小さな恋の始まり 後編



1月の寒さに、一人耐えてたら正面の扉が開いた。
そんで、そこから出て来た二人組。
そんじょそこらじゃ見られない美男子!

しかも、派手な衣装を着てて 一般人じゃないのは確か・・。
手には温かいコーヒーを持ってる。

「オハヨ、そこ寒くない?」

吃驚して何も言わずに二人を見上げてれば
流石に見つめられて照れたのか、コーヒーを手にした青年が
あたしに話しかけてくる。

寒くない?って・・・聞くまででもなくない?
あたしは寒さをアピールするかの如く、はぁっと息を吐き

「白いでしょ?寒くない訳ないじゃない。」
「あはは、そうだよね。」
「仁・・・おまえ何がしたいの」

まるで会話が続かない様子に、隣にいた亀梨も突っ込む。
とゆうか・・この少女の落ち着きよう、何でだ?
この格好見れば、ふつー分かるんじゃない?
仁と話している少女の様子を見ながら、亀梨は疑問に思う。

それは仁も感じたようで、気が抜けてしまった。
きっとキャーキャー騒がれるのを覚悟してたから。

それでもこうして出て来てしまった以上、引くに引けない。
眼下に座る少女は、見るからに寒そうで体も微かに震えている。
このままでは入るまでに風邪でも引きそうだ。

「そこ寒いし、ロビーに入ってなよ。」
「おい仁、それは流石にマズくねぇ?」
「平気だって、一時間くらいだけだし」
「でもさぁ・・・」
「じゃあ亀、おまえファンのコが風邪引いてもいいのかよ〜」

小声で話を進める二人、座り込んでるあたしにもその視線が注がれる。
ファンのコ?あたしの事?じゃあこの二人はどっかのアイドル?
今一状況の分かってないあたし。

「このコさ、俺達の事知らないみたいだし。」
「何だ・・仁も分かってたんだ」
「まあね〜さあ入ろうか」

亀梨は、赤西も自分と同じ事に気づいていたと知ると
ホッと安堵の息を吐く。
その隙に、赤西は少女を立ち上がらせ ロビーへと誘ってる。
はぇ〜なぁ・・・

エスコートされながら、あたしはロビーを見渡す。
ちょっと今混乱中・・・これはいいのだろうか?
これから開場する会場に、一足先に入っちゃった。
ふとコーヒーを手にした青年が、そのコーヒーをあたしに差し出す。

「君 コーヒー飲める?まだ温かいからどうぞ」

差し出されたコーヒーからは、確かに湯気が漂い
同時に芳しい匂いも鼻腔を擽る。

「うん、有り難う。」

ちょっと飲み物が欲しいと思ってたから、素直にあたしは受け取る。
そのはにかんだ笑顔に、思わず仁はドキッとしてしまう。
ムスッとしてたのが、いきなり可愛らしく笑うと結構来る。
フラッとして隣にいた亀梨の肩を小突いた。

「なあなあ、あのコ可愛くねぇ??」
「まあ確かに・・言っとくけど、ファンのコだからな仁。」
「・・・わぁってるよ」

厳しい突っ込みに、ムッとしつつも渋々頷く。
とは言ったものの・・実は亀梨もさっきの笑顔にはドキッとした。
やっぱり女の子は笑った方がいい、などと密かに思っていたりして?

このむっつりスケベめ(ごくせん!?)

それはともかく、あたしはコーヒーを少しずつ飲み込み
チラッと二人の美青年を観察。
見れば見るほどカッコイイ、これはミーハーな友達も喜ぶだろう。
しかしこの二人は何者?←まだ気づいてない

「所で・・・二人は、どっかのアイドル?」
「「は?」」

ふと聞いてみたら、二人して停止。
聞いたらマズかったの?それとも、タブー?
それとも人違い?いや、これはないだろう。

知らないと思ってたが、本当に知らないのか!?と驚く。
今時変わったコだなぁ・・まあ知ってる人と知らないの差もあるけど、Jrとかに興味がないのか?と仁は思い口を開く。
「ジャニーズJrって知ってる?」
「俺達その中に作られたグループなんだけど」
「ジャニーズ・・・?ごめん、知らないなぁ。」

この答えには、二人してガックシ。
でも二人は興味を持った、俺達の事を知らないこの少女に
今日のコンサートで覚えてもらいたい!と決意。

「俺達 KAT―TUNってゆうんだ、此処でコンサートすんの。」
「え?二人がKAT―TUN??」
「あれ?Jrは知らないけど、こっちは知ってんの?」

六文字に反応を見せた少女に、亀梨が問いかける。
聞かれた少女は、自分の友達が好きで
近くに住んでた自分が一番に入れるよう、先に来たのだと答えた。
それならこのグループ名を知ってた事には頷ける。
さう分かれば、聞きたいのがアイドルの性。

「君の名前は?それと、誰が好み??」
「仁、ナンパすんなよ」

すぐさま突っ込む亀梨を無視し、真っ直ぐあたしを見てくる。
その真っ直ぐな眼差しに、意識してなくても照れた。
ハットから覗く目が、無条件に色っぽい。

。好みは・・・まだよく分からないのよねぇ」
「そっかぁ〜残念」
「じゃあ今日のコンサートで決めてよ」
「おい亀・・おまえだってちゃっかりナンパしてんじゃん」
「今のはナンパじゃねぇだろ」

別の見方すると、この二人って漫才コンビみたいだなぁ
二人の息の合ったやり取りに、思わずも笑ってしまう。
しばらくして、笑われてるのに気づいた二人が照れ笑い。

「仕事って、大変じゃない?」

生き生きとしてる二人を見てて、あたしはそう問いかける。
最近 あたしも思ってたのよ、何か夢中になれる事を見つけたい。
何となく生きてるだけで毎日過ぎてるのって 無駄じゃん?
だから 今の二人を見てて、尚更そう思ったってゆうか・・。

「確かに大変だけど、それなりに楽しいよ?」
「一つの事と言わず打ち込んでると、すっげぇ充実してるし」
「そうそう!今日のコンサートだって俺達なりのアイディアも入れたしな!そうゆうの形になると、やった!って思う。」
「ああ、これからもっと活動の場とか広げたいよな」

の存在など忘れたかのように、盛り上がる二人。
仕事の事を話す時の顔は、本当に楽しそうで生き生きとしてた。
あたしもそんな風に言える事を見つけたい。

「あたしも・・そうゆう事に出会えるかな」

静かなロビーに響いた、の遠慮がちな言葉。
それでも声に含まれてる決意は、二人にも伝わった。
彼女は自分が真剣に打ち込める事を探してる。
今日のコンサートをきっかけにして、それを見つけて欲しい。
隣で聞いていて、仁は心から思った。

「見つかるよ、ちゃんの探してる物に。俺達も見つけたし」
「当てずっぽうで言うなよなぁ、仁。」
んな訳ねぇだろ!と亀梨の言葉で言い合いが始まりそうだったが
そうなる前に、あたしがハットを被った青年に答えた。

「有り難う、絶対見つけてみせる。」

言葉と共に微笑んだ、見惚れそうになった仁と亀。
越しにある時計、その針の位置が亀梨の視界に入る。
そんなに長くいたつもりはないが、時計の針は・・・

「やっべ!仁、もう戻らねぇとっ8時30過ぎてる!」
「マジ!?うわっホントだ!」

予定していた時間をとっくに過ぎていて、飛び上がった亀梨
その亀梨に急かされて、同じく時計を見て吃驚した仁。
あたふたとし始める二人を見て、も伝染したように焦りだす。
アイドルと三人でいられるのを見られたらマズイ。
それに この二人にも迷惑がかかる。

「あたしも戻る、コーヒー有り難う!」
「気にすんなって!コンサート楽しんでってな!」
「仁の言う通りだって、俺達が勝手にした事だしさ。」

じゃね〜とあたしに向かって手を振る二人。
気さくな芸能人だなぁ・・と口許に笑みが浮かぶ。
何だかとても、美味しい出逢いをしてしまったと思う。
決して悪くはなかった。
あたしの目指すもの・・・それは確実に形を作り始めてた。

8時45分
この頃になると、会場の前も賑やかになる。
さっきまでその本人達と会ってたなんて、嘘みたいだ。
でも証もある、その本人に手渡された紙コップ。
寒いよねってあたしに手渡してくれた彼の触れてた物。
選べないって言ったけど、決まってきたかも?

〜場所取り有り難う!感謝感謝☆」
「いいよ、気にしてない。それよりMDありがとね。」

バタバタとお手製の団扇を手に駆けつけた友達。
息を切らせてあたしに礼を言った彼女に、笑顔で振り向く。
明らかに何時もと違う様子、気づいた友達はあたしに聞いてきた。

「うーん?何かいい事あった?」
「内緒」
「チェッ!いいもん、曲聴いたよね?どれかいいのあった?」
「うん、この曲が凄く好き。」

内緒と言われて拗ねた友達、けどすぐに話を変えてくる。
あまり突っ込まれなくてホッとしたけど。
だって、貴女の大好きなグループの人と一緒に話してたから
なんて言えないでしょ!一気にパニックになるよ。

友達の問いかけに頷いてから、再生ボタンを押して
流れ出す前に片方のイヤホンを耳に差し入れる。
自分ももう片方を耳に入れた。

「あ!これって『Hesitate』?」
「『Hesitate』ってゆうの?誰の曲?ソロだよね」
「うん、仁君のソロだよ。」
「仁君?」

生で聞いた色気のある声、頭の中でハットを被った青年が浮かび
友達の言ったのが、その彼だと一致。
へぇ・・仁ってゆうんだ あの人。
仁君の隣にいた人は名前なんてゆーんだろう。

あたしはMD本体を大事そうに握り、イヤホンから聞こえる
その仁君の声に耳を澄ませた。

それからコンサートは幕を開け、あたしは楽しそうに歌い
体全体でダンスを踊る二人を目の当たりにし
勇気と楽しむ事を貰った。
生きる上での目標、そこに向かって走る事。
音楽の世界には行けそうもないけど、違う形で同じ場所に立ちたい。

少しずつではあるが、あたしは目標を見つけた。