本当は気にしてた。
けどそんな事言う必要ねぇし・・・
だから言わないように心の奥に入れて鍵を掛けた。
なのにカメの奴が変な事を言ったんだよな
それを聞いて、何か胸の当たりが締め付けられた気がした。
虹色の旋律 五章
今日は10時から雑誌の撮影。
その後は今年の夏にあるイベントの打ち合わせ。
今年この日まで続いてきたジャニーズの歴史の集大成を夏に披露する。
このイベントには俺達KAT-TUNと、NEWSにYa-Ya-Ya-とかABCとかが参加。
バンドとして来る奴らもいるし・・・バックにつくジュニアも入れたら
かなりの人数と規模になるだろう。
今日の打ち合わせは、そのイベントで歌う曲の構成を決める。
殆どのジュニアが集まって行うデカイイベントは初めて。
俺も含めたメンバー全員、気合十分だ。
それから衣装も決めなきゃだから気合も入るってモンだろ
「おー、おはよ赤西」
「おう」
「何か昨日お前さ、何か怒鳴ってなかった?」
「・・・・別に」
シェアしてる家での朝食、今日の担当は上田だったみたい。
テーブルにつくと焼いたパンと、スクランブルエッグを出してきながら軽く挨拶。
何か主婦みたいに見えますよ上田さん←
インスタントのコーヒーの入ったマグカップを口許へ運びつつ
焼きたてのパンにスクランブルエッグを乗せてるとさり気なく質問が飛んで来た。
昨日・・と言えばアレだな。
あんま思い出したくねぇ〜・・・・・・
久し振りに他人、しかも女相手に苛々させられた。
見ず知らず、しかもハイカラさん。
いきなり現れたと思ったら自殺しようとすっし
挙句の果てには支えただけの俺に穢れるとか抜かしやがった。
最初はそりゃあ綺麗な子だなーとか思ったけど
あんな力一杯嫌がらなくたっていいだろ。
「まあそれはお前じゃなくても頭に来るかもね」
「だろー?あの後泊まる所も提供してやったんだぜ?」
「へえ?でもそれは赤西じゃなくてカメと四月一日さんの機転と配慮でしょ」
「はあ?最初にマネ呼ぼうって言ったの俺だし・・・・つかそもそもいきなり短刀出して死のうとするか?」
「まあそう言う事にしとこう。へえーそんな思い切った事する子が今時いたんだね〜」
「ホント・・変な女・・・・って、何でお前と喋ってんだ俺」
「何だかんだ言ってお前、その子の事気にしてたんだね」
「う」
思い出してるうちに不満が声に出てた赤西。
最初は文句ばかりだったのが、途中からその勢いがなくなって
後半は普通のテンションで喋っていた。
その様子を見ていた上田は、小さく微笑む。
口は悪いが、それは優しさの裏返し。
裏表がない奴だから、口から出る言葉は全部赤西の感情。
状況は分かった。
昨日の怒鳴り声はその自殺を止めようとしたからだったんだね。
其処まではよかったけど、何かのきっかけでその感情が暴走したって事か(
自分で怒鳴りつけて出て行かせたのに、今それをちょっと冷静になって振り返って反省してる系?
意外と不器用な奴なんだな、赤西って。
結成して数年経ってから知る一面ってのもあるんだなーと。
感心しつつ自分もカフェオレを口に含んだ。
続いてリビングへ現れる影。
「二人とも早いじゃん」
「おーカメ、もう出来てるよ朝飯」
「・・・・・」
「つか上田が担当だったんだな」
「焼き鮭が良かった?」
「別にこっちも好きだから」
現れたのは亀梨。
その姿を見つけた時、少し赤西の顔色が変化。
何か聞きたそうな、けどそれを自分から口にはしたくなさそうなそんな顔。
天邪鬼め・・・・此処は年上の俺が聞いてやろうかね。
「カメ、昨日何かあったんだって?」
「ん?あー・・ひょっとしてマネさんから聞いた?」
「まあそんなトコ、ハイカラさんみたいな子だったんだって?」
「うん。ちょっと迷子だったんだけど、話してみたら常識あるしっかりした子だったよ」
「へーー会ってみたかったかも(笑)」
「落ち着くまでホテルにいて貰うつもり、落ち着いたらまた会いに行く予定」
「・・・・・は?何だソレ」
「話してみて気に入ったんだよね」
上田の機転でさり気なく昨夜の事を問われた亀梨。
赤西を気にしつつ、テーブルに着いた亀梨はパンを取りながら話し始めた。
何となく耳を傾けつつ気にしてない素振りで、パンを頬張っていた赤西だったが
ある言葉でその手が止まる。
『話してみて気に入ったんだよね』の言葉。
頭に来て思わず怒鳴ってしまった自分と違い
最初からあの子の話を聞こうとしてたカメ。
綺麗な子だね、と言ったのもカメだった。
何、俺は嫌われ役ってー訳?
俺が一人で頭に来て、怒鳴りつけて・・・・とんだピエロじゃん。
そう思うと食事すら続ける気が失せ、赤西は席を立った。
上田はちょっと気まずそうな目で見送る。
聞かない方が良かったかもしれないと上田は思い始めていた。
赤西が立ち去り、静寂に包まれるリビング。
ちょっとまずったかな・・これから大きいイベントが控えてるって時に・・・
「そんな顔すんなよ、あれはちょっとしたカマ掛けだから」
「は?」
「あの様子だと気にしてたみたいだな、仁。」
カマ掛けなくても見て分かるだろ←
全く・・・・仕事前なのにヘソ曲げさせてどうすんだよ。
それにしても二人して気にしてるそのハイカラさん。
あー俺も会ってみたかったな〜・・・
その後全員が食事を取り、撮影の支度を済ますと
出待ちのファンに挨拶しつつ、送迎車に乗り込んで仕事場へ出発した。
その仕事の後に待つ出来事も何一つ知らずに。
雑誌の撮影は外。
テーマは昔好きだった遊び、だから撮影場所は公園だったりする。
カメは近所の公園で、キャッチボールしながらの撮影。
赤西はグラウンドを借りてサッカー姿を撮影。
田口・・・・何だろう?アイツ器用にこなすから絞れなさそうだな・・
聖は遊びじゃなくて習い事を紹介するらしい。
中丸もサッカーとか言ってたけど、赤西と被るからバスケに変えたみたいだね。
そう言う俺は勿論ボクシング・・と言いたいけど、昔好きだった遊びは一輪車なんだよ?(仮ですけど)
場所が近い俺とカメが同じ公園で撮影で、赤西と田口が組んでて中丸と聖が組んでの撮影。
一時間で済ませたらその後から打ち合わせ。
多分そのまま練習に入ると思う。
だからこの後待ってる思いも寄らない出来事は、全く予想してなかった。
そして撮影は無事終了。
そのタイミングで四月一日さんから電話連絡がリーダー(だった)の俺に来た。
折り畳み式のケータイを片手で開いて通話ボタンを押す。
「あ、悟さん?そう、今撮影が終わったからそっち向かいます・・・?」
『そう、先に言っておくけど・・ちょっと大事な知らせがあるから社長室に全員で来るように言っといてね』
「え・・・?皆に言っておくよ」
「上田?電話マネさんから?」
「おうカメ、うん・・何か大事な知らせがあるから社長室に来て欲しいって」
「大事な?何だろ。取り敢えず打ち合わせもあるし行ってみるか」
「だね、どんな話なのか気になるし」
と言う訳で悟さんからの呼び出しで、俺達は車で事務所に向かった。
この先告げられる話に誰もが驚く事になり、そして小さな波紋が生まれる事になるなんてね・・・