act.1
🦢「また騙されたんだ?懲りないね~」
🌹「だってカッコ良かったし優しかったからさあ・・・」
🦢「カッコ良かったとしても相手は仕事だしね指名貰ってなんぼだしさ」
とバイト先へ歩きながら〇〇は友人と電話中
友人はイケメンに弱く、今日もまた嘆いてる
去年辺りからホスト遊びにハマってしまったらしく
金遣いも危なくなってる。
何回かやめるよう言ったけど、糠に釘。
今回はイケメンホストに貢いだのに相手にされず
指名増やしの為利用されたらしい。
ホストってのは顔や話術全てが備わらないと
いつまでもヘルプ扱いで体を壊して終わる
友人が貢いだ相手は、顔は良くても話術はなく
自ら指名を貰う為になんら努力も自分磨きもしない
外見に対してだけ無駄なプライドを持つ簡単な頭の残念イケメンだった。
🦢「これに懲りてホスト遊びはやめな~?」
友人の為を思って言っているのだが
多分もう違う事を考えてそうだ・・・。
🌹「それより聞いてよ〇〇新しくまたホストクラブがオープンするのよ」
やっぱりね・・・懲りてないわ。
予想通り友人は電話の向こう側で話を切り出す。
ホストクラブ激戦地に現れたその店。
偶々今向かっているバイト先と近かった。
ホストクラブ激戦地の隣の町にバイト先は在る。
しかも町外れだから数歩先がホストクラブ激戦地だからめっちゃ近い。
え~・・・やだな(笑)
そんな世界に興味は無いし関わりたくない。
今まであまり考えなかったが、数歩先に快楽街とかヤダな。
しかし生活費の為に辞める事は出来ない。
なるべく関わらないようにするしかなさそう
そろそろバイト先に着くので、友人との会話を終わろうとした。
🦢「今からバイトだから切るよ?」
🌹「待って待って店名だけ言わせてよ」
🦢「何でよ(笑)」
🌹「確か〇〇のバイト先から近いじゃん?」
🦢「まあ・・・近いけど私興味ないから」
🌹「見掛けるかもしれないから名前だけ言っとくわ」
そんな問答をする時間も惜しいんだが
妙にウキウキな友人に押し切られ、名前だけ聞く事にした。
🦢「聞くだけだよ?早くして」
🌹「ホント興味ないね?店名は『SnowDream』見掛けたら教えてね!」
🦢「ふーん?はいはい」
呆れる友人には構わず、約束通り店名だけ聞いた。
何となく耳に残る店名だなと思いつつ
バイト先へと急ぎ足で向かった。
〇〇のバイト先は流行りのタピオカ屋だ。
朝と昼、それから夕方とほぼ1日中忙しい。
私が入る時間帯は学業が終わる夕方から。
今〇〇は23歳、大学を卒業したばかり
高校時代からバイトさせて貰っているタピオカ屋で就活の合間に働いている。
🦢「こんばんは、今日も宜しくお願いします!」
👨🍳「〇〇ちゃん今日も宜しく~」
裏口から入り、居合わせた店長に挨拶。
付き合いが長い為、気心知れた仲だ。
ロッカールームに向かい、制服に着替える。
昼勤の方と交代し、カウンターに立つ。
このまま〇〇は夜の22時までバイトだ。
今は18時過ぎ、家路に急ぐ人で賑わう頃だ
👤「すみませんタピオカミルクティー1つ」
🦢「は~い」
偶に帰りながら飲む為に立ち寄る人が多い
〇〇も慣れた手つきでタピオカを用意。
数分で完成させた物をお客さんに手渡した。
ありがとうございましたと見送る。
その後も何組かのお客さんを接客した。
時間は21時半、残り30分でシフトが終わる
そう感じた時にまたお客さんが現れた。
店先に現れたのは背の高い4人組。
4人組は皆スーツを纏い、全員背が高い。
何だか目を惹く4人組だなぁ・・・
ぼんやりと眺めていたら目が合った。
少し強面の人で、心臓が跳ねる。
🦢「いら、いらっしゃいませ」
💛「ほらお前ら何にするんだよ」
あまりの迫力に慌てて頭を下げる〇〇
ヤクザさんかな思うくらいの迫力だった。
目が合ったその人は特に意に介さず
自分の少し後ろに立つ3人を振り向く。
問われた3人は銀髪?の子と
テクノカットさんに前髪を斜め分けした青年だ。
🖤「ホントに良いんですか?岩本くん」
💛「腹減ってんだろ?」
🖤「まあ確かに減ってますね」
💚「今日お披露目なラウへの餞別だよ」
何やら話し始める4人組。
目が合った強面の人は『岩本さん』というらしい。
銀髪の子が今日から何か始めるのだろう。
斜め分けの青年が言う餞別はそういう意味なのかなと予想した。
〇〇が4人組を眺めてる間も彼らはメニューと睨めっこしている。
男性4人組がタピオカ屋さんに来るのも中々珍しい。
🖤「ねぇお姉さん、オススメとか教えてよ」
🦢「へっ!?あ、オススメですね?」
ついつい見ていたら今度はテクノカットのイケメンと目が合い
ナチュラルに話し掛けられた。
単にオススメを聞かれただけなんだがドキッとしてしまった。
いやぁさ、スーツが似合うイケメンだよ?
中々お目にかかれないからさ・・・
兎に角店員としてオススメを説明した。
聞かれたからには答えないとね。
🦢「オススメは此方ですね」
🖤「うわ何コレ見た目ヤバいよ岩本くん」
💛「ヤバい言うな(笑)」
💚「『盆栽タピオカミルクティー?』」
🤍「何コレ可愛い!」
店員として張り切ってオススメをご案内。
それに合わせてメニューをガン見する4人組
何だか反応が可愛らしいなと思った
味と構造を話す〇〇の説明に聞き入り
ふむふむと頷いては感嘆とした声を出している。
反応が楽しくて説明が長くなってしまった。
🦢「ごめんなさい説明が長くなっちゃいましたね
兎に角オススメはそれです」
💛「大丈夫、凄く分かり易かったわ」
🖤「岩本くん、俺オススメの奴にします」
🤍「俺も!」
呆れ笑いを浮かべて謝ると強面な岩本さんから意外にも優しい言葉が。
その横でテクノカットのイケメンさんと銀髪のイケメンくんが
オススメした『盆栽タピオカミルクティー』を選択してくれた。
惜しみなくオススメした甲斐があったね!
4人中2人はメニューが決まり、残り2人の注文を〇〇も待つ。
💛「阿部は?」
💚「俺はそうだな、黒糖抹茶ラテで」
💛「新メニュー?」
🦢「あ、はい『黒糖シリーズ』ですね」
💚「『黒糖タピオカラテ』もあるよ」
こっちの2人は落ち着いてる雰囲気だ。
強面な岩本さんも選ぶ時は雰囲気が柔らかい
甘い物好きなのかな、と頬が緩む〇〇。
テクノカットの彼と銀髪の子は岩本くん呼びだったが
斜め分けの青年とは対等に見えるその青年は『阿部』というらしい。
数分だけ岩本さんと阿部さんは相談し合い
注文が決まったと見える岩本さんと目が合う
💛「『黒糖タピオカラテ』と『黒糖抹茶ラテ』にするわ」
🦢「と『盆栽タピオカミルクティー』の2つですね、ありがとうございます」
💛「ああ、それもだったわ(笑)」
🖤「岩本くん酷いっす」(目黒
💛「目黒、自分で払ってもいいんだぞ?」
🖤「岩本くんありがとうございます!」
という賑やかなやり取りを聞きながら調理。
仲がいい中にも敬う線引きを感じる4人組
スーツ姿でこの辺に居るのはどんな仕事なんだろう。
・・・まさか?まさかね。
一瞬過ぎった考えを即座に却下。
🦢「お待たせしました、先に『黒糖シリーズ』を1つずつどうぞ」
💛「ありがとう、ん、阿部の分な」
💚「ありがと照」
タンプラー付きの2つをカウンターに出す。
移動手段は分からないが、念の為だ。
気付いた岩本さんが微かに笑みを浮かべる。
間接的に岩本さんのフルネームが分かってしまった(笑)
笑うと雰囲気が柔らかくなる岩本さんに合った名前だなと感じた。
🦢「続いて『盆栽タピオカミルクティー』です
持ち運びに気をつけて下さいね」
🤍「はーいありがとう」
🖤「やべぇ美味そう」
カウンターに乗せた2つを目黒と呼ばれたテクノカットのイケメンさんと
ラウと呼ばれてた銀髪イケメンくんがニコニコしながら受け取る。
何だか微笑ましいなとレジを打ちながら感じ
支払いの為に前へ出た岩本さんに伝えた。
岩本さんは財布を出す為にiPhoneを一旦カウンターに置き
財布を手に持ちそこから代金をカウンターに出す。
長い指がお札を取り出す様をじっと見てしまう
服の袖から見えたのは2連のブレスレット・・・いや数珠かな?
🦢「代金は2500円になります」
💛「じゃあこれで」
🦢「はい、丁度ですね」
置かれた代金を受け取り、レシートを岩本さんへ差し出す。
そのレシートを自然な流れで岩本さんの長い指が受け取って行った。
💛「お前ら行くぞ」
待っていた3人に岩本さんが声を掛け
店先から右へと出て行く。
またねお姉さん、と目黒さんが私へ笑み
1番最後に店から立ち去った。
やたらと雰囲気がある4人組だったな・・・
取り敢えずカッコ良かったねぇ・・目の保養になる4人組だったわ(
余韻に浸りながら残り時間を過ごしていると
カウンターにあるiPhoneに気付く。
🦢「あ・・・これ、岩本さんの?」
このiPhoneが誰のものかはすぐ分かった。
さっきまでいた4人組の1人、会計をした岩本さんのだと思う。
財布を出す為にカウンターに置いてたよね?
時間を見ると勤務修了まで残り10分。
届けたいけど名前しか知らない・・・
どうしたものか一緒に居た誰かが気付いてこのiPhoneに電話して来ないかな・・・
という淡い期待を抱きながら時間いっぱい働き、勤務を終えた〇〇。
iPhoneは忘れ物として店長に報告した。
👨🍳「早い方がいいから交番寄りながら帰ってみてよ」
🦢「分かりましたー・・・」
結局iPhoneは鳴らずじまいだ。
仕方ない、交番に届けようかな・・・
あまり関わりたくないスーツ4人組と関わらねばならないのかぁ
イケメンだったけど、あまり関わりたくない
理由はないが、本能的にそう感じていた。