行く時会わなかった文木霊
最後の一人は、かなり異質だと感じた。

その身に纏うはぬばたまの衣


§文木霊§


何かもう感覚が麻痺しそうだわ
喪月といい、文司といい・・

美 形 ば か り

美的感覚を麻痺させたいのか
と問いたい(誰に

前を歩く獣人さんも、瞳は人間とは違う
でも造りは整ってる。
文木霊はチョー可愛いし←

自分・・浮いてないか?

歩きながらふと思うだが
百合枝も言っていたように
彼女は己の容姿に拘っていない

故に己の容姿が、どれ程異性を惹き付けていたか知らない。
此処に百合枝がいれば真っ先に指摘していただろう。

様、あそこをご覧下さい」
「え?」

難しい顔をして考え込む
先を歩いていた獣人が注意を促す。
その細長い指につられるまま視線を向ける。

と、其処には来る時通って来た扉。
それだけではない影が三つ。
を待っていた。

待つ影、二つは小人サイズ。
そして残り一つが、人間の大人くらい・・・

『ええ、残り一人は私達サイズですけどね』

つまりは獣人が言っていた残り一人の文木霊と言う事になる。
どんな姿をしているんだろう

とっても気になりつつ
やがて距離は近づき、その人間サイズの文木霊の顔もハッキリ・・・・

あれ

近寄ってみて顔が見れると思っていた
しかし、顔の造りは
それを封印するかの如く垂れ下がる布に隠されていた。

その布には、仮の目とでも言いたいのか
目の絵が描かれている。
頭全体を覆うような布・・

はある事に気付いた。
彼には、他の文木霊にある

可愛らしさが全くない
それこそ『異質』だった。

異質な黒ずくめの井出達・・
そう感じたのはのみらしく
またしても獣人は、普通に彼等に声をかけた。

「お待たせしました」
「文司様から聞きましたっ」
「その方が『御言葉使い』様ですね?」
「・・・・・・」

書生さん風の子と金髪の子が交互に喋る。
質問攻めに合うを背景に
ただ静かに、黒い着物の文木霊はそれを眺めていた。

心此処にあらず
そんな表情で。

 よ、名前でいいわ」
「けど・・」
「仰々しく呼ばれる事に慣れてないだけよ」
「くす、安心なさい。様は心の広いお方ですから」
「獣人様がそう仰られるなら」

無邪気にへ質問していた文木霊達。
彼らにも名前で呼ぶよう頼んでおいた。

さてさて、行きましょうか。
と獣人は微笑み、外への扉に導く。

が、その前に獣人は足を止め
を振り向くと言葉を紡いだ。

「先に説明しておきますね」
「あ、はい」
「その書生さん風の子が『紡ぎ手』で文字を担当してます」
「尊様宜しくっ」
「それから金糸の子が『織部』文字の変換ですね」

足を止めた獣人は、彼らの名をに説明。
文木霊と言う名ではないらしい

「最後にこの者は『創滅天』唯一神であるんですよ」
「唯一神?」
様も唯一神みたいな物ですがこの狭間で、
文字や創られた記述を消して新しい字に変えられるのはこの創滅天だけなんです」

その説明に思わずその本人を擬視。
彼から異質な物を感じたのはそのせいだったんだろうか?

御言葉使いと同じくして
唯一神である創滅天・・・・

けどその力は、御言葉使いや文司に使役されないと発揮されない・・
ある物がない限り
この狭間の者に、既定伝承を書き換える事は叶わない。

それが出来る御言葉使い
使役されれば、既定伝承を消す事が出来る創滅天。

文字の生と死を管理する存在。
だからなのか分からないが
創滅天は素顔を隠しているんだとか?

「この3人の総称が『文木霊』なんですよ」

扉を開けて獣人は説明をそうまとめる。
そんでその上にいるのが文司・・・

上下関係は存在してるらしい。
にしても、私が近づくまで死んだように
無表情なのは何でなんだろう?

創滅天の顔隠しにしても今は
表情の事だけが気になっていた。

喪月も表情の色が薄い・・
その違和感は、此処に来て
色々な生き物?に会ってからも変わっていない。

温和そうなこの獣人もそうだ。
私と話す時以外、表情に変化は生まれていない。

私が『御言葉使い』だから?
特別で異質だから、ご機嫌でも伺ってるとか?

少し芽生えた疑心暗鬼。
聞いてみれば分かるだろうけど
すぐに考えてる場合ではなくなった。

「ちょ、っと待った。」
「何ですか?」
「この輪に全員は乗れないでしょ」
「ああ〜そうでしたね」

そうでしたね、じゃないしぃい
心の中でおもいっきし突っ込みを入れつつ

のんびりした反応をした獣人を見やる。
この輪っか、どう見ても一人か二人しか乗れない。
今の人数は五人だ、二人ずつにしても時間が掛かる。

待たせてる喪月が苛々して待ってそうな様が目に浮かぶ。
そんな時、暫し考えていた獣人が

様、ちょっと失礼しますね」
「―――え!!!」

徐にそう断る声の後、フワリと体が浮かんだ。