ドキドキして渡したチョコ。
ずっと心に溜めてた想いと一緒に渡した。
『サンキュ・・俺もおまえの事、好きだ。』
竜君にしては珍しく、照れた感じで答えてくれた。
そんな表情と、気持ちが届いた事の両方が嬉しくて
私にとって、忘れられない日になった。
強引な貴方
そんな思い出たっぷりの2月14日から、一ヶ月。
あっという間に今日は、ホワイトデー。
あれから私と竜君は、結構カップルらしくなったと思う。
デートも何度かしたし、それなりに互いの家にも行ったりした。
それに私は一応、この黒銀学園に通ってる。
女なんだけど、理由があって此処に通う事にした。
クラスメイト達は、私達が付き合ってるのを知らない。
別に言ってもいいんだろうけど、何か言えないでいる。
バレンタインデーでは、勿論モテモテだった竜君。
とは言っても、顔がいいのは竜君と隼人・つっちー・タケ・浩介
の5人くらいしかいない(さり気なく毒舌)。
浩介はカッコイイって程じゃないけど、隼人達といるせいか
結構人気があるみたいだ(すっげー失礼)。
隼人なんて、紙袋で30個は貰ってたと思う。
まあ・・確かにカッコイイもんなぁ
竜君だって負けてないぞ!紙袋に30個近く入ってたもん。
私なりに、かなり焦ったし妬いたりもした。
あのチョコをくれた子の中に、本命の子がいたらどうしようって。
生まれて初めて、私は本命チョコを作る気になった。
先を越されちゃうかもしれない、って焦ってたから。
隼人達には、あげたよ?何時も通りの義理。
それでも彼等は喜んでたけど。
餌に群がる動物・・って感じ?←すっげー失礼
どんな感じであげたらいいのか分からなくて
何でもない感じに渡したら、真剣な目で言われた。
『・・義理?それとも、本命?』
相手を射抜くような目に、私は囚われ迷った。
此処で言っていいのかどうか・・皆いるし。
けど、竜君から手を掴んで 私を教室の外に連れてった。
そこで色々突っ込まれて、逃げ場を失った私は
『本命・・です、隼人達のは義理。私が好きなのは、竜君だけだよ』
もう心臓が飛び出しそうだった。
真っ赤になって言った私を見て、目の前の竜君が少し笑った気がした。
『・・おまえさ、次からは俺以外の奴にあげんな』
『どうして?』
チョコを楽しみにしてる隼人達にあげないのは可哀想だと思う。
そう言ったら竜君が私から目を逸らして、言いずらそうに言った。
『例え義理って分かってても、俺はおまえのチョコを
他の奴に貰って欲しくねぇんだよ』
顔が赤くなってる竜君、もしかしなくても焼もち??
まさか竜君に妬いてもらえるなんて・・
嬉しくなった私は、竜君に抱きつくと囁くように言った。
『うん、これからは竜君だけにあげる。』
『ああ』
抱きついた私を、竜君はしっかり抱きしめてくれた。
それで冒頭の言葉に繋がるって訳。
竜君はどんなお返しをくれるんだろう。
一般的には、飴とかキャンディーだけど・・・
隼人達はお返しにと、やはり飴とかキャンディーをくれた。
今、口の中には隼人に貰ったチュッパチャップスが入ってる。
コロコロと甘い飴を舌で転がし、口の中を移動させ
放課後 公園で待ってろって言った竜君を待ってる。
ちなみに跨ってるのは、隼人がお気に入りの遊具。
いないのをいい事に乗ってみた。
空には赤みが差し、日が暮れ始める。
誰もいない公園で一人でいるのは、結構心細い。
「早く来ないかなぁ・・・」
呟いた声は、一人の空間に消えていく。
私が何度目かの溜息と、呟きを口にした時・・
「わりぃ・・待たせた」
「竜君!」
ベストタイミングで現れた竜君を見て、足が動く。
早く会いたくて、触れたくてやっと触れられた。
その温もりを逃がしたくなくて、竜君の上着を掴む。
「ごめん、ちょっとヤボ用があってさ・・遅れちまった。」
「もういいよ、来てくれただけでいい。」
「おまえ・・そうゆう恥ずかしい台詞、サラッと言うなよ」
「えぇっ!恥ずかしくないよ、思った事言っただけだし。」
安心出来る腕に抱きしめられて、すっかり身を任せてたら
上から低くて心地いい声が そう言う。
もう〜いい雰囲気だったのに〜・・まあいいけど。
私が言った言葉に、おまえらしいや・と竜君が笑う。
このふとした時に見せる笑顔が、私は大好き。
もっと見せて欲しいんだけど、本人がそれを嫌がる。
私の前だけで見せてくれるから、それも嬉しい。
「竜君は何をくれるのかな〜楽しみ!」
渡すそぶりを見せたから、私は竜君から離れて待つ。
口の中の飴は、まだ大きい。
チュッパチャップス独特の棒が、私の舌の動きで揺れる。
「おまえ・・何舐めてんの?」
「チュッパチャップス♪隼人にお返しで貰ったの。」
何気なく言ったこの言葉で、私は知らないうちに竜君を
刺激してしまったらしい。
「ふーん・・隼人に、ねぇ・・・」
そう言って私を見る目が、とっても色っぽくて頬が熱くなった。
硬直して立ってる私の前で、竜君がポケットから何か出す。
見る感じ紙袋で、食べ物ではないものだと分かる。
「それ・・ホワイトデーのお返し?」
上目遣いで見上げるように聞く。
うわ・・その目、すげーヤバイ・・・
分かってやってないって所がは厄介だ。
こんな顔されたら、俺でなくても誘惑される。
「ああ、でも気が変わった。」
「え?くれないの?」
折角俺が理性を抑えてんのに、そんな顔すんな。
「が『竜』って呼んだら、ご褒美にやるよ。」
「ご・・っご褒美〜??」
他の奴から、しかも隼人に貰った飴なんて舐めやがって。
困ったと顔を真っ赤にするを、竜は盗み見る。
隼人から貰ったという飴は、のほっぺたを膨らませてた。
自分でも欲望が抑えられない。
どんな風に飴を舐めてるのか、飴を転がすの舌。
そんな事ばかり考えちまって・・どうにかなりそうだ。
うーん・・竜君からのお返しは、絶対欲しい。
だけど条件が呼び捨てだとは・・!!
私 ずっと君付けでしか呼んでなかったからなぁ〜
「隼人達の事は呼べてるだろ」
ずっと黙りこくってると、鋭い突っ込みを先に言われる。
見透かされてる!?
そう思うと、今見られてる事すら恥ずかしい。
私の答えを待って、竜君は紙袋を放ったりしてキャッチ。
それを繰り返して待ってる。
早く言わなくちゃ、それに付き合ってるんだし当然よね?
「・・竜」
頬を赤らめ、緊張で潤んだ目で言われた途端。
勝手に俺の心臓が強く跳ねた。
マズイ・・本気で可愛い、コイツ。
もう我慢の限界かも・・・
竜は よく出来ました、と笑うと紙袋を手渡した。
「はぁ〜緊張した!でもお返しが貰えるなら苦じゃないよね♪」
やっと手に出来た袋を、ワクワクしながら私は開けた。
中から出てきた物・・それは。
「わー!キレイ!!竜・・有り難う!」
まだ言う事に慣れないけど、それも次期に気にならなくなる。
竜君がくれたのは、シルバーチェーンのネックレス。
飾りにはクロスの十字架と指輪で、飾りの石は青。
私の喜ぶ姿を見て、竜君は優しく微笑んでくれた。
「別に・・俺も買ったから。」
「・・もしかして、ペア?」
自分も買ったと言って、竜君はシャツを捲る。
きゃーvv鎖骨がっ!ってそっちじゃない!
竜君の胸元にも、私と同じアクセサリー。
私は青い石だけど、竜君のは赤。
「ああ、それと これからはソレ付けてけよ?」
「うん!」
「これは男除けだから」
「へぇ〜・・・って!男除け!?」
思いも寄らない言葉に、目を丸くして驚く私。
驚き過ぎて、飴が落ちそうになった。
それに気づいた竜君が、私に近づいて来て・・
「それと、他の男から物貰うな。」
「どして?」
「どうしても、俺がソイツに何かしそうだから。」
りゅ・・竜君って、こんなに嫉妬深かったっけ?
何にしても強引だなぁ〜まあ、何か嬉しいけど。
好きな人に妬いてもらえて、私は顔の筋肉が緩む。
ふと 竜君の手が、私の頬に触れて
顔を上げたら 舐めかけの飴を抜かれた。
どうするのかと見てたら、飴の味すら忘れそうな事をされた。
「飴なんかより、もっと甘いもんやるよ。」
「え?」
低くなった甘い声、ジンと心に響くように言われ
もう一度竜君を見たら、もう凄く近くに竜君のキレイな顔があり
有無を言わさず 唇を塞がれた。
「んんっ・・」
飴なんかより もっと甘いもん・・とは、キス。
さっきまで含まれてた飴の味と、別の感触。
息苦しさに口を開けたその隙を突いて、素早く竜君の舌が侵入。
歯列をなぞり、舌を絡ませ甘く吸われれば
それだけで体が熱くなり、足の力が抜ける。
キスは、それだけでは終わらず 互いの吐息が絡む如く続き
私の頭の中も、かなりパニックになった。
「どう?・・飴なんかよりも甘かっただろ?」
「も・・もう〜!!竜!」
サラッとそんな事を言う竜君。
私は吃驚し過ぎて、彼の名を口にする事しか出来なかった。
「俺は甘かったけど?の唇。」
この言葉で、死ぬんじゃないかってくらい照れた。
これは殺し文句だ!そんな色っぽい目で言わないでよ!
私の理性がどうにかしそう・・・
「ねぇ竜・・これからも、甘いキス・・・してくれる?」
そう言われるまで、勝った!と思ってた俺は甘かった。
好きな奴に、そんな顔でそんな事言われたら・・・
「そんな顔して言われると、自信なくなる・・・」
「自信?」
「理性を抑えられるかって自信。」
おまえが好きで好きで、どんどん溺れてく。
そのうち俺の欲望で を傷つけたりしないかが心配だ。
大事だからこそ、傷つけるような真似はしたくねぇ。
けど・・あんまり無防備だと、自制出来なくなるかもな。
覚悟しとけよ?