腹が立つなぁ・・・🤔
先月のふっかさんは頼もしかったけどね~・・・

しかし、もう朝食は出来てるっぽい。
涼太兄さんの作った朝ごはんは食べたいし
食材を無駄には出来ない。

🌕「仕方ない・・・行くか~・・・」

パジャマから私服に着替え荷物を手に
不承不承だが個室からリビングへ向かった。

数時間後、私は兄さっくんの車に乗車し
この日夕方まで仕事&1日仕事な兄達に見送られ、納涼祭が行われる会場へ向かった。

幸いふっかさんと気まずくなる事も無く
ひたすらさっくんと会話をしてやり過ごした
だってさ、私より(架空の)従妹に会いたい人と話したって仕方がないものね。

💗「到着でやんすよ~」

深澤の事でモヤモヤしてる間に会場に到着。
そのモヤモヤさせる深澤はまだ居ない。
出発する際此方を気にしていたが無視した。

多分納涼祭が始まる頃来るんだろう。
架空の従妹を探しに。
・・・やっぱ腹立つな~・・・何なんだろ😕
とか考えてたら真横から強く呼ばれた。

💗「お~い?会場着いたでやんすよ?」
🌕「わあぁ!はいっ!」
💗「にゃーっす!?びっくらしたぁ」

他が気にならないくらい集中していたのか
間近で呼ばれた声に吃驚し、声を張ったら
逆に驚いたらしく負けないくらいデカい声を佐久間も張り上げた。

イカンイカン、さっきからずっとふっかさんの事でモヤモヤしちゃってるなぁ。

今から真秀さんにも会うし、しっかりしよう
送ってくれたさっくんにも失礼だよね・・・
一緒に居るのにふっかさんの事で悩んでるとかさ。

吃驚顔だが此方を気にしてくれてる兄。
いい加減気持ちを切り替えようと向き直り

🌕「ごめんなさい」
💗「吃驚したけど大丈夫!もしかしたら緊張してるのかな?」
🌕「・・・かも?箏弾くのも久しぶりなので」
💗「あ~なるほどね、しかも助っ人だもんな🤔」
🌕「初めましての方々ですからね・・・」
💗「けど大丈夫、なら務まるよ!」

ぼーっとしてた事は緊張だと誤魔化した。
それはまあ半分本当で半分は嘘。
でも優しいさっくんは真剣に受け止め

私を励ます言葉をくれた。
夕方になったら来れる面子で観に行くよと。

🌕「うん、選んで貰ったからには頑張る!」
💗「おっし!悔いなく楽しんで来い!」
🌕「ありがとうさっくん、行ってきます」
💗「また夕方にな!」

太陽みたいにニカッと笑う笑顔に励まされ
気付けば笑顔で私も答えていた。
そんな私を満足そうに見遣り、髪をくしゃりと撫でてからさっくんは車へと戻って行った

兄の中で背は1番低いが、兎に角明るい佐久間
彼は常時エネルギッシュでニコニコしてて
知らず知らずに元気を貰える存在だ。

勇気や元気が欲しくなったら
自然と目で追いたくなる、そんな人。
僅かな時間にも関わらずも元気を貰えた

🌕「よし、頑張るぞ・・・!」

人知れず決意を口にし、歩き出した。
真秀の人達とは公会堂で顔合わせになる。

初めましての状態から何処まで音を寄せられるかは自身の力量も問われるだろう。
若干の緊張を胸には公会堂を目指した。