1人シェアハウスで17時を待っていた。
その開始5分前か3分前くらいにLINEの受信音が鳴った。
¨お前も俺らがステージに立つ姿、しっかり見届けろよ?¨
開いたら飛び込んで来た照からのメッセージ。
今から返信しても見れるのは本番後になるだろうから
しっかり見届けます、兄さん達のチャンネルが楽しみですと返信して置いた。
そして時刻は17時を指し、まもなく開始しますと表示されていた画面がパッと切り替わり
YouTubeと書かれた文字が目立つスタイリッシュな場所が映し出された。
画面の左右端にもYouTubeと書かれた赤と白の箱が重ねて置かれている。
沢山の記者達らしき人影が手前にチラチラと見えた。
右の方に司会者っぽいブースと人影が在り、挨拶と集まった記者達への挨拶が行われ
今回の記者会見の主旨やらが軽く説明された後、いよいよ出演者が読み上げられる。
兄達は何番目に呼ばれるんだろう、と画面を食い入るように眺めた。
「Snow Man」
そしたらなんとトップバッターで兄達のグループが呼ばれる。
すぐ現れる兄達、先頭を堂々と歩いてくるのは照だ。
「えー・・Snow Manです、お足元の悪い中有難うございます。」
今回の衣装と思しきお揃いのトレーニングウェアに身を包んでいる6人。
本日は宜しくお願いします、と照を中心に揃って一礼。
不意に見ていたは久し振りに既視感に駆られた。
ジャージ・・いや、トレーニングウェア・・・
以前も何処かで見たような感覚、何処で見たのかがまだハッキリしなくて気持ち悪い。
相変わらずこの既視感は、一瞬しか感じれない為余韻が薄い。
何だろう?と思ってる間に何に対して既視感を感じたのかが抜け落ちる。
瞬間記憶能力を持っているのに覚えてられる事と覚えておけない事があるのだ。
まあそれは兎も角出演グループが次々に紹介され、ステージに登場。
初めて見聞きするグループが残り4組登場し、兄達とは違うグループの人がMCとして進行役を担った。
「それではここで各グループに一言コメントを頂きたいと思います」
MCの人は田中樹という名前でSixTONESに所属しているらしい。
強面だけどMCを任されるくらいだから、信頼されてるんだろうな。
感心しながら見守る間も、記者会見は進み各グループが意気込みを述べて行き
指名を受けたSnow Manを代表し、照が挨拶のコメントをし始めた。
「Snow Manはですね、僕みたいに体脂肪率4%のやつもいれば
合格率4%の気象予報士のメンバーが居たりと結構個性が強いメンバーが揃っているので
それぞれの個性を活かして様々な事にチャレンジして行きたいなと思っています」
代表して挨拶をする照さんは堂々としていて、見ている側も安心して見続けられた。
例えに出された亮兄さんも、家に居る時と変わらない爽やかな笑みで手を振っている。
そして残り3グループの挨拶コメントが終わり
MCの田中に戻され、アップする動画は各グループが企画会議を行い
メンバー同士で意見を出し合い、どんな内容にするのかを決めて行くのだと説明が成された。
更に企画会議の様子も各グループが担当する曜日の更新日にアップされるとの事。
これはこれで楽しみ過ぎますね?
ワクワクしながら画面の中に居る兄達を見つめ、早くも更新日が待ち遠しくなった。
そして田中の進行により、次は各グループのPRと個人の特技を披露する場が用意された。
何だか見ているこっちもドキドキして来たぞ・・
「是非これを機に皆さんに知って頂こうかなという事で」
「――は〜い!どうも改めましてSnow Manです!」
しかも兄達がトップバッターだった。
今度は深澤の仕切りで前へ出て来る6人。
1人ずつ自己紹介をして行くとの事。
「アニメオタクの佐久間大介でーす!お願いします!」
「渡辺翔太です、お願いします!」
「体脂肪率4%の岩本照です、お願いします!」
ふあ・・なんか可愛いな?
深澤の¨どうぞ¨に続けて挨拶を言って行く兄達は何やら総じて可愛らしい。
「宮舘涼太です、お願いします!」
「気象予報士の阿部です、宜しくお願いします!」
「滝沢秀明です、宜しくお願いします」
うん?
「いや違う違う違う違う」(阿部
「っていうのが1つの括りでパッケージがあるんです」(ふっか
あまりのテンポの良さに、深澤の小ボケを聞き逃しそうになった。
珍しく阿部がキメ顔の深澤にツッコミを入れている。
と言うか見ているも阿部と同じく突っ込みそうになるくらいクスッとしてしまった。
「と言う訳でね、こういう個性が強いグループなんです」(ふっか
「ふっか自分の名前(笑)」(阿部
「あ、そうだ、深沢辰哉っていいますあっぶない危ない」(ふっか
どうやら素で自分の名前を言い忘れてたらしい深澤。
このゆるふわな感じもSnow Manらしさかもしれない。
次にメンバー個人の特技の紹介に移り、佐久間のアクロバットオタ芸はキレッキレで
阿部の円周率100桁暗記を披露する時は後ろで苦笑する翔太に目が行った(笑)
勿論途中で深澤にカットされてしまうのも打ち合わせしたのだろう。
カットしつつも阿部が持つ世界遺産検定にも触れ、それを活かした動画も撮れたらなと締め括り
いよいよ得意とするアクロバットを披露する事になり、代表して照が前へ出て来た。
「いきまーす」
お願いします、と促され前へ出て来る照。
アクロバットをする兄達はまだあまり見た事がないので
自身もドキドキしながらその瞬間を待った。
他のメンバーは少し後方に下がり、軽く腕まくりした照がその場で跳躍。
膝を軽く曲げてくるんと見事に後方一回転をキメたのである。
その瞬間のカメラのフラッシュとシャッター音が凄かった(笑)
「はいっ!」
と着地した後の笑顔がクシャッとしてて素直に可愛いと思ってしまった。
強面からのあの笑顔ですよ、これは相手の心を鷲掴みですね(誰
「こんな感じでですね個性豊かな6人なので、個性を活かした動画や
面白いコンテンツをいっぱいアップして行きたいと思うので皆さん是非見て下さいお願いしまーす」(ふっか
「頑張ります!」(阿部
無事持ち時間を使い切り、6人の個性と特技を紹介し終えた6人の兄達。
他4グループもそれぞれが個性的なPRを披露し、記者会見も終わりが近づいて来た。
全グループを代表して最後の挨拶をSixTONESのジェシーが任され
皆が見守る中堂々と挨拶を口にして、記者会見は幕を閉じた。
1時間があっという間に感じるくらい早く過ぎた。
瞬間記憶能力が発揮され、5グループ全ての名前と個人名に容姿が脳内に記憶される。
PRも特技披露もしっかりしていたし自分と歳が近いとは思えないくらいしっかりした人達ばかり。
彼らを含めたジャニーズ達全てが生き残る為、デビューする為と切磋琢磨しているんだろう。
兄達Snow Manは、6人全員がアクロバットをこなす職人集団・・とWikipediaに書かれていたっけな
ジャニーズはバク転やアクロバットが出来て当たり前だと思ってたけどそうでもないのね?
出来る子らも居るが、そうでないジャニーズも居るらしい。
そう考えるとグループ全員がアクロバットをこなす兄さん達って凄すぎだ・・
生放送中のコメントにも、兄達を絶賛するコメントが溢れてて誇らしくなった。
後はSixTONESに対するコメントも多かったね。
興奮冷めやらぬは、iPhoneを手にLINEアプリを起動しグループLINEに言葉を残した。
¨皆お疲れ様!堂々とした記者会見を見て兄さん達の居るSnow Manが俺も大好きになりました¨
これからは1家族として弟としても、兄さん達とSnow Manを応援して行きたいと思う。
そう文を締め括り、送信をタップした。
飾らずに正直に自身の気持ちを感じたままに伝えたつもり。
それからふと時間的に夕飯を作らねばならないなと感じ、開放的にしてある部屋から出た。
記者会見を終えてからのご飯だから沢山作った方が良いかな。
兄達の嫌いな食材は以前聞いたから把握済みだ。
自身も明日からは大学院へ復帰する事になっている為作るなら今やるべきだろう。
¨〜見てくれてありがとなー!¨(佐久間
階段からではなくエレベーターを使って下まで降りた時、受信音が鳴った。
兄達からの返信だというのはタイミング的に予想済みですぐにiPhoneで確認。
先ず届いたのは佐久間からのメッセージ。
文面の言葉を言いながらニコニコしてる笑顔が想像出来る。
そのまま眺めていると、タイミング良く次のメッセージが表示された。
¨くんにそう言って貰えるのが一番嬉しいよ¨(舘さま
¨ありがとうくん!もっと頑張れそうだわ(笑)¨(翔太
これを皮切りに宮舘と翔太からもメッセージが届き
¨くんも視聴お疲れ様、もっともっと虜にしてやるから楽しみにしててね¨(阿部
¨有り難う、お前ももうこのシェアハウス来たからには家族の一員だからな末っ子として応援頼むぞー¨(ふっか
¨お前からの応援がどんなものより俺らの支えになるよ、ありがとな¨(岩本
クスッとしてしまうメッセージや、心に響くメッセージも届いた。
兄達からのメッセージは、読むだけで自然と笑顔にさせてくれる
境遇は自分と似通っているだろうに・・どうしたらこんな風な人間になれるのだろう。
施設に出され、生みの親とはもう会えないというのに。
――・・・・―
私は良いのだ、2度と会えなくても。
あの伯父にされた事も2度と思い出したくないのに意識を向ければ簡単に甦る。
2年前に受けた心の傷は塞がってはおらず、少しの刺激で簡単に広がるのだ
それから無意識に流れる冷たいもの。
目を向けずとも触りを脳裏にチラつかせただけで泣ける。
どうしてこうなるのかすら考えた事は無い。
それならもう記憶を取り出す事を止めよう
ぼやけて思い出せないならそのままにしておけば良かった。
けどそう思うのは既に遅い。
私は死ぬまでこの全ての記憶と共に生きるのだ。
宛ら拷問のような脳裏だなと嗤った。
伯父の事についての記憶が過りそうになる度
の顔からは表情が一気に失せ、能面のような顔になり
豊かになりつつあった感情すらも消えるのだった。
そしてこの夜、記者会見後の兄達はそのまま企画会議の撮影に入る為帰宅出来ず
夕飯は作らなくても良いよとメッセージが届けられ、明日に備えは個室へと戻る事となった。
せめて顔を見て感想を伝えたかったけど、仕方ない。
何度かこの¨仕方ない¨を頭に浮かべた気がする。
でも本当にそう思うしかない状況だから・・・仕方ないよね。
ならばと前回好評だったポトフを作り、玄関の鍵を掛け
今のうちにと風呂も簡単に済ませ、静かなシェアハウスの中自分の個室へ入った。
ドアは閉めて室内の窓だけは少し開けておく。
よく押し入れや風呂場に閉じ込められた名残で、密閉された場所に居る事が出来ないのだ。
ルームウェアに着替え、早々に明日の支度を済ませておき
余計な事を考えないようにiPodのイヤホンを耳に突っ込んで寝る事とした。
寂しいとか考えるのは烏滸がましいとすら思う。
毎日仕事と稽古に疲れてる兄達に、甘ったれた事は言えない・・
明日から怖いけど大学院にも通わなくてはならない。
その事についても阿部や兄達と話したかった。
兄達と話す事で安心しながら寝たかった。
・・・もう17になるし子供じゃないもんな・・自分の事くらい自分で守らないと。
何とか布団の中で自分を叱咤し、言い聞かせ
リモコンのスイッチを押して部屋の電気を消した。
6人が帰宅したのは夜の22時半。
肉体的には疲れていたが、新しく始まる挑戦と試みにワクワクが収まらず
兎に角始められる事から始めたい気持ちでいっぱいだ。
先ずは24日から始まるジャニーズJr祭りと単独を成功させることを考えたい。
この時点で自撮りを試す提案は本決まりになっていた。
色々やんややんや話しながら帰宅した6人、しかし家の灯りが付いていない事に気づく。
「もう寝ちゃったかー」(佐久間
「まあしょうがないよ、くんも明日から大学院だしね」(阿部
「明日に備えて寝たんだろうね彼」(翔太
「くんに出迎えて欲しかったけどそれならしょうがないよな」(佐久間
「ん?何か良い匂いする」(岩本
いつもならただいまと帰宅した数分後に、嬉しそうな顔をしたが出迎えてくれていた。
本人も見送りと出迎えには拘ってたみたいだったから照的にも意外だった。
少し部屋ん中覗いてみるかな・・?
と思いつつもキッチンから漂う良い香りに足を止める。
照の言葉で他のメンバーも足を止め、ホントだと佐久間が騒ぎ始めた。
まあ声を張った瞬間に阿部と翔太に口を塞がれていたがな(少しは学べよ・・笑
取り敢えずキッチンへ向かい、ポトフに気づいた宮舘が再加熱をスタート。
ポトフが温まるまでの間、照達はもう一度YouTubeでやりたい事の話を煮詰め始めた。