蒼き日々 4 2020年5月26日作成




初日以降、分かりやすい批判は無く
滝沢歌舞伎2017初日を迎えた。
目黒は既に7日からアンダー(黒子)として舞台に関わっている。

が迎える初日は9日から。
いよいよ初の歌舞伎座に立つ日が来た・・・!
初めて挑戦したバレエ、頑張るぞ!

滝「いよいよ初舞台だな」
🐇「はい!」
滝「お客様には君が初舞台なんて分からない
  だから悔いの残らないよう思い切り楽しんで来い!」
🐇「――はいっ!」

控え室入りし、メイク中現れた滝沢から喝。
大きく返事を返し、は衣装に着替える。

が最初に袖を通すのは『蒼き日々』のダンス衣装だ。
ケンタッキーの2人が蒼いスーツの上下で
Snow Manは赤のジャケットに黒のズボン。

材質がベルベットで手触りが良い。
ら女性ダンサーは歌詞の春風を表す若草色のスーツ姿だ。

💗「あ~!ちゃんだ、今日からかあ」
🐇「佐久間さん、宜しくお願いします!」
💗「完成した蒼き日々の衣装初めて見たけどめっちゃ可愛い!楽しもうね!」
🐇「はい!」

バッチリ衣装を着て廊下に出たところ
真横から元気な声が掛けられた。

見た先に居たのは先輩の佐久間。
佐久間は既にオープニング衣装に着替え済。
開演と共に滝沢が舞台に登場しSnow ManやJr達も横並びに立って宣言する

春の踊りは、よーいやさ~と。
忙しい中声を掛けに来てくれた佐久間の気遣いが嬉しくて
笑顔で舞台に向かう背を見送った。

🖤「来たな

次いで呼ばれると、長身の人物が。
目黒は代役から正式にキャスト扱いに昇格し

アンダー(黒子)ではなくなり
出演者名一覧に名前が載っている。

🐇「うん、私も全力で楽しむから」
🖤「その意気その意気」
🐇「行ってらっしゃい!」
🖤「おう」

オープニングから舞台に立つ目黒も
いにしえで着るピンクとブルーの着物姿だ。

衣装を纏う目黒はとても堂々としていて
何となく顔を見たら安心し、励まされた。

頼もしく感じると共に気合いも入った
気概を示した私に目黒くんが歩み寄り
舞台方面に歩き出しながら頭を撫でて行った

吃驚もしたが、こそばゆい感じ。

開演し幕を開けた舞台は楽屋にある画面で眺め
2回目のOPを見てから移動開始。
三宅健ソロのMaybeは舞台袖から見る。

これの次が舞台デビューになる楽曲だ。
青春を詰め込んだ歌だと、滝沢が話した歌。

いよいよ披露する瞬間が訪れた。
Maybeを歌い上げた後、お客さんに挨拶し
袖から登場する滝沢秀明。

💛「滝沢くんが合図したら俺らも出るぞ」
⛄「おk」
💜「ちゃんは俺らに続く感じで」
🐇「はい・・・!」

出番までの僅かな間で打ち合わせを済ます。
滝沢が舞台上で新曲を紹介。

三宅と2人一礼した後、2人は舞台袖へ向け
片手を伸ばすような動作を示した。

💛「行くぞ」

これが控えに対する合図。
Snow Manを先頭にバックを任されたメンバーが舞台へ登場して行く。

女性ダンサーらも続いて登場し
ケンタッキーの2人、Snow Man、ダンサー
という3列の並びが完成した。

そして滝沢と三宅の新曲が披露され
Snow Manとらダンサーも見せ場を迎える。

渡辺から順にスポットライトに照らされ
各々が得意とするダンスを披露して行く。
岩本、深澤がダンスを繋げ、女性ダンサーにバトンが回り

のソロはストリート系のダンスを。
柔軟さを活かし、華麗にバク転で締めると
そこで僅かだが歓声が上がった。

見ていたSnow Manからも驚く気配を感じた
見事に『蒼き日々』をやり遂げた達。

舞台袖に引き返しながら隣になった岩本が
讃えるかのように背中を叩いて行く。
些細な事かもしれないが、私にとっては十分力となっていた。

この後の出番までは間が空く
初のバレエを踊るのだ、時間まで体を柔らかくしておこう。

柔軟体操をして準備万端にしておくのだ。
は控え室には戻らず、舞台近くの場所で屈伸やら前屈やらを行った。
その間出番の多いSnow Man達と行き合う。

偶に目黒も横切ったりと、楽しかった。
今舞台ではMASKDANCEが披露され
準備運動を整えたも控え室に戻ったが・・・

🐇「・・・・・・嘘・・・何これ」

そう呟いて暫し言葉を失くした。
控え室にある衣装置き場に掛けておいた衣装

空色のバレリーナ衣装は、切られていた。
ハサミでも使ったのか、切られた生地が散らばっている。

変面の場面に合うようにデザインされた衣装
ジョーゼット素材のチュニック型で

丈は膝の少し下まであり、足さばきした際
裾が華麗に翻る為、大変映えるデザインだ。
しかし無惨にも裾は切られ、ボロボロ。

🐇「・・・どうしよう」

変面用の衣装は一点物だ、これしかない。
しかし裾はボロボロでスリットが入ってるし丈もマチマチだ。

何かカバー出来るものが無いかな・・・
時間も無い為手当り次第に探してみるも
控え室に居たままじゃ埒が明かない。

兎に角はボロボロの衣装を手に衣装部屋へ走った。
衣装部屋に駆け込むや、デザイナーさんに駆け寄る

👩‍💼「ちゃん?もう出番が近いんじゃ」
🐇「それが、衣装がえらいこっちゃで」
👩‍💼「えらいこっちゃ?」
🐇「何か余ってる生地とか布ありません?」
👩‍💼「何これ酷いじゃない・・・!」

居合わせたデザイナーさんに切られた衣装を見せつつ必死に視線を漂わせる。
何か使えそうな材料が無いか兎に角夢中だ。

チュニック型の衣装は片袖も無い。
切られた片袖側は脇の下辺りを詰めるか縫わないと胸が丸見えになる。

でもこの衣装を活かして着たい。
この為だけに作って貰ったから・・・

🐇「何とか、この衣装で出たいんです」
👩‍💼「ちゃん・・・」
🐇「皆さんが魂込めてデザインして下さったこの衣装で舞台に立ちたいんです!」

の鬼気迫る表情はデザイナーを動かした
分かったわ!と力強く頷いて立ち上がり
ボロボロの衣装と向き合う事数分。

デザイナーはチュニック型の衣装に手を加え始めた。
先ず脇の下辺りを縫い合わせて行き

ボロボロになった短冊みたいなスカートを
切り裂かれた裾ごと切り分けた。

👩‍💼「この際だからジョーゼットだけどクラッシックチュチュ風に・・・うーん」

何か閃いたが、イマイチ悩むデザイナー。
一応ボロボロにされる前はチャイナ服風のジョーゼット素材の衣装だった。

今は片袖は破り取られ、1枚だった衣装は
上着とスカート、みたいに切り分けられた

多数の衣装が並ぶ前へ行き、何か探し始める
上下に切り分けられたチュニック型の衣装。
少しだけは鼻の奥がツンとした。

本来なら変面に合う素晴らしいチャイナ風のチュニック衣装だったのに・・・

泣いてなんかいられない・・・!
多分、嫌がらせをされたんだと思う。
寧ろ嫌がらせくらいじゃ何とも思わない

私が許せないのはその対象を衣装に向けた事
卑怯者だ、私に直接やらずに物を傷付けた・・・
絶対フイになんてさせない、穴なんて開けてなるか!

数分後、1枚の白のパンツを手にデザイナーが戻り険しい眼差しでに話した。

👩‍💼「急ごしらえだし完全にオリジナルテイストになっちゃうけど
 この衣装を使いたいちゃんの意思を汲むわ」
🐇「無理言ってごめんなさい・・・」
👩‍💼「謝らないで、寧ろデザイナー冥利に尽きるわ。気合いも入るってものよ」

力強く話すデザイナー。
にブラからチューブトップに変えるよう指示し、
チャイナ服風のチュニックをへそ出しで着させ

スリット風にしたチュニック型の名残があるスカートを、
選んだパンツの腰の少し下に偶々置かれてたミシンで縫い付けた。

すると動く度にそれが重さで揺れ
腰からふわりと広がる為、の細い腰を引き立てる仕上がりに。

を立たせたままスカートの布にハサミを入れ
重くなりすぎないよう、生地を減らす。
仕上がりはスカートパンツみたいになった。

これはこれで素晴らしいデザイン・・・!

👩‍💼「どうかな・・・」
🐇「最高です!ありがとうございます!」
👩‍💼「良かった、もう出番が来るね胸張っといで!」

空色に映える白いパンツが爽やかだ。
こっちの方が好きかも!

デザイナーさんに深くお辞儀し
は急いで舞台袖へ走った。
ヘアメイク、先にやっといて良かった・・・

パンツの裾は足首が閉じたタイプな為
足首の細さも際立たせる感じでバレエ向きだ
そこにトゥシューズも履くから更に映える。

あの慌ただしたの中適切なパンツを探し出すデザイナーさん凄すぎ。

🖤「お前大丈夫か?」
🐇「えっ?」
🖤「スタンバイ直ぐ来ねぇから心配した」
🐇「ちょっと衣装を変更してたの」
🖤「・・・こんなギリギリに?」
🐇「うん」
🖤「深くは聞かねぇけどしっかりな」
🐇「ありがとう!」

走って乱れた息を整えていると
いつ来たのか隣に目黒の姿が在り何だか厳しい目を向けていた。

無意識に遅れた理由を伏せた
ギリギリだけど衣装変更してたと話した。
疑わしげな目をした目黒だが
時間が迫っていた為深くは聞かずの肩を叩くに留めた

よし、後はもう思い切りやるだけだ。
他のバレリーナさんと違うからソリストみたいに目立ってしまう恐れもあるが

この際そんな事気にしてらんない(。-`ω-)
舞台に穴を開けるよりマシだ。
代役に選んでくれた滝沢さんの期待に応えたい。

その一心では変面の本番に臨んだ。
若干だが他のバレリーナから驚いた目をされたが仕方ない

👥「何で・・・舞台出てるんだよ・・・・・・」

そんな声も舞台袖から漏れていた。
言わずもがな、衣装を切り刻んだ犯人らである。
彼らはわざわざ見に来ていた。

舞台に穴を開け
代役から外されるを見る為に・・・。

そしてその呟きは目黒が聞いていた。
何が起きたのか瞬時に理解した目黒。
ツカツカと大股で歩み寄り、肩を強く引く。

🖤「今の言葉、どういう意味な訳?」
👤「――!?」
🖤「てめぇらもしかしての衣装・・・」
👥「俺ら何も知らないよ!」
🖤「そんなん信じられるかよ・・・!?」

舞台袖に張り付いて見ていた2人組を振り向かせ、
厳しく問い詰めた目黒だが本人らは知らぬ存ぜぬで認めようとしない。

既に自分らがやりましたと言ったも同然なのに諦めが悪い・・・、
更に問い詰めようとしたが舞台側で少しざわめきが起き
気になって2人組から舞台へ視線を変えると

踊っていたが転倒する場面だった。
実は衣装の事で動揺してたのでは?

と思う目黒、だが瞬きした瞬時には華麗に立て直したの姿があった。
( ゚Д゚)やべぇ・・・・・・凄いじゃんby目黒

転倒した音すら聞こえなかったのも凄い。
感心しながらも2人組を逃がさない目黒。
静かな口調でこれだけ言い残した。

🖤「、遅れた理由、衣装変更してたって俺に話したよ。何でか分かるか?」
👥「・・・・・・!」
🖤「どうするのが正解だろな」
👤「・・・・・・・・・・・・」

瞬間、舞台からは歓声が響いていた。
次幕は腹筋太鼓が控えている。

頑張ったを褒めてやりたいが入れ違いだ
場面繋ぎとして舞うを目黒は静かに舞台袖から見守った。