文月の物語
季節は7月に突入した。
10人なってから初の滝沢歌舞伎も終わり
照にぃ、ラウ、翔兄、蓮くんはドラマの撮影
残る兄達もそれぞれ仕事に取り組んでいた。
そんな中はというと、オフでした😶
窓からは快晴の空が見える。
6人の兄達は皆出払っていて
シェアハウス内はとても静かだ。
一応家事みたいな事は済ましてしまったし
学生の本分の課題も終わらせている。
・・・暇だ( ˙꒳˙ )実に暇。
そんな中、不意にケータイが鳴る。
音からしてLINEの着信音だ。
兄達かな?と予想しながら画面を見ると
そこには兄達ではない名前が表示されていた
👩『ちゃん久しぶり!今日暇?』
っていう文面が確認出来た。
一応思い当たるのは1人いる。
ソファーに寝転びながら私は返信した。
暇だよ、と。
そう打ち終わり、既読が付いた瞬間着信が携帯電話
🌕「もしもし?」
👩『出るの早いね(笑)』
🌕「丁度暇してたからね」
👩『それなら良かった』
通話をタップして出れば聞こえる懐かしい声
彼女は去年のドラマ撮影の際
共演して親しくなった友人である。
俳優事務所に所属する女優の卵だ。
(設定は2019年となっております)
まだ無名に近い為、外出時も変装はしない。
その彼女が通話して来た理由を明かした。
🌕「今日はどうしたの?」
と普通に普段の口調で話している。
実は阿部の他にが女の子だと知る人物で
そういう悩みを相談する友人だったりする。
👩『今日夏祭りがある日だから行かない?』
🌕「夏祭りかぁ~・・・いや難しいよね🤔」
👩『やっぱバレちゃうか~』
🌕「うん~多分?」
👩『・・・ならさ、男装やめて行こ?』
🌕「え( ˙꒳˙ )」
👩『要はバレなきゃ良い訳だしさ』
🌕「いやでも浴衣みたいなの持ってない」
通話の理由は祭りへの誘いだった。
この際それは気にならない。
バレるのを恐れたから断ろうとしたのに
閃いてしまった友人はテンションが爆上がり
しかも断り方を私は失敗したわ~・・・
浴衣が無いから行けない、だと弱い。
案の定友人はノリノリで提案して来た。
👩『浴衣なら私の予備貸すし着付けるよ!』
あ~・・・ですよねぇ・・・・・・
こうなると断り難くなる訳でして😅
暇してる事も言ってしまったし頷くしかなく
結果私は16時迄に友人宅へ行く事となった。
私のアホ~🤣🤣
だが後の祭りである。
腹を括るしかなくなり、私は再びLINEを起動
今度は兄達とのグループLINEを開いた。
これには加入組を除いた7人のみが参加している、つまりシェアハウス組だ。
兄達だけが見れる場に、書き込みを投下。
今から出掛けます、今夜帰りが遅くなるよ
玄関は閉めちゃって良いから、と打ち込んだ
まあ全員見るとは思うがドラマ組は遅そう。
比較的手の空いてる兄達から読むだろう。
取り敢えず連絡は済ませ、支度に取り掛かった。
浴衣は友人が貸してくれるとの事なので
荷物は財布が入ったバッグのみ。
白いシャツと紺色のスキニーパンツを穿き
スニーカーを履いたラフな服装に着替え
一応カラーサングラスを掛け、玄関へ。
玄関の合鍵を手に扉に手を掛けた時
またケータイが受信音を鳴らした。
スキニーパンツのポッケからiPhoneを取り出して画面を見ると、LINEの通知が。
💜"帰りは何時?"
見た画面に表示される深澤からの返信。
帰りかぁ・・・多分だけど最後まで居た場合は
22時くらいになるのかな?未成年だし😶
🌕"多分22時くらいですかね"
💜"門限ギリじゃん却下、それダメね"
🌕"え〜・・・じゃあ22時迄に帰る"
💜"危ないし付近になったら迎えに行く"
軽く予想した時間を伝えたら即返事が来た。
しかも却下されたし😑
ふかざぁさんは長男なだけあって厳しい。
それだけ心配してくれてるのだと考えると嬉しいなと感じる自分も居た。
🌕"いや、迎えに行くって無免許はダメ"
💜"だから照と行くから帰る時連絡しなさい"
てか、気付いたら迎えに来て貰う流れに😀
しかも照にぃ巻き込まれ(笑)
仕方ない・・・付近になったら着替えるか~
はーい、と返事を打ち込み漸く出発した。
友人宅迄は普通に公共機関で向かう。
変に変装するより堂々としてた方が話しかけられなかったりするのだ。
そんな目論見通り声を掛けられる事なく
友人宅がある駅で電車を降り、駅を出ると
ターミナルで待っていた友人を見つけた。
🌕「お待たせ!」
👩「やほ~」
無事友人と合流し、彼女が運転する車に乗る
他愛ない話をしながら彼女の自宅へ向かった
因みに彼女はマンションに一人暮らし。
浴衣の着付けは仕事柄身に付けたらしい。
女優の卵だし、演じる役は多岐に渡るから
時代劇の撮影が来ても困らないよう
着付けの教室に通い、身に付けたと前聞いた
彼女は夢を叶えるべく努力を怠らない。
そういう姿勢には励まされるし
負けてらんないっていう気持ちになれる。
そういう気持ちにさせてくれる人って貴重だよね、と素直には感じていた。
🌕「お邪魔しま~す」
👩「上がって上がって」
🌕「相変わらず片付いてるね」
👩「そりゃね、片付いてないと落ち着かないから(笑)」
🌕「なるほど(笑)」
室内は綺麗に整理整頓され、Cleanだ。
クリーム色の壁紙で統一された8畳一間には
彼女のベッドやテーブルセットが置かれ
寝室として使っているのが分かる。
整理整頓された部屋だが女の子らしい部屋だ
👩「さて、時間はあるけど浴衣選ぼうか」
🌕「そんなあるの?」
👩「まさか(笑)一応デザインと色の好みはあるでしょ?」
🌕「まあね、どんな浴衣か見せて貰う~」
箪笥を開けて彼女が運んで来たのは4枚。
ちゃんと和紙に包まれている浴衣。
それを解いて行くと、浴衣が現れた。
1つ目、紺地に竜胆の花柄。
2つ目、白地に紅い牡丹の花柄。
3つ目、紫檀色に睡蓮の花柄。
4つ目、群青色に女郎花が描かれた柄。
取り敢えず全部素敵な浴衣なのは分かった。
悩むなぁ・・・柄で選ぶなら睡蓮かな?
🌕「なら私は牡丹にしようかな」
👩「柄の相性も良さそうだね😄」
🌕「でしょ、そしたら次は帯ね」
とまあ色々決めて行き、メイクに移る。
その頃には夕暮れ時になっていた。
女の子って大変や(貴女も女の子)
メイクは浴衣の色に合わせ、大人っぽく。
帯は赤紫色にし、背中で蝶々に仕上げる。
👩「偶にしか女の子に戻れないんだから」
念入りに仕上げなきゃね、と笑う友人。
そういう気遣いが素直に嬉しかった。
テキパキ進める友人の手により装いが完成。
👩「これぞ完璧!どっから見ても女の子」
🌕「はぁ~!これ私?女子じゃん!」
👩「女子じゃんってウケるんだけど(笑)」
🌕「いやつい(笑)」
👩「女の子なのに感想が女子じゃんは泣く」
🌕「何でよ(笑)」
👩「男装がの当たり前なんだなって」
普通の普通をありのまま楽しめないのって
なんか、なんだかなぁって思っちゃった😌
そう呟く友人の顔は寂しそうで
私の代わりに言ってくれたみたいでジーンとさせられてしまった。
時刻は19時を過ぎ、いよいよ祭り会場へ出発
祭り会場は友人のマンションから徒歩圏内に在り
浴衣姿で慣れない下駄を履いて向かう
近付くにつれ、祭囃子が聞こえ始める。
正直夏祭りには久しぶりに来た。
多分だけど両親が生きてる時に数回だけ行ったとは思う。
物心つく前だったからなのか
鮮明に覚えてはいなかった。
道路脇に並ぶ出店、目移りしそうな数だ。
👩「賑わってるね~」
🌕「だね、ワクワクする」
👩「そういやお兄さん達には連絡した?」
🌕「うんグループLINEに入れといた」
👩「なんて返事来たの?」
🌕「門限ギリだから22時前に迎え来るってさ~🤔」
👩「へぇ~でも良いな、心配してくれてるんだよ」
まあそうだけど、と苦笑した。
未成年じゃなかったら遅くまで遊べたのに
と思ってしまうのだ。
今は久しぶりに会った友人と
数年ぶりに来た夏祭りを楽しみたい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
その同時刻。
兄やメンバーはというと
仕事が終わる者も出て来ていた。
❤「くん、帰り遅いんだって?」
💗「そうみたいでやんすね~」
💚「ふっかが照と迎えに行くみたいだよ」
❤「まあ、それなら安心かな」
💚「うん・・・けど何処に出掛けたんだろ」
💗「確かに行先は気になるね~」
❤「彼が帰宅したら聞いてみたら?」
💚「そうだね」
とまあシェアハウスに帰宅した組はそうやり取りし
食事担当の宮舘を残した2人は個室へと向かった。
❤「あ・・・くんは夕飯どうするんだろ」
1人キッチンに残った宮舘の呟き。
答える声はなく、考えた末
個別でにLINEする事とした。
が、今はもう19時過ぎ。
この時間に居ないなら夕飯は不要と読んだ。
まあ案の定祭り会場に居るの手には
買ったばかりの焼きそばがある。
青のりが歯につく危機はあるが空腹に負けた
友人はりんご飴を手に、隣を歩いている。
取り敢えず食べれる場所を探していた。
👩「あ、あそこにベンチあるね」
🌕「ナイス、そこで食べようか😆」
運良く人混みが途切れた瞬間
誰も座ってないベンチを見つけた2人。
丁度足も疲れていた為、嬉しくなる。
ベンチはメイン通りから少し奥に置かれ
賑やかな喧騒からは離れていた。
🌕「は~・・・何か落ち着くね」
👩「だね、でもちょっと先に会場見えるから明るくて良いわ(笑)」
🌕「言えてる、よし腹ごしらえだ😆」
漸く落ち着けてから焼きそばを出し
友人もリラックスしながらりんご飴を頬張った。
空には星が出ているだろう。
生憎と私が生まれ育った埼玉と違い
都内の夜空は漆黒で、星々は見えない。
それでも夏祭りの空気と出店の焼きそばが
不思議と解放感を与え、笑みが溢れる。
明日からの毎日もまた頑張れそうだ。
👩「ふふ、ちょっとは気晴らしになったかな?」
🌕「・・・もしかしてそのつもりで誘ってくれたの?」
👩「まあね、偶には気晴らしも必要かなってさ」
🌕「ありがとう、凄く気晴らしになったよ」
👩「なら良かった、明日からまた頑張ろう」
うん!と力いっぱい私は友人に頷いてみせた
私の事を私以上に気にかけてくれる人の存在に、胸がいっぱいになる。
が、穏やかな時間は壊されそうだった。
私や友人が買ったものを食べ終わる頃
明らかに近付く気配と足音が聞こえた。
足音に気付いて其方を見れば
私より歳上っぽい青年らが4人立っていた。
👤「彼女達可愛いね~2人で来たの?」
にこやかに話しかけてはいるが
ビクッとは肩を震わせた。
身近な異性には慣れたが、そうではない異性には怖い気持ちが先行する。
それを知る友人がベンチから立ち
私をも立たせると、歩き出しながら言った。
👩「いえ、私達も4人で来てるんで」
👥「けど後2人居ないじゃん」
👩「買う物が違うから分かれてるだけですよ」
👤「そっちの子も?」
🌕「えっ、はい・・・」
浴衣だから早歩きが出来ず気持ちだけが焦る
しかもずっと着いてくるし・・・怖い。
でも友人の為にも私もしっかりしなきゃ。
何とか怖いなりに質問には答える。
本当は2人で来たけど、複数だと答えた友人
多分機転を利かせたんだろう。
だが4人組はしつこく食い下がる。
👤「他2人も女の子?」
👥「だったら合流して4人で遊ぼうよ」
👩「もう帰るんで大丈夫です」
👤「つれないなぁ遊ぼうよ」
🌕「本当に大丈夫ですから」
これではキリがない。
それにしつこくて怖い・・・
👩「二手に別れて撒こう」
そんな気持ちを察した友人が小声で囁く。
だが上手く撒けるだろうか・・・
こっちは浴衣に下駄、走るのは難しい。
でもやるしかない・・・
私は不安でいっぱいになりながら頷いた。