YouTubeSpaceTokyoでの記者会見を終え、帰宅した頃既には就寝していた。
いつもなら例え翌日に講義があっても23時近くまで起きて待っていた末弟。
しかし今夜に限っては既に眠っていた。
まあそういう日があってもおかしくはないんだろう・・
だがその僅かな違いが何となく照の中で不思議な感覚を芽生えさせた。
という訳で、帰宅した時に頭に浮かべた事に従い
皆が個室へ戻る中、こっそりの個室を覗いてみる事とした。
個室には鍵がついていない。
静かに開ければ気づかれずに済むはず・・・
カチャッと慎重に個室のドアノブを回し、ドアを内側に30p程押した。
覗き込んだ室内は薄暗く、足元を照らすライトだけが付いている。
そのまま体を滑り込ませ足音を立てないように個室の中を進む。
ちゃんと眠れてるのか気掛かりだったが、聞こえて来るのは規則正しい寝息。
どうやら魘されたりしてる風は無く、安眠出来てる様子に照はホッとした。
YouTube記者会見の感想は明日にでも本人の声で聞けるといいが・・
って、明日も普通に朝顔合わすし・・夜だって稽古が終われば家で顔見れるよな?
何故そう危惧したのか分からない謎の感覚が照に焦燥感を植え付けた。
そんな際ふと見下ろしたの目尻が濡れている事に気づく。
薄暗い中だから僅かな反射できらりと光るものに気づいた感じだ。
少し、心細かったんだろうか?と感じ取る照。
身を屈め、右手の親指の腹で涙の跡を拭ってやる。
起きる気配はなく少しだけ眼下のが身じろいだ。
その様子を目を細めて見つめ、頭を撫でてからの個室を後にした。
折角安眠出来ているのを起こすような真似はしたくない。
後日、この夜と会話出来なかった事に対し全員が悔いる事件が起こるとは誰も思いもしなかった。
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2018年3月21日
YouTubeで記者会見を終えた翌日。
本日はYouTubeに作られたジャニーズJrチャンネルがOPENする日だ。
Snow Manが担当する曜日は水曜、そして今日がその水曜日。
今回は最初の挨拶動画と、企画会議の様子がUpされる。
その動画は昨日の会見後に撮ったものが更新される事になっている。
更新されるのは当日の17時が目安、その時間帯ならも見られるだろう。
今朝は全員が早起きだ、稽古も大詰めだし裏で同時進行の撮影もそろそろ始まる。
兎に角多忙を極めていた。
「はよー・・」
「あれ、珍しく早いね佐久間」
日が昇った後の6時半、寝ぼけ眼の人物がリビングに顔を出した。
逸早くそこに気づいたメンバーが、キッチンに立った位置から声を掛ける。
声を掛けられたのは寝坊しがちな次男、佐久間。
声を掛けられ、キッチンの方を見やると
そこには安定の宮舘を見つけた。
パッと笑顔になる佐久間、4男にあたる宮舘の方へニコニコと歩み寄る。
「舘さまおはよー、今朝も早いねぇ・・ちゃんと疲れは取れてる?」
ここ最近は殆ど仕事と稽古にレッスンで休む間もない日々が続いている。
基本弱音を吐かないSnow Manだが、中でも宮舘は特に弱音を吐かないストイックな男だ。
そこを素直に凄いと思うし尊敬してやまないのだが
時々こう心配になる為、顔を合わせた時は極力近づいてよく見るようにしている。
宮舘も宮舘で、そんな佐久間の気遣いに気づいており
聞かれた際は正直に今の調子を答えるようにはしていた。
トコトコと歩み寄り、今自分の右側から見上げるようにして聞いてくる次兄に微笑み
「無理はしてないよ、それに睡眠時間が少ないのは皆同じだからね」
「それもそうだ(笑)お仕事たくさん頂けるのって有り難い事だよねー」
「そうだね」
「調子悪くしちゃったら皆言うようにしてるし、今日も頑張るかー!」
「うん、頑張る事と無理する事は違うからね」
「貴族宮舘からのお言葉・・!」
自分より小さな次兄の頭をよしよしと撫でる年下宮舘。
常に元気いっぱいでエネルギーの塊な佐久間を見ていると自然と元気になれる。
朝から元気の注入をされたような気持ちになるが、毎度の事でもある。
元気というエネルギーを配りに回ってるみたいな感じだ。
5年前またはそれ以前の佐久間からは想像に難い現在。
ミスノの頃はもっと尖がってたというか、無口だったと思う。
あの頃は皆キャラを確立させる為に手探り状態だったからね・・・
真田や野澤の陰に隠れないよう、どう振舞ったら記憶に残る人間になれるのかとかを。
ただただがむしゃらに駆け抜けて来た20代前半。
それが今では1人1人がキャラを確立させ、立ち位置も居場所も見つけられた。
2人とは別々の道に進む事になったが、互いに選んだ道で戦って目指すはてっぺんのみ。
ミネラルウォーターを飲み、リビングの方へ歩き出した佐久間を見送りつつ思案した宮舘でした。
続いて起きて来たのは阿部と深澤、阿部は兎も角深澤が早起きなのは佐久間に次いで驚く事案。
しかも仕度も終えていて、後は朝メシ食って歯を磨いて行くだけ!まで仕上がっている。
「2人ともおはよう」(舘さま
「舘さんおはよ、今日も早いねー」(阿部
「ふああぁあ〜・・・舘おはよ」(ふっか
「あー!2人とも寝坊か!?」(佐久間
「佐久間煩い」(阿部
朝食の用意をする傍ら入って来た阿部と深澤へ挨拶した宮舘。
そんな宮舘に爽やかに応える阿部と、デカイ欠伸をしながら応える深澤。
自分や阿部以外の4人は基本的に朝が弱い為、この欠伸にも納得だ。
眠気覚ましにコーヒーでも淹れてあげようと思った宮舘。
目覚めもバッチリな阿部は、ウザ絡みをして来る佐久間の対応を辛辣に開始した。
「ふっか」
「んー?なぁに舘」
あべさくはそのままにし、一旦IHを止めてからぽやぽやして眠そうな深澤を呼ぶ。
呼ばれた深澤、まだ脳が寝てるのだろうか素直に歩いて来た。
薄目を開けただけの怪しい足取りで近くまで来た深澤をキャッチ。
両腕の辺りを両手で支えて止め、その手にカップを持たせた。
何かを持たされた事に気づいた感じの深澤に苦笑した後、しっかり伝える。
「眠気覚ましにコーヒー淹れてあげるからちゃんと持って?」
「おお・・悪いね舘、ありがと」
「耐熱カップだから多分熱くはないと思うけど念の為しっかり持ち手を握っててよ?」
「はーい」
眠さで両目が糸みたいな深澤に笑いつつ、豆から挽いたコーヒーを注ぎ始める。
落とさないかだけが心配で、深澤の持つカップの底を空いた手で宮舘も支えつつ淹れた。
ふんわりと漂うコーヒーの良い香り、その香りで薄目を開けた深澤は一言。
「わあー・・何コレ舘と俺、朝のひと時?」
「モーニングコーヒーみたいな?」
薄目を開けたら目の前で俺の手元気にしながら一緒にカップ支えてくれる舘が居たよ〜
どこぞのカップルみたいな構図だなあとか客観的に思ってしまった深澤。
それに対する宮舘の返しがまた噛み合ってなくて笑える。
誰も突っ込まない不思議な空間で感じた総意を阿部が代弁した。
「2人してズレてんなあ」(阿部
まあそんなこんなで目覚めのコーヒーを入れて貰った深澤。
朝メシを待つ為に阿部と佐久間の居るリビングへと歩いて行った。
今の時刻、6時45分。
理想としては8時くらいに此処を出発出来るのが望ましい。
残り2人、渡辺と岩本が起きて来るのを朝食作りをしつつ宮舘は待った。
今日から大学院へ復帰するの事も気になるが、無理矢理起こす事は躊躇われる。
彼の講義は今までのを見てる限り11時開始なのが多い。
こんな早く起こしても逆に困るかもしれないし、彼には彼のルーティンがあるしね。
その頃、照は目を覚まし部屋着から外出着へと着替えを済ましていた。
7時前に起きれた事にホッとしつつ、個室のドアを開く。
何となく話し声も聞こえるので他のメンバーは既に起きているのだろう。
朝は弱いがそれなりに早い段階で起きれていたから、今回は遅い方になる。
寝つきは良い方だし睡眠も深い方だから目覚めは良かった。
荷物を持ち廊下へ出て、通り掛かるの個室前。
昨夜睫毛を濡らしながら寝ていた姿を思い出し、もう一度だけ個室の中を覗いてみる。
カーテンが閉まったままらしく、室内は薄暗い。
つまりまだ夢の中と言う事になる。
「・・・よく寝てる?」
「ん、そうっぽい」
「そっか、にしてもお前マメだな」
「いや別にそんな事ないよ、ちょっと気になっただけ」
「末っ子だったお前も立派に兄ちゃんやってんなあ」
「別にいい・・・・!!!!??」
顔を少し室内に入れて様子見をし、顔を引っ込めてドアを閉めたタイミングで問われた。
あまりに自然だったので問いに答え、返す言葉にも答えたがふと気づいた。
さっきまで誰も居なかったよな?と。
違和感を感じつつ続くやり取り、別に良いだろと言いかけた時漸く気づいた。
いつの間にか背後に渡辺が居たのである。
しかもニマニマとした笑みを浮かべて(この顔の翔太は5歳児)
1つ上とは思えないくらい行動やリアクションが子供っぽいのだ。
今も何やら新しい玩具を見つけた子供のような表情をしている。
「んだよ翔太か」
「何だそのリアクションはーてか、照はくんの事気になってるの?」
(偶にド直球な5歳児)
「は??そりゃあまあ末っ子だしな、それに大学院での事故もあったりで兄ちゃんとしては気にするだろ」
「まあ確かに、今日から復帰だもんなー・・俺も心配はしてる」
話ながらもニマニマが止まらない翔太(
何故そんなにもニマニマしてるのかは敢えて触れない事にした。
自然な流れて話を大学院での事故へ変えると、翔太も実は心配してると言う事を明かす。
未だ犯人の目的も知れない中の復帰だ、根本的な解決もしてない。
そんな所へまた行かせなくてはならない、でも自分達の仕事柄見守る事しか出来ないのだ。
自身から助けを乞われればいつでも動く気持ちでいるものの・・・
その本人が全く頼ろうとしないんだよなー・・・
助けてやりたいし力になりたいのに何も出来ないばかりか
仕事を放る度胸も今の自分達にはなく、全て自身に丸投げ状態だった。
こんなんでの兄貴だと胸張って言えるのか?と照は自問自答していた。
「照と翔太で最後だね、おはよう」(舘さま
「皆早いじゃーん、やる気に溢れてんね?」(佐久間
「今日からは撮影の方も打ち合わせだったりトレーニングも始まるからなー」(翔太
「だねぇ、気合入れないとだわ」(ふっか
リビングに入るや宮舘に声を掛けられ、おはようと返す照と渡辺。
予感した通り今朝は自分達がラスト組だった。
あの佐久間が自分達より早起きだとは・・・今日は雨かな?と内心思う2人。
兄弟らの話にも出たように、今日からは更にスケジュールがキツキツになる。
再来月公開予定の映画『ラスト・ホールド』に自分達Snow Manが全員出演するのだ。
主演は先輩ジャニーズ、A.B.C-Zの塚田僚一。
この映画で初めてSnow Manが挑戦する事になるボルダリングを主軸に物語は展開する。
一度ミスノ時代に主演で映画に出演した事のあるSnow Man。
先輩と一緒というのは初めて、同じく初挑戦のボルダリングのトレーニングも開始間近。
プラス歌舞伎の稽古にコンサート打ち合わせ等もスケジュールで組まれ
ホントに気合を入れないとダメなくらい多忙を極めていた。
全員が揃ったタイミングで料理が並べられ、以外の6人で朝ご飯を済ませた。
出発する頃の8時を回ってもは下りて来ず、見送られない事を残念がったが
明日見送って貰えるように楽しみにするかー、と話し合いシェアハウスを出発した。
「・・行ってきます」(岩本
いつもの通りに照が最後に出て、一旦振り向く。
振り向いた先でニコニコと佇んでいたの頭を撫でて行くのがルーティンだったが
今日はそれもなく、呟いた行ってきますに行ってらっしゃいが返されないまま扉を閉めた。