妖しい動き



と別れ、面談を受けた浩介。
ヤンクミに仕事が決まりそうだと話し終え、学校を出た。

先ず向かうのは、集合場所に使っている公園。
其処へ向かう時も、には会わなかった。
だからもう、は先に行ったのとばかり思っていた。

面談を間逃れた仲間達のいる公園。
駆ける浩介の視界に、公園の入り口が見える。
鉄柱を避け、公園内に入り すぐに隼人達を見つけた。

「おまたしー」
「おうおう 終わったかい?」
「おう、速攻終了。」

駆け込みながら言い、低い滑り台から降りてきたタケに親指を立てて言う。
それから、遊具のコンクリートに座る隼人達を見て呆れたように言った。

「あ!オマエ等サボリかぁ〜」
「面接とかメンドイじゃん」
「アイツが1人で張り切ってるだけだしな」
「さぁーて、ほんじゃ・・何処行く?」
「そーだなぁ・・って、は?」

浩介の問いに、軽く答える隼人と竜。
座った位置から浩介を見た隼人、すぐにの姿はない事を確認。
どうしたのか聞く前に、タケが浩介に聞いた。

滑り台を滑り降りたつっちーとタケを前に、聞かれた浩介はサラッと知らないと答えた。
先に出て、此処にいるかと思っていただけに余計知らない。

「ってゆうか、バイトじゃねぇの?」
「それねそっか、で、何処行く?」
「・・・わりぃ俺これから仕事なんだわ」
「はぁ?何仕事って」
「夜のお仕事って奴?実はさ、すっげぇいいトコに誘われたんだよ。多分俺、其処に就職する事になると思うわ。」

真希ちゃんがいる喫茶店で、バイトしてるんだろうとタケに言うと
タケもそれを思い出し、アッサリと同意。
つっちーも納得した所で、もう一度何処行くかと聞けば

浩介はニコニコと仕事が決まりそうだと話した。
しかも夜のお仕事だとか。

「やっぱそろそろ先の事真面目に考えねぇとな、いつまでもこのままでいれる訳じゃねぇし」

さり気なく就職の話をしてから、じゃあニャンと言い
集まっていた隼人達の所から去って行った。
浩介の言う通りだが、何とも言えない表情で隼人達は浩介を見送る。

その後姿を見ながら、タケが就職決まったんだ・と洩らす。
隼人が行こうぜ、と声を掛け、それに応えたつっちーとタケは公園を出るべく歩き出し
最後に立ち上がった竜も、駆けて行く浩介の背中を見てから自分も公園を立ち去った。

浩介ももいないメンバー。
静かな訳じゃないが、がいない事が隼人と竜には物足りなかった。
それもこれも、自分達が無鉄砲過ぎたから。

アイツ、泣きそうだった。

歩く隼人の頭に、あの日のの顔が思い起こされる。
あんなに傷つけて、気持ちを無視してしまったから簡単には赦してもらえないだろう。

あぁ〜〜このまんまだったら、マジ辛い。

一方、竜も同じ事を考えていた為
歩き出した隼人達の間で、余り会話はされなかった。

浩介と別れ、着いた所はいつものゲーセン。
つっちーとタケは、隼人と竜が落ち込む理由を知らない為
普段通り、ワイワイとクレーンゲームに興じていた。


ΨΨΨΨΨΨ


誰とも話さず学校を出た、家には戻らずそのままある所にいた。
ゲーセンよりは煩くないが・・とても華やかな場所。

店内は薄暗く、淡いピンク色の照明が店内を照らしている。
中にはレストラン並みにテーブルや椅子が置かれ
スーツに身を包み、モデル並みに整った顔をした青年が行き交い

客らしき若い女達の隣に座り、楽しそうに酒を酌み交わす。
一日に何百万、何千万の金が動く場所・・・そう、此処は――

「今日から入った紫戯君、皆色々教えてやって」
「紫戯です、新人ですが厳しく指導してやって下さい」
「へぇ〜中々じゃん、宜しくな紫戯。」
「言葉通りビシビシ行くから、覚悟しとけよ?」
「はい、宜しくお願いします。」

一夜の出逢いと別れ、数々のドラマが生まれる場所。
ホストクラブである。

本来女であるは、ホストクラブ『パピヨン』にいた。
この場所は柴田事件の後、目星を付けておいた所である。
喫茶店は平日の放課後、週末の放課後はホストクラブ。

父親からの援助を(売り言葉に買い言葉で)断ち切られたので
夜の仕事を始める事を決意した。
喫茶店と違い、学生(まして男)は立ち寄せない世界だからバレる事もない。

オーナーに紹介され、先輩ホストの前で挨拶した
早速人当たりの良さそうなホストが、に声を掛けてくれる。

初日の今夜は、1人の先輩ホストのヘルプとして付き添う。
先輩と指名客の前に座り、盛り上げたりお酒を注いだりする係りだ。
ヘルプをこなしながら、ホストとは何かを学ぶ。

がヘルプに付いた先輩の源氏名は『霧十』。

「霧十〜今夜も会いに来たよ♪あれ、その子は?」
「サンキュー、絢子さん。コイツは新入り、ホラ挨拶しな。」
「初めまして絢子さん、今日から入った『紫戯』です。」
「まあ、可愛い子じゃない。これから宜しくね、今度指名してあげる」
「有り難うございます」

霧十が俺に紹介した客、絢子さん。
年齢は20代前後、茶色の髪を肩に垂らし
お姉系の服装、白のカーディガンの下に空色のキャミ。

雰囲気からして、同じ夜の仕事をしてる感じだ。
まだ酔っていないらしく、結構いい感じの人かも。
指名してくれると、俺に約束してくれた。

お金を早く稼ぐには、こういったお客さんを沢山持ち
指名客を得なければならない。

「絢子さん、お酒お注ぎしますよ」
「あら、気が利くじゃない紫戯君。」
「紫戯、オマエも少し飲めよ。俺の奢りだし」
「いいんですか?ヘルプなのに」
「バカだな、ヘルプだから飲むんだよ」
「・・・・ああ、そうでしたね」

絢子さんのグラスが空いたのを見て、テーブルに置いてあったボトルを取る。
銘柄を見て、目が飛び出そうになったが
平静を装ってグラスに注ぐ。

テーブルの酒は、ドンペリやゴールドシャンパンにグレゴリー1世。
ドンペリで軽く100万は行くんじゃないのか?
ゴールドシャンパンで多分、5〜80万だし。

霧十さんのお客さんだから、頼んだものは霧十さんの利益になる。
勿論代金は絢子さんが払うんだけどさ。

ってゆうか・・俺、未成年。
だが、ヘルプってのはそうゆう好意とか行為を断れない。
何せ一番地位が低いから。

「はい、有難く頂きます。」

ニッコリ2人に微笑み、ガシッとグラスを手に取ると
なみなみと酒が注がれた中身を、一気に煽り 飲み干した。

潔い飲みっぷりに、絢子と霧十は目を丸くする。
その様子は、オーナーや他のホストも見ていて
思わず絢子は拍手をしていた。

「きゃーー紫戯君凄い!もっとサービスしちゃう」
「有り難うございます、頂きます。」

はしゃいだ絢子さんが空けたばかりのグラスに、更にドンペリを注いだ。
さっき飲んだのは、味からしてゴールドシャンパン。
ドンペリは、まあまあ美味しかったかな。

ってゆうか、俺結構酒強いみたいだな。
一気飲みしたってのに、まるで効いてない。
それで気をよくしてしまったらしい。

「紫戯やんじゃねぇか、俺の客取るなよ?」
「大丈夫ですよ、これからが勝負ですから」

ドンペリを軽く飲み干してから、霧十さんへ強気の態度。
この態度に、気を悪くする事なく
霧十さんは笑い、の頭を軽く叩いた。


ΨΨΨΨΨΨ


時刻は21時50分。
『パピヨン』に入ったのは、18時。

結構飲んで、盛り上がってたみたいだな。
初日だからなのか、こんなに普通は早く帰れない。

「あーーーー飲んだ飲んだ、仕事とは言え違反しちまったよ・・」

足元は危なくないが、何やら眠い。
絢子さん、貴女未成年に酒飲ませすぎ。
まあ・・・向こうは俺が高校生って知らない訳だし。

オーナーには20歳って言ってあるからねぇ・・・。
まあいいか、来週からは指名客取れるように頑張んなきゃな。

何て考えながら家路へと向かう。
かなり気を使ったから、帰ったらすぐ眠れそう。
何て考え、人通りの少ない道を歩いて行く。

すると・・前方から3人の人影が此方へ近づいて来た。