横浜アリーナに見学に来た
案内してくれたジャニーズの人、高地優吾に何となくだが純粋に疑問を向けられた。
何とかその場は照や深澤の登場で事なきを得たが、いつまた聞かれるとも限らない。

その対応は高地と仲の良い阿部の黒い発言に一任し
取り敢えず今日の本来の目的、リハーサルの見学に向かう時間となった。

💛「マネージャーにまた案内任そうかと思うけど不安(笑)」
💙「それな!」
❤「じゃあ俺らで案内しちゃう?」
💙「いいんじゃない?リハの時って会場全体も薄暗いしさ」

案内はマネージャーに任すのが一般的だが、一度電話で先に行かせ
その結果高地に怪しまれる羽目となったのを踏まえ
珍しく宮舘が率先して発言、この結果翔太も後押しした為6人で向かう事とした。

これには驚きもあったが、純粋に嬉しいと感じた
お願いします!と嬉々とした声で言うものだから、6人も快諾した。
何だかんだで末っ子は可愛く、甘やかしてしまう6人であった。


+++


控室を出て、T字路をそのまま直進。
が来た方ではなくそちら側を右に見つつ、進んだ。

迷いのない足取りで進む兄達は頼もしく、安心して私もついて行けた。
高地という人は、亮兄曰く、自分達Snow Manを兄貴分と慕う後輩グループ。

後輩と言えどレベルの高いグループで、何度か舞台やステージにLIVEを共にして来た。
謂わば戦友のような関係だと語り、中でも高地と阿部は一緒に焼き鳥屋に行く仲らしい。
Snow ManとSixTONESは互いに互いを認め合い、グループ間でも仲が良く、交流も多いとの事。

マンズ兄さんっていう呼び方もその表れなのかもしれないね。

改めて男の人同士の関係性って良いなと思った。
互いに切磋琢磨し合い、お互いの良い部分は認め合う。
女の子同士にはあんまりそういう関係性は築かれないから羨ましい。

私は男装して外見は近づけても、考え方まで男の人にはなれない。
だからせめてこの2年間だけは少しでも近づけるといいなあ。

前を歩く4人の背中を見つつ、目を伏せた。
そんな様子を後ろを歩く目線が、静かに注がれていた。
通路を歩く事数分、左側にある大き目の両開きの扉が見えて来た。
それが見えて来ると、歩いていた兄達が足を止め此方を振り向く。

💛「いよいよこの先がアリーナの会場内部な」
🌕「おおお」
💜「今回は特別に1Fの客席で見れるようにして貰ったからしっかり見とけよ?」
💛「得意そうに言ってっけど手配してくれたのマネージャーな?」
💚「お前じゃねぇーわ(笑)」
💜「うっせーなそれを言うなよ!(笑)」
🌕「あはは(笑)」

おら行くぞっ!と雑に誘導する深澤に笑いを噛み殺しながら続くメンバー。
両開きの扉の先は座席の横側、左手側に座席を見つつ1F部分の中段へ。
この席の背中側にも通路が横切っている。

阿部が説明を挟んでくれたが、この通路の真ん中辺りが当日は柵で囲まれ
重要な機材やら、カメラやらがセッティングされるらしい。
今日はまだリハーサルが行われるだけなのでそれらは置かれていない。

良い感じに中央に席を確保してくれたようだ。
中央とは言え後列の方なので座席も高くなっているから首は疲れない。

💛「此処からなら俺らも見えるし俺らからもが確認出来るだろ」
🌕「うん!凄くよく見える、兄さん達からも客席って見えるの?」
💛「ん、意外だろ?実は結構よく見えるんだわ」
💜「ステージ本番はライトも多いし、火薬使ったり爆破もあるからねー」
💙「ある程度は明るくないとファンの子達から俺らが見えないしな」
💗「うんうんホントそれ」
❤「それじゃあそろそろ俺らはリハーサル行こうか」
💛💜💗💙💚「おっすー」

めちゃくちゃ広い会場に臆する事なく楽しそうに説明してくれる兄達。
本当にLIVEが楽しみで、ファンの人達と会えるのを心待ちにしてる事が窺えた。
話に夢中になり過ぎてリハーサル開始間近になった事を宮舘が知らせると慌ただしくなる5人。

私を客席に座るよう促すと、行って来る~と手を振りながら小走りで舞台裏の方へと走って行った。
その後間を置かず開始したリハーサルは、各曲目で立つ立ち位置の最終確認と
兄達の武器、アクロバットを6人全員で揃えたり入念にチェックしていた。

後は頭上から注がれるライトの確認と、照が率先してアイディアを出したりしている姿も見れた。
6人揃っての台宙は迫力満点、それとiPhoneでの自撮り撮影の最終確認みたいなのもあり
兎に角圧倒されっぱなしのリハーサル風景だった。
この広い会場を6人の兄達が素晴らしいパフォーマンスとアクロバットで魅了する。

本番は明後日だけど、キラキラと輝く兄達の姿は既に想像に易かった。


それからリハーサルを終えた兄達と合流し、夜の21時過ぎにアリーナを出発。
滞在先のホテルでのディナーは終わっているので、マネージャーに送って貰いつつ
途中にあるコンビニまたは弁当屋、またはスーパーのどれかに立ち寄ろうという流れになった。

🌕「リハーサル物凄くカッコよかった!」
💛「おいおいあれはまだリハだぞ?」
💗「俺らの魅力はまだまだあんなもんじゃないぜ!」
💜「お前らうっせぇなあ(笑)」

マイクロバスの車内は騒がしく、私の興奮は冷めやらず
少しお疲れ気味な兄達の前で力説。

呆れているが嬉しそうに笑む照と、テンションが変わらない佐久間が反応。
暗に本番も観に来いと言ってくれてる感じがして嬉しくなった。

元気組の私とさっくんの様子を、前の方から苦笑したふっかさんが見て来る。
さっくんと私は隣同士の席に座り、通路を挟んだ同列に照兄と亮兄。
その前の座席に涼太兄さんと翔兄が座り、斜め前にふっかさんが1人で座っている。

🌕「だって本当に凄かったしカッコ良かったんですって!」
💙「ハイハイ(笑)」

両手を握り締めて力説する様を背中で感じた翔太があしらう。
そんな翔太が手にしているのは1枚のチラシ。
弁当屋の売り出し的な広告かな?

実際今車内では夕飯をどうするかの論争が起きていた。
弁当屋に寄りたいゆり組と、ラーメン推しの深澤にコンビニ派の照と佐久間。
は腹が満たせるなら何処でも良いと考えていた。

が、スーパーで材料を買って皆で作ればいいんじゃない?とも考えている。
滞在は4日もあるし、その間ずっと買うのは金銭的にも負担になるしさ。

ああでもないこうでもないと論争を続ける兄達に辟易して来たので
思い切って感じた事を兄達に言ってみる事にした。

🌕「あの、思ったんだけど・・外食は少なくして今日みたいに遅くなった時はスーパーで材料買おうよ」
💙「材料?もしかして自炊する気?」
🌕「うん・・ダメかな、折角料理作れる涼太兄さんと俺が居るんだし・・・お金も浮くよ?」
💛「なるほど、それもアリっちゃアリだな」
💚「確かに名案だね、お金もかからないし健康的だと思う」

そしたら意外にも同意を得る事に成功、宮舘も乗り気な様子でメニュー考えようと口にした。
若干残念そうな顔をしたメンバーもいたが、そこは問答無用。
マネージャーに行先を近くのスーパーにして貰い、すぐさまメニューを思案。

一応兄達が食べたい物を聞いておいた。
時間帯が遅いので胃に優しく軽めの物を念頭に置いておく。

腹が膨れれば良い、という意見が多数寄せられる。
それが一番困るんだよなーと内心思いつつ、脳内にメモ。
ガッツリ食べたい派の照、佐久間、阿部、翔太には高野豆腐で作るハンバーグまたはカツ。

ラーメン食べたかった、と肩を落としている深澤には麺の代わりに白滝を使ったラーメンを。
宮舘は大豆系に難がある為、これだけは本人が食べれそうな物を決めた。
そしてスーパーに着くと考えたレシピのもと、マネージャーが買い出しに('ω')

本当は私が行くよ、と名乗り出たかったんだが亮兄に視線だけで制され
他の兄達からもはダメ、こんな時間に未成年1人でフラフラさせられないと却下された。
ちぇっ、としょんぼりするが移動車から外の交通量をカーテンの隙間から覗く。
隙間から見た道の人通りは多く、中には歳の近そうな若者もチラホラ見える。

埼玉の夜とは違い、絶えず人が溢れ行き来している。
やっぱり都会は人の数が桁違いだな、と無意識に地元と比べていた。
地元と言ってももう帰るべき場所は無い・・私の生まれた地はこの賑やかな東京。

❤「外、行ってみたかった?」

行きたそうな顔してたのかな、不意にそう声がかけられる。
見た視線の先に居たのは、前の席に居たはずの宮舘。
・・・いつ移動したのか分からなかった。

質問に頷いて答えたを見つつ、宮舘は佐久間に頼み席を代わって貰ったのである。
佐久間は快く交代すると、何でお前となんだよ(笑)と翔太に言われながら前の席へ。
内心佐久間に謝りつつの隣へ座った宮舘、何となく右からの視線は感じつつ・・

取り留めない質問を挟んでからへ少し身を寄せ
声のトーンを抑え気味に内緒話をするみたいな感じで話した。

❤「くんは今月の頭くらいに会った目黒を覚えてる?」
🌕「・・はい、不審者と勘違いして俺が驚かせてしまった人ですよね?」
❤「うんまあその目黒から昨日電話が来てね、くんの事心配してたよ」

横に座った宮舘が話したのは、3月4日辺りにシェアハウスを訪ねた背の高い人の事。
風邪を引いて熱を出したを心配した兄達が、稽古場から1人伴って早抜けしてくれた日。

阿部と現れたのがその目黒蓮という人物。
兄達の中で1番背の高い照より数cm背が高く、容姿端麗。
なのに飾った所や鼻にかけるところもなくて好印象しかない。

怯えてしまった事を謝れたのがせめてもの救いかな。
あれ以降会う機会もなく、また自分にも立て続けに事件が起こり
長身イケメンの事を回想する時間もなかったからね(

何故その目黒の話をわざわざ宮舘がしに来たのかは分からないが
そのお陰で久し振りにその名を聞く事が出来た。

🌕「俺の事覚えててくれてるんですね、目黒さん」
❤「結構気に入ってるみたいだったからね」
🌕「・・シェアハウスを、ですか?」

と思案したら、優しく笑んだ涼太兄さんが続けた。

❤「違うよ、くんの事」
🌕「――俺の事?ですか」

正直何故気に入って貰えてるのかが分からない
この先もし見かける事があったら声かけてみて
と宮舘から言われたがよく分からない感情のまま曖昧に頷いといた。

3週間くらい前の話だが、瞬間記憶能力保持者な私には鮮明に思い出せる。
涼しげな目許と切れ長の瞳、男らしい眉。
特徴的なテクノカットはまだしてなかった目黒、それでも強烈な出会い方だったのは間違いない。

ちゃんと目線を合わせて話をしてくれる大人の人。
私が驚いたせいで気を悪くしてもおかしくないのに謝ってくれた。

年下だろうと何であろうと、対等に接し、話も聞いてくれる。
それでいて全てを読ませない不可思議な部分もある人だったと思う。
ミステリアスな?とは違うのかな、取り敢えず怖い感じはしなかったね。

そんな事を考えてるうちに買い物に行っていたマネージャーが戻った。
改めてホテルへと出発した車内、1人阿部だけは窺うような眼差しを宮舘へ向けていた。


移動車で走る事20分ちょい。
21時40分過ぎに7人はホテルへと到着した。
明日の予定をマネージャーは告げると別行動なのか電話を掛けに行く。

本番を明日に控えているからなのか、連絡やらが引っ切り無しに来てるらしい。
多忙なマネージャーを見送り、全員で9階の客室を目指しエレベーターに乗り込んだ。
昼間とは違い、眼前には横浜の夜景と眼下にはネオンサインや車のライトが流れている。

吸い込まれそうな暗い闇に、何となく身震い。
無意識に扉側に下がりつつ指先に触れたものをギュッと握り締めた。

💛「・・
🌕「え?」
💛「もしかして怖い?」

そうしながら乗る事数秒、近くに立つ兄の声が届く。
内容は怖い?ていう問いかけ、まあちょっと肝は冷えたかな。

って答えたら兄、照はくしゃりと笑み
9階に着くまでそうしてていいよ、と言うのだ。

何の事だろうと思い、視線を巡らせて恥ずかしくなったのは言うまでもない。
なんとまあ私の右手は近くに立つ照兄の腰辺りの服を握り締めていた。
無意識だから全く気にしてなかったのに、気づいた瞬間一気に恥ずかしくなったわ・・

でも正直こうしてると安心するのは事実。
ぎゅってしてしまいたくなるけど、それだけはギリギリで我慢している。
何となくそうするのはダメな気がしていた。
別段変わってしまうものなど何も無いはずなのにね・・?

暫くしてエレベーターは9階に到着。
チンと到着音が響き、両開きの扉が開いて兄達も下りる。
その流れに紛れては照の上着から手を離した。

❤「それじゃあ誰の部屋に集まろう?」
💗「翔太の部屋にする?1人部屋だしさ」
💜「それ賛成~」
💙「えー・・まあ良いけど散らかすなよな」
💛「おし、そうと決まれば荷物だけ置いて翔太の部屋集合な」

はーい、と声を揃える6人。
荷物を置きに戻り、準備出来次第各々で翔太の部屋に集まる流れとなった。

💜「もう上着は握らなくて平気?」

そんな問いを突然歩きながらぶっ込んだのは深澤。
問いの内容からして、エレベーターのアレを見てたのだとすぐ分かった。
思わず深澤の顔を見れば、楽しんでる目の中に僅かな真剣さを垣間見つけてしまった。

きっとこれは、純粋にエレベーターの中での様子を心配したからこその問い。
そう思うように言い聞かせ、心配してくれてありがとうふっかさんと答えると

💜「なんだ俺の上着は握ってくれないのか~」
🌕「???いや、その、もう外も見えないですし?」
💜「ちぇっ、やっぱ照は役得だなあ」

よく分からない事をぼやく傍ら、私の頭をくしゃくしゃと撫でるのだった。