ずっと光のない闇の中にいた。
ああ、私はまだあの人を想っているんだなあーって
他の皆さんに迷惑掛けてるのはおぼろげに感じていながら

現に帰るのを心が拒んでいた。
ずっと目を背けて、思い出の中にいたかった。



虹色の旋律 二十四章



ふわふわの意識のまま歩くをしっかり支えて歩く上田。
赤西達の言ってた写真、それはの探してる物で
こんな風になっちゃうくらい大事な写真。

親とか兄弟?
それか・・・・恋人?
でもって何歳だっけ、カメより若そうな気もするけど・・

いやいや、恋愛に歳は関係ないよね。
恋人がいたって別に・・・うん。

悟さん(マネージャー)の回した車に乗り
シェアハウスへ帰る車中でも、ずっとは黙り込んでいた。
視線は宙を彷徨っていて頼りない物だ。

一人で残して戻るのも何か心配だなあ・・・・・
理由分かんないけど俺の声には反応してくれるから戸締りはしっかりしてねって言わないと。

、家に着いたら自分の部屋で留守番しててね?戸締りもしとくんだよ?」
「・・・・・・・・・はい・・」
「ねえ、ちゃんと聞いて。失くした写真がにとってすっごく大事な物なのは分かった、でもさ・・はこの世界に目的を持って飛び込んで来たんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「大事にしてた物を失くして、心が欠落しちゃうくらいに大事な物なんだろうけど・・・今の、見てて俺ら辛いから・・・克服して来いよ?赤西見返すんだろ?」
「・・・あか・・にし・・・さん・・・・・・っ」
「アイツもさ、不器用と言うか天邪鬼だから素直に認められないだけなんだよ。誰よりもの実力認めてるのは実際の所、赤西だから。」
「・・・・本当・・ですか?」

「俺嘘とか嫌い。認めてるからこそきつく接してる、に追いついて欲しいから。
実力でスカウトされた子ってさ、周りが敬遠しちゃったり遠慮しちゃったりで中々叱ってもらえないんだよね。
赤西はさ、のやる気とか心意気とかを短い時間だけど受け止めたんだと思う・・・だから敢えて厳しく接してるんじゃないかな。
それに・・は周りを動かす力って言うか、引っ張る力があると思うよ?後何かほっとけないし。」

ぼんやりした意識に届く継信さんと似た声。
一つ一つの言葉が自然と心の中に浸透して行くのを感じた。

赤西を見返す、・・・確か数日前の私が決意して心に決めた目標。
何故かポタリと涙が落ちた。

名前を口にするだけで嗚咽が漏れそうになる。
そんな私を見て継信さんに似た面差しの殿方が苦笑を浮かべた。
自然な動きで大きな手が動き、私の頭をヨシヨシと撫でる。

同じ声でその方は私の名を口にして、赤西さんは実の所、本当はもう認めて下さっているのだと教えてくれた。
少しだけ目に光が戻り始める。
そうだ・・私はどうしてもあの方の笑顔が見たくて・・・認めて下さったら笑顔を見せて下さるのではと考えていた。

そして他の殿方も私を認めて下さって・・・・
私は・・・あの時代に戻る為に、この時代できちんと生きて行くのだと決めた・・・・

「此処に・・・・いても・・いいですか?」
「・・うん?」
「赤西さんは、私を認めて下さるでしょうか・・」
「そうだなあ・・・少しずつでいいから、が自分の事を俺達に話してくれたら・・かな」
「少しずつ・・・・・」
「うん。無理して話さなくてもいいけど・・・何処出身?とかくらいからでいいんだよ」
「・・・はい、私話してみます・・上田さん・・・有り難うございま―――」
「おおおっ」

―――・・・・寝た←

安心したのかな?大分無理してたのかもしれないねぇー・・・・・
いきなりスカウトでジャニーズ入りしただけでなく
結成されて3年経ってるグループへの参加、しかも大舞台も迫ってるこの時期に。

それに、認めてたとは言ってもかなりキツイ言葉も赤西から言われまくってたし
ダンスレッスンでは一回ぶっ倒れてたもんなー。

けどまあ、ちょっとは落ち着いてくれたみたい。
ちゃんと俺の顔も見てたし、表情と目に意思が戻った感じにも見えた。
俺の名前も呼んでくれたしね。

このまま1日寝るだけでも良くなると思う。
ずり落ちたを支えてシートに凭れさせ、一安心しながら上田はを眺めた。


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正午

別行動になった亀梨達は食事を済ませている所だった。
送ってった上田とマネも、送るだけなら後30分くらいで戻るだろう。

「おー亀梨達じゃん、昼飯?」(慶
「ああ、小山っちか。まあね。そっちは?」(和
「俺らはもう済ませたよ、あれ、上田とちっこいのは?」(慶
がダウンしたから送らせたんだよ」(赤
「へーー・・やっぱまだ体が慣れないんだろうね」(慶
「はん、甘えてるだけだろ。体力なさすぎなんだよ」(赤
「仁は厳しいからな〜あの子結構無理して追いつこうとするだろうから気をつけてやれよ?グループなんだし」(慶
「ハイハイ」(赤

粗方食べ終えていた面々の所に、SUMMARY中の小山が姿を現した。
亀梨達はまだそっちはメインではないので顔を出してはいない。
目ざとく二人の不在を悟った小山はさり気なく亀梨に質問。

だが答えたのは亀梨の相向かいにいた赤西。
あくまでも厳しい態度を崩さない赤西に小山も苦笑した。

小山もグループを組んでいる故、統一やらまとまりやらを意識してるのだろう。
去り際に言い残して軽やかに去って行った。

却って気まずくして行きやがりましたね小山サン(

何て思いながら赤西は他の面々をチラ見した。
皆図星なのか、ノーコメントを貫いている。
もう少し休んだら稽古が開始されるだろう舞台に戻らねばならない。

赤西の脳裏には、抜け殻みたいになったの姿が思い起こされた。
写真を返してやれば恐らく元には戻る。
あの様子からして・・・・・じいちゃんの若い頃の写真か?

兄貴にしては写真が古すぎるし・・・
わざとセピアとかで撮る奴もいるだろうけど、軍服だぞ?それはない。

顔立ちも年代を感じるっつーか、兎に角平成生まれには見えなかった。
だとすると明治か大正になるじゃん?
のじいちゃんが何年生まれか知んないけど、大体は大正生まれくらいだよな?

アイツ・・・・じいちゃんっ子だったとか?
じゃなきゃなくなっただけでああはならんだろ。
・・・・・・・・・じいちゃんっ子だったとしても・・

稀だな、稀過ぎる。
つーか持ち歩くなら若い頃じゃなくて、一緒に撮った奴とかだろ。

『あれは、大事な物なんです・・・』

じいちゃんの写真なら、ああは表現しないな。
大事な祖父の写真なんですー・・とかなら分かる。

じゃああの写真の奴は誰なんだ?
何で上田にクリソツなんだよ。
・・聞いても返って来ねぇだろうけどさ(そもそも誰に聞いてたんだ)

あ゛ーーくそ、何か苛々するぞ。
最初の時の部類じゃなくて、別の部類の苛立ち。
仲間って認めた奴の抱えてる物、理解して力になりてぇのに糸口すら掴めなくて苛々?

・・・・・てか、てめぇの事何一つ話さねぇ奴の事心配するのも無駄か。
半ば開き直った赤西、組み始めてた疑問のピースを再び脳内で散らした。