文月の物語 4
🌕「ごめんなさい、ありがとう・・・」
泣かないようにお礼を言ったから
胸が詰まるみたいに声も詰まった。
💜「そういや足捻ってたんなあ」
🌕「私も忘れてました😅」
💜「君っておっちょこちょい?」
🌕「?」
💜「ドジって意味よ、分からない辺り歳の差感じるわ~」
私の感じてる気持ちなど知らないふっかさん
柔らかく笑って、年齢差に打撃を受けてる。
今、ふっかさんとは一回り年齢差がある私。
今後も変わる事の無ければ埋まる事も無い。
不意にふっかさんは呟いた。
💜「照遅いな、見つからないんかな」
🌕「私からも従兄に連絡してみますね」
💜「そうだ君からしたらは従兄だもんな、助かるわ」
とまあ、LINEを確認する口実を得た。
見てみると友人から返事が来ていた。
どうやら無事帰れたらしく、届けに行くと
そう来てたのは10分前。
つまりは今、もう会場に来てるかも・・・
私の記憶では入口近くに公衆トイレがあった
そこまで何とか行って、男に戻ろう。
夢の時間は終わりにしなきゃ。
🌕「あの、従兄近くまで来てるみたいで」
💜「マジ?なら照にも伝えとくわ」
🌕「それであの、私は従兄と合流して帰ります・・・」
💜「あ~・・・そっか、そうだよね」
🌕「従兄から預かってるもの返すので」
💜「おk、俺がおんぶしてくよ」
🌕「入口近く迄で大丈夫ですから・・・」
💜「・・・分かった、乗って」
なんとか自然になるよう流れを作り
近く迄送って貰う事にした。
友人はトイレの中で待っててくれるだろう。
私に向け、背中を見せたふっかさん。
細身だけど広い背中は、男性さを感じる。
何度かおんぶされたりしてるのに
女の子としてされるのはやっぱり照れた。
私がふっかさんの肩に手を回そうとしたら
急にふっかさんが立ち上がりながら振り向き
💜「浴衣でおんぶはダメだわ、ごめんね」
🌕「へ・・・?」
💜「恥ずかしかったらしがみついて良いよ」
そう真面目な顔で囁くと、見えてた顔が下がり
私の目線が一気に高くなった。
えっ、えっ!?
目と鼻の先にあるふっかさんの顎のライン
2つの温もりが私の背中と膝裏に。
要は、2度目のお姫様抱っこをされていた。
いや恥ずかしいなんてもんじゃない。
心臓がバクバクし過ぎて口から飛び出しそう
🌕「あの、えっとふ、深澤さん・・・っ」
💜「ヤバ・・・名前呼ばないで力抜ける(笑)」
🌕「それはヤバいですね?じゃなくて恥ずかしいですコレは!」
💜「大丈夫俺もだから」
なんて意外な言葉を深澤が口にする。
思わず見たら確かに照れていた。
耳まで赤くしてる・・・なんか意外だ
そのまま深澤は境内を下り
なるべく人混みを避け入口近くの柵の上にを座らせた。
私から離れる温もりを寂しいと感じてしまう
離れる手を追うように見上げれば
眉尻を下げた何とも言えない顔のふっかさん
💜「ここで大丈夫?」
🌕「はい、従兄も来てるので」
💜「来るまで居てもいい?」
🌕「あ・・・えと、先に返す物渡して来ます」
💜「捻挫してるんだから待ってよう?」
🌕「すぐそこだから・・・」
そっか、と呟く声と表情はよく見れなかった
見てしまったら間違いなく泣く。
💜「また、逢える?」
🌕「・・・・・・縁が、あれば・・・多分」
💜「楽しみにしてる、帰り気を付けてな」
🌕「――はい」
ふっかさんが逢いたいのは私じゃない
今向けられてる笑顔も、私にじゃない
自分で従妹だと偽ったのに、何泣いてるの?
会釈して歩き出した私の頬は濡れていた。
そのまま公衆トイレに飛び込み
待っていた友人に驚いた顔をされる。
👩「どした?怖い目に遭わされた?!」
🌕「ううん、違う・・・ちょっとバカだなあって感じただけ・・・」
👩「・・・アンタはバカじゃないよ、優しすぎるだけ」
🌕「そんな事ない・・・贅沢者なだけ」
あんなに優しい兄達に囲まれ、大事にされてるのに
従妹と偽ったこの姿の自分を可愛いと言われ
複雑な気持ちになるなんて贅沢者だ
👩「・・・ははーん、アンタも中々に辛い戀 選んじゃったんだね」
友人は聞き終えた瞬間、目を細め
しみじみ私にそう呟いた。
辛い戀・・・コイ?
私が、誰に?
どういうのが?と眉宇を潜めたのを見た友人
私の着替えを持たしてくれながら言った。
👩「抱えきれなくなったらいつでも言いな」
そう淡く笑み、私の肩を叩いてから
先に公衆トイレを出て行った。
1人残された取り敢えず急いで浴衣を脱ぎ、元々着てきたラフな私服に着替え
捻挫の痛みを我慢しつつ、バッグに偶々入ってた絆創膏を
鼻緒で傷めた足の親指の間に貼る。
その視界に透明な雫がポタポタ落ちた。
🌕「あれ・・・」
何だろうと思うより先に、自分が泣いている事を思い出した。
早く泣き止んでふっかさんと合流しよう。
だから早く涙、止まれ――
10分後、やっとはトイレを出た。
歩き出す前に素早くLINEを送る。
🌕"ふっかさん、ありがとう従妹と合流しました。
預かったものも受け取ったので戻ります"
と。
💜「だとさ、照マジ悪かった」
💛「まあ良いよ、無事で良かったわ」
💜「うん・・・だなぁ」
💛「・・・なんかあった?」
💜「いんや、いい子だったなぁって」
💛「ふーん?ま、頑張ってみたら?」
なんて照は笑った。
ホント優しいヤツだなコイツ・・・
あと、意外にも鋭いヤツだった。
詳しく聞かない代わりに背中だけ押す。
シンメからの遠回しな励ましを受け
さっきまで感じていたあの子の温もりを思い出すように、軽く目を閉じた。
その後漸く現れたと合流し
妙に目を腫らしたを気にしながらも
照の車に乗り込み、祭り会場を後にした。
文月の物語.Fin