深まる謎



久方ぶりの着信は、Kissmyの玉森だった。
あの日の打ち合わせ以来姿を見せていない俺達を探して
テレビとか事務所とかが騒ぎになってるんじゃないかと気掛かりだった。

亀梨も初日の夜に戻った次の日に電話をしようとしていたが
その翌朝、再び猫に戻ってしまい
連絡出来ず仕舞いだった、その間に起きていた事。それは・・・・

「つまり、あの夜お前は俺らが消えるのを見たって事?」
[そうなりますね、もう俺驚いて直ぐ赤西さんに電話したんですけど]
「今日まで繋がらなかったって事か・・」
[亀梨さん達の事を担当してるマネの人に連絡したら、まだ知らないみたいで事務所に行ってみても騒いでなかったんです]
「それも何かおかしいよな」
[俺もそう思ったんすけど・・・亀梨さん達が消えたその翌日に、八神とか名乗る男とお付きの人みたいなのが尋ねてきたんですよね]
「誰だそれ」

人気のあるグループ、KAT-TUNが六人揃って前触れなく姿を消したと言うのに
玉森が言うには、全くメディアも事務所ですら騒いでなかったらしい。

それで、俺らが長期のロケに行ってると言うフォロー?をしたのは
八神とか名乗る謎の男だと言う事だ。

どんな世界の男かは知らない、だが事務所はその話を信じたって訳だよな?
普通は信用出来ないだろ・・・・なのにその男はジャニーさんを納得させた。
誰なんだその男・・突然現れて、俺達が今長期ロケをしてると事務所側に納得させられる程の手腕だって事か?

玉森からこうして話を聞いていてもサッパリ分からない。
やっと自分達なり動き出した矢先に舞い込んだ新たな謎と人物・・・・・
また全員で話し合う必要がありそうだな・・

「他に何か変わった事とかあったか?」
[うーん・・・これと言って・・・・あ]
「ん?何かあった?」
[その男、やたら夕さんについてジャニーさんとか俺らに聞いてきたんですよね]
「――――え?どんな事聞かれた?」
[えっと・・夕さんとはどんな話をしましたかーとか、何か預かってないかとか。子供は居たのかとか?]
「!!?」
[亀梨さん?]
「いや何でもない、てか色々とサンキュ玉森。また何かあったら連絡してくれると助かる」

玉森から聞いた男の質問内容を聞いた瞬間、俺の背筋がざわついた。
理由の分からない何かが胸を騒がせ、知らずに隣にいる赤西を見つめる。

視線に気付いた赤西と目を合わせたまま玉森にまた連絡するよう言って通話を終わらせた。
八神と言う男が玉森達に聞いた質問に対し、亀梨の直感が警報を響かせている・・・・
何か預かってないか、どんな話をしたのか。極めつけは子供は居たのか・・

これらが指し示す答え。
八神って男らは、俺と赤西の預かったアクセと
・・・夕さんの孫であるを探してるって事。

にしてもこれを今に話すべきなのか?
八神なんて名前、からは一言も聞いてねぇし・・つまりはも知らない男って事だもんなー・・・・

「カメ」
「ん?」
「俺の顔見ながら何考えてんの?」
「あーわりぃ」
「つーかいきなり俺のケータイ奪って玉森と何話してたんだよ」
「それなんだけど、さ・・」

電話しながら少し目を見開いたカメが、何かジッと俺の顔を見上げた。
ちょっと強張ってる感じの顔で、少しも視線が外されない。
その様が目を合わせた俺に、微かな予感を沸き起こさせた。

カメの切れ長な目が、少し揺らいだのを見ながらその肩を揺り動かすと
ハッと気付いた亀梨は平静を努めるかのようなそぶりで赤西へ笑みを返す。

問われたのはさっきのやり取り。
言うべきか悩んだ。

今更聞かなかった事には出来ない。
自分達は十分すぎるくらいに関わってしまっている。
それに、玉森から話を聞かされ・・一層を一人にする訳にはいかなくなった。

言い淀み、視線を駐車場のアスファルトに落とす。
壁に寄り掛かって座り、膝の上に乗せた腕から伸びる手に
猫の姿の上田が擦り寄るのが見える。

懐っこく擦り寄り、傍に寄り添う様が何やら愛らしい(
気遣うように向けられた目、ヒョイッと抱き上げてから曲げた太腿の上に乗せる。

ふわりと抱き締めれば柔らかい毛並みが頬に触れた。
温かい動物特有の体温に少し自身の心を落ち着かせられた亀梨は、静かに口を開いた。

「玉森は俺達が消えた現場に居合わせたみたい」
「マジ?」
「うん、だからすぐ事務所に行ったみたいなんだ。騒ぎになってたら自分が誤魔化すつもりで・・・」
「・・・・やっぱ騒ぎになってんの?」
「玉森もそれを覚悟してたみたいなんだけど・・何か・・・八神って男が付き人みたいな奴らと一緒に事務所に来て」
「八神?誰だそれ」
「俺も知らない。でその男が、社長に俺達は長期ロケに行ってるって説明したみたいなんだよ」
「は?」

思い切って話すと、赤西は予想通りの反応を返してきた。
膝の上の上田も、言葉は分かるから耳をピクッとさせて俺の顔を見上げる。
は?とか言いたくなる気持ちは分かるけどな。

玉森の言葉をそのまま赤西に話してる俺だってよく分かってないもん。
社長を納得させられるだけの人物って事だろうし、まあ・・・あの社長だから怪しいと思っても
面白そうだからとか言う理由で納得した可能性も無きにしも非ず・・・・・

有り得そうで怖い←

いやま兎に角、俺は赤西と上田に聞いたままを話す事にした。
話す事であらましが整理出来るかもと思って。

整理しながら話し出したら赤西に突っ込まれる。
タイミングよく鳴いた上田が言ったって事にしてるけど
あれは間違いなく赤西の声だな。

代弁に使われた上田の頭を撫でてから背筋がざわついた玉森からの報告を二人(一人と一匹)に説明。
所が説明してる最中に疑問が沸いて来る。赤西も納得してから同じ疑問に行き当たったらしく、同時にハッとそれに気付いた。

「それだけじゃないんだよね・・・気になんの」
「何だよ」
「ニャー」
「上田が早く言えってさ」
「だから、その八神って奴・・夕さんとどんな話をしたかとか、何か預かってないかとか・・・子供はいるのかを聞いたらしいんだよ」
「おいそれって――」
「八神って奴は、ひょっとしなくても俺達のアクセとを探してるって事だけど・・」
「?」
「夕さんと関わりがあるなら、夕さんの自宅に直接行けば早いだろ?何でわざわざ事務所に?」
「だよな〜・・・まるで夕さんがあのアクセを俺達に預けたって知ってるみたいな―――――!?」

つーか寧ろ知ってんじゃ?
知ってて事務所に来たって事は、夕さんが俺と赤西と懇意でしかもジャニーズだって知ってる。
だからわざわざ事務所に来た・・・・・

けど俺達はいなくて・・寧ろ好都合とか思ったのかも?
俺達がいないとなれば、堂々と探し回れるし接触もし易くなるから?

いや、憶測の域だ・・・・
あーーーっもーーー!!!
何なんだその八神って奴、白なのか黒なのか今一わかんねぇ。

兎に角今は考えないでおこう。
にしてもそろそろ俺と赤西だけで考えるのは限界だなあ・・
別に赤西が悪い訳じゃねぇけどさ、こうピンポイントで助言してくれる奴が欲しいと言うか何と言うか。

例えば上田みたいな?
ってか今猫だし。そういや、俺以来誰も戻ってねぇよな〜・・・・サイクルがわかんねぇもんなー・・・・・

そう言えば、遅いな。
ふと思って赤西越しにコンビニの入り口を見たら
呼吸が止まりそうになるくらい驚いた。

視線の先には、いつの間に買い物を終えたのか
目を驚きに見開いたが、赤西の後ろに立っていたから。