文月の物語 2



が危機に瀕してる頃、深澤も帰宅。

❤「お帰りふっか」
💜「お~ただいま」
❤「迎えはこれから?」
💜「おん、照ももう着くって言ってたから」

玄関を開け、帰宅するなり掛けられた声。
顔を向ければ宮舘が立っていた。

免許の無い深澤が迎えに行くには
運転手をメンバーに頼まなくてはならない
何となく選んだのは頼み易い照。

他のメンバーでも良かったんだが
もしもの事を考えて照を選んでいた。
これが幸をそうするとは思わずに。

ピロン

ふと会話中に聞こえた通知音。
かな?と思いつつ画面を見れば的中。

💜「だ、迎えかな」
🌕"今、□市の夏祭りに居て、早く来てほ"
💜「ん???」
❤「どうかした?」

しかし開いた文面はおかしい。
文脈が変だし、途切れている・・・嫌な感じだな

ゆっくり文字が打てない状況って事だよね?
ケータイ画面を見たまま静止した深澤に
不思議に思った宮舘も窺うように問う。

🌕"、怖い"

考えてる間にも届いたメッセージに
着の身着のまま深澤は動いていた。

❤「――ふっか?」
💜「照待ってられんねぇわヤバい」
❤「え?でも足はどうするの」
💜「タクシー拾う!」

突然踵を返し、玄関のノブを回す深澤に
驚きを見せた宮舘が慌てた声音で呼び止める
しかしこの問答すら深澤にはもどかしく

玄関の扉を開けながら返事だけ返し
外へ駆け出して行った。

その視界にフッと影が差し
ぼふっと突っ込んだ深澤。

💛「うわっ・・・て、ふっか?!なに?」

声で照だと察し、すぐ顔を上げ
叫びに近い声で照へ訴えた。

💜「ちょっと今すぐ車出して」
💛「は?今帰ったばかりなんだけど」
💜「いいから!」

そして有無を言わさず腕を掴み歩き出す。
帰宅するなり突進され、訳も分からず連れ出された照は終始首を傾げながら歩き
言われるまま降りたばかりの車に乗り込む。

💛「ああもう😑で?行先はどこ!」
💜「□市の夏祭りやってるとこ」

半ばヤケクソなテンションで
自分を連れ出した深澤に訊ねる。

訊ねて返ってきた深澤からの返答には
思い切り訝しんで聞き返した。

💛「はあ!?この時期幾つ夏祭りあると思ってんだよ!」
💜「仕方ねぇだろからそれしか聞いてねぇんだから!」
💛「何でが出て来んの?」

問答が始まりそうになったが
気になるワードすぎて苛立ちが殺がれる。
思わず深澤を凝視した照。

その照に、少し冷静さを取り戻した深澤が
今に至る経緯を説明し始めた。

帰りが遅くなる場所に出掛けた
22時になる前に帰るよう伝え
付近になったら連絡しろと約束させた。
そのやり取りは照もLINEで確認している。

💜「そしたらからLINE来てさ」

続きは説明より見せた方が早いと感じ
LINEを開いて画面を照へ見せる。

文面を読む照の表情が急に鋭くなった。
"怖い"を読んだんだろうってのが分かる。
これ見たらじっとしてらんなくてさ、と

確かにこれを見たらじっとしてらんないな・・・
照は深澤の状況を自分に置き換えて納得。

💛「しっかし場所がなぁ・・・」
💜「だよなー・・・」
💛「けどその□市には向かうわ」
💜「うん、照ごめんな・・・さんきゅ」
💛「は俺らの大事な末っ子だしな」
💜「おう」

取り敢えず項垂れてるより動くべきだと感じ
照はエンジンをかけ、車を発進させた。
頼れるリーダー岩本に深く感謝した深澤。

また連絡が来る事を信じ
強くケータイを握り締めた。


少し時間は遡り・・・
深澤が照と出発するより10分前。
必死に歩きながら深澤へLINEした

二手に分かれ友人の無事を祈りながら歩き
慌てながらも何とかLINEは送った。
震える手で入力した為文面がマチマチに💧 でも伝われば良い・・・かなと。

それより友人は大丈夫だろうか・・・心配だ。
私は今会場の中を夢中で歩き続けている。
止まったら最後、捕まってしまうだろう・・・

時間を確認すれば夜の20時は過ぎていた。
因みにもう少しで21時になる。

こんな事になるなら、行き先を伝えるべきだった・・・😢
でも伝えたら今の状態を見られ、バレてしまうから言うに言えなかった。

🌕「・・・・・・お兄ちゃん・・・」

しかし歩みを止める事も出来ず
下駄で歩き回るには限界が近かった。

時折物陰に隠れてやり過ごし
僅かな隙間にLINEを確認する。
既読は付いてるから読んでるはずだ・・・

だがまだ分かりやすいアクションは無い。
向かってくれてるのかすら分からない。
が、読み返して私は気付けた。
□市とは打ったが、地名を書いてない事に!

詳細を伝え忘れてた!
気付いた瞬間、LINEに詳しい詳細を打ち込む
会場前に張られた幕に書かれた祭り名等を。

🌕"□市△町、星屑祭に来てます"

こういう時、瞬間記憶能力を持ってて良かったと強く感じた。
それからこうも深澤へ伝えておいた。

🌕"俺と従妹を、助けて下さい"

これは保険として伝えた。
万が一顔が似てるねと言われた時用に。

従妹と祭り中、しつこくナンパされ
断ったが追いかけて来る。
何とか連れて歩いたが自分1人では従妹を守りきれないかもしれないと。

ふっかさんは呆れるかな・・・
でも来て欲しい気持ちは本当だ。
今は下手に動かず、来てくれるのを信じ
境内の裏手に隠れていようと決めた。

そのLINEを□市内に入った辺りで受けた深澤
思わず画面を2度見する。

💛「から?」
💜「△町の星屑祭、照行ける?」
💛「ナビで探すわ」

取り敢えず行き先を照に伝え
再度文面を読み返した深澤。
SOSはだが、従妹も一緒だと🤔

先ず素直に従妹と連絡を取り合ってた事に対し、深澤は驚いた。
記憶が合ってれば、従妹はの伯父の娘。
らを助けようと動いた子だ。

ナビに町名を入力し終えた照が道路脇の駐車スペースから車を走らせる横で
静かに深澤は考えを巡らせていた。

兎に角、ら姉弟を救った従妹の危機。
これに至った理由はに聞けばいい。

車は祭り会場に近い駐車スペースに停車。
2人で探すのも考えたが効率を重視し
照とは手分けして探す事にした。
探す為の特徴はからLINEで届いている。

紫檀色の浴衣に、睡蓮の花柄。
髪色は明るい茶色で薄紫色の牡丹の髪飾り。
これを読み、若干の既視感を覚えた深澤。

💛「特徴はメモった、俺は入口から見るわ」
💜「俺は上の境内から見てく!」

互いに見付けたら電話するよう決め
左右に分かれて捜索を開始した。
走り出す前に一応LINEを送る。

💜"会場着いた、じっとしてろ"

私はそのメッセージを境内が後ろに見える燈籠を背に受け取った。

ふっかさんが来てくれた!
それだけで体中に勇気が漲る気がする。
動くなと言われたが、少しだけ移動していた

ふっかさんは私が従妹と居ると思ってる筈
だが実際は私1人だ、嘘をつくのは辛い。
が、バレたらそれ以上に辛くなる。

内心で深澤に平謝りしながら息を潜めた。
それっぽい若者が見える度、俯いて歩く・・・
念の為カラコン入れといて良かった😌
アースアイは特徴ありすぎるもんね。

何回目になるか分からないナンパ青年と似た人らを避ける事数十回。
私の目は一瞬だけで見付けられる人を捉えた

🌕「――ふっかさん!」

呼んだらバレてしまうなんて事が吹き飛ぶ。
だが幸い気付く人は居なかった。

それは深澤にも言える、は気付いたが
視力の低い深澤からはまだ目視出来てない。

だから私は駆け出し、ふっかさんに近付こうと燈籠の影から飛び出した時だ。
身の毛がよだつのを感じたのは・・・。

👥「やっと見つけた!」
🌕「――!?」

深澤より先に私を見付けた青年らが
振り向いた私を指さしていた。
ってかいい加減しつこ過ぎやしないか?

彼此20分近く経過してるよ?
思考は冷静だが、心臓はバクバクしていた。
まだ数十歩の距離はある、逃げねば。

なのに足がすぐ動かない。
疲れ果てた足は重く、漸く動いた瞬間。
何かが切れる鈍い音がして
私の体もつんのめるように下に傾いた。

🌕「――った・・・!」
👥「あーあ、大丈夫?彼女~」

見事に転んだ私を心配はしているが
口許には卑しい笑みが浮かんでいる。

何とか立とうと抗う視界に映る足元。
見れば履いていた下駄の鼻緒が千切れていた
やはり歩き過ぎたせいで切れたらしい。

その間にも2人の青年が卑しい笑みで近付く
優しく助けるふりをして近付く2人。
おぞましさで体は恐怖に震えた。

🌕「いやだ、ふっかさん――・・・!」
👥「ふっかって誰よ、友達の名前?」

転んだ際、足を捻ったらしく
痛みで立ち上がれない私に近付いた青年。
私へ向かって伸びてくる手から必死に身を逸らした。