また見学に呼びたいと思ってる、と滝沢は話した。
言わずとも分かる・・滝沢はをこの世界に入れようとしてるのだと。
どうなるかは分からない、ただ言えるのは未来を決めるのは自身だと言う事。
自分達が反対してもが望めば道は拓かれつつある。
万一道が合わさったら・・・その時は先輩として厳しく接する事になると思う。
生半可な気持ちなら強く反対するのも辞さないつもりだ。
この世界の厳しさは十分知っているし、事務所に入ったからと言って皆がデビュー出来る訳じゃない。
しかしとんでもない話を聞かされたものだ・・・
これ・・・皆に話したら何人かは猛反対するだろな。
照にはその反対しそうなメンバーは何人か予想がついていた。
の事をよく考えてる奴、業界の厳しさをよく知る奴は間違いなく反対する。
とても昼飯を食う所ではなくなった照は、携帯食販売機でカロリーメイトだけ購入した。
話し込んだせいで休憩時間は残り30分あるか無いかに減っている。
記者会見が明日だって時にとんでもない話をされたもんだなー・・・
少しだけ肩を下げて深い息を吐き出し
気持ちを切り替えるべく、両頬をパチンと叩き
使用しているレッスン場へと戻って行った。
+++
最後の最終確認を終えて照達がシェアハウスに帰宅したのは夕方の16時。
送迎車から降り、事務所の人間に挨拶してから中に入るまでの間
思い切って照は滝沢にされた話を皆にする事を決めた。
と言っても外で話しをするのはある意味目立つ。
なのでこう言うだけに留めた。
「あのさ、部屋に荷物置いたらちと1階のレッスン場に集合して欲しい」(岩本
「え?まだ確認する事とかあった?」(阿部
「・・いや、結構大事な話を皆にしときたいから」(岩本
「それってリビングじゃ出来ない話?」(舘さま
「に聞かれない所で話したい」(岩本
阿部は少し意外そうにというか驚いた目を向けて来たが
後ろの方に居た佐久間の言葉で他のメンバーも同意してくれた。
「分かった、照たってのお願いなら聞かなきゃな」(佐久間
「そうだなー、何たってウチのエースでリーダーの照が言ってるし了解」(翔太
「じゃあ荷物置きに行くかー」(ふっか
岩本照が言うなら〜ていう謎のワードに助けられ
あまり訝しむ反応をされずに済み、6人は末っ子の待つシェアハウスに入った。
玄関に入ると久々に佐久間が声を張り、タダイマー!と口にした。
そしたら声を聞きつけた末っ子、がリビングから現れたのである。
これは中入ってから話そうとしなくて良かったな・・と照は胸を撫で下ろした。
「皆さんお帰りなさい!」
「おう、ただいま」(岩本
「もしかしてずっとリビングに居たの?」(阿部
「はい!その・・俺も出来る事やりたいと思って、今夜から夕飯は俺も作ります!」
「マジで!!!?」(佐久間
「ホントに?くん料理出来るんだな、すげーー!」(翔太
「何それ凄い楽しみなんだけど!」(ふっか
すっかり習慣になったのか、応えながら自然と照はの頭に手を乗せて撫でる。
佐久間もそうだけど、何かこう置きやすいんだよね(
出迎えた末っ子は満面の笑みで俺達に出来る事を挙げた。
思わぬ提案に素直に驚かされた俺達。
でもまあ前作っといてくれたポトフはめっちゃ美味かったもんな。
つい数分前まで全員深刻な顔になってたのに今は全員が笑顔。
そこに居るだけで笑顔にさせれるはやっぱ凄いわ。
良い感じに潤滑油みたいな?和ませてくれる存在だなと感じる。
笑わせてくれるのとも、楽しませてくれるのとも違う。
んー・・自然体で居られるていうか、素になる感じ?
そういうのを出しても変じゃない空気にしちゃう存在、かな。
「食材が足りたみたいで良かった」(舘さま
わいわいする中で1人冷静に宮舘がへ笑む。
あの感じからするに、宮舘だけはが夕飯を作ろうとしてたのを予期していたんだろう。
料理が作れる者同士何か通ずる物があったのかもしれない。
「お気遣いありがとうございます宮舘さん」
「いいんだよ、それと1つお願いしても良いかなくん」
「はい何でしょうか」
「宮舘さんだと堅苦しいから、そろそろ俺の事を名前で呼んで欲しいな」
「!!!狡い舘さん!!」(佐久間
まさかの名前呼びをにお願いした宮舘に瞬時にザワつく5人。
思ったままに叫んだ佐久間が少し羨ましい。
てか何の流れで名前呼びを頼んだんだ?by照
佐久間が狡いと叫んだ事では目を点にすると首を傾げている。
おいおい可愛いな末っ子よ・・・てか此処で立ち話してる場合じゃなかったわ
「悪い、ちょっと俺ら明日の事で少しだけ話して来るから待っててな?」(岩本
「あ!そうでやんした!くん1人になっちゃうけど平気か?」(佐久間
「???はい・・あ、その間家の中を見て回っても良いですか?」
「あー、まだ全部見た事ないんだっけ」(ふっか
宮舘の肩を掴みながら話を止め、話ししなきゃだったのを思い出した照。
名前呼びのチャンスを逸した宮舘だったが特に意に介してないようだった。
口早に別件終わらせて来ると説明を軽くし
不思議そうだが頷いたのを確認して、照達は先に荷物を置きにそれぞれの個室へ向かった。
口を挟む間もなく兄達は個室へ荷物を置きに行ってしまいそう。
咄嗟に何なら、と頭に浮かんだ事を口にした。
行きかけた兄達の中で最初に反応したのは深澤。
機会があったらシェアハウスの探検でもしてみようかなとは思った事もある。
一度見れば覚えてしまうし、一通りハウス内にはどんな部屋があるのか見ておくのも良さそう。
というか今が探検しつつ全部屋見れるチャンス?
「いいんじゃない?俺らは少し込み入った話になりそうだからその間見て来るのもいいかもよ」(舘さま
「それもそうか、じゃあ今夜は1Fの左側のレッスン場以外なら見て来ても平気よ」(ふっか
「俺らの部屋もまあ・・覗くくらいなら?」(翔太
「うんうん、あ、照の部屋にピアノあるから興味があったら触ってみるのもいいかもね」(阿部
「ありがとうございます!」
思い切って聞いてみたら意外とすんなり許可して貰った。
レッスン場へ向かう兄達を見送り作戦を練る、既に2階の配置はもう完璧に記憶している。
私の個室の右側にある洗面所&お風呂の右には何もなく
壁面伝いに真後ろへ向かうと、相向かいの列側に繋がっている。
わざわざ1階の階段から上り直さずとも2階の廊下を進めば何れは戻れるのだ。
皆を待つ間端から端まで2階を歩いてみる。
トレーニングルームとかあったのね、凄い色々道具が置かれていた。
の個室がある列の端はトレーニングルームと、反対側の端、シアタールーム専用。
その奥には何もない、シアタールームなんて小規模な映画館並みの広さがある。
トレーニングルームも負けない、私の個室が2つくらい収まりそうな広さが設けてあった。
すんごいなあ・・・後はもう広すぎる物置き場だけの部屋とかさ
豪邸だから当たり前かもしれないけど1Fにも水回りがある、バストイレに洗面所。
養父母宅もかなり豪邸だったが、このシェアハウスもそこと同等に立派な家だ。
その他リビング以外にも皆で集まれそうな空間の部屋も1Fには完備されている。
兄達の話し合い?とやらはその部屋ではなく、レッスン場で行われた。
何の話かは部外者の私が気にする必要はない。
さてお楽しみの皆の個室訪問!
中を覗くだけなら良いと言って貰えたからドア開けて入り口から見るだけにしとこう。
先ず足を向けたのは正面から見て左側。
唯一触っても良い許可が出た個室、照の所は一番最後に回る。
左側手前、その部屋のドアは深い緑色をしていた。
一応ノックをしてからノブを下げ、奥へと押し開く。
中を覗いてみて先ず思ったのは¨これ阿部先輩の個室だ¨
室内の本棚にみっちり並んだ参考書やクイズの本。
物は少ないが多分見えない部分にきちっと収納してありそうな感じ。
この部屋の物を動かしたら最後、阿部先輩にすぐ見破られて怒られる未来しか見えない。
とまあこの辺にして次行こう次。
そっと阿部先輩の個室のドアを閉め、右横のドアへ向かう。
今度のドアは紫色をしたドアだ、分かり易いように色分けしてたのかな。
同じようにノックしてからドアを開ける。
('ω')これは・・・・汚い
さっきの阿部先輩の個室とはえらい違いだね・・
フローリングは綺麗なんだが、テーブルの上が中々に雑多。
色んな紙とか筆記用具が散らばり、失くし物したら何ヶ月かは出て来なさそうな(辛辣
続いては真っ赤なドア!凄いインパクトだな真っ赤とか・・・
此方もノックしてから開けて行くと、ムスク系の少し濃密な石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。
上品でいて高貴な香りだ・・これまたさっきの部屋とは差が凄い。
そして誰の部屋なのかも判明した。
阿部先輩の個室と同じくスタイリッシュな色の本棚が在り
その中には色々なジャンルの料理の本が並べられていた。
兄達の中で料理の本を読むなんて唯一人しかいない、宮舘さんだこの部屋・・
上品な気持ち(何それ)でドアを閉じ
左側最後の個室、爽やかな青のドアの前に立つ。
ノックしてから中をチラ見、今度は何だろ・・・ベルガモットの柑橘系の匂いがした。
いざ開けてみて驚いた、どの部屋よりも片付いている。
しかも化粧品が凄い数備えられてて、デパ地下かと思った(発想が庶民
この部屋の主も、阿部先輩とはまた違ったタイプの几帳面さを感じる。
勝手に触ったな?とかもすぐバレそうだな←偏見
そして青いドアの右に、例のシアタールーム。
このまま廊下を進むと右にカーブしているのでそのまま進む。
そして右側の個室が並ぶ前に繋がるのだ、なのでトレーニングルームから開始する並び。
トレーニングルームの隣にあるのは桃色のドア、何となく色から部屋の主が想像出来た。
ノックを済まし、ドアを開けて中を見る・・・・これは・・・
「わお・・・」
思わずそう口から漏れるくらい圧倒された私。
これは言わずもアニメとかのポスターに、キャラクターグッズだよね?
フィギュアってああいうやつなのね、初めて本物見た。
本来の使用目的な筈の本棚には、本ではなくDVDとかCD-ROM等が挿してある。
多分テレビで流れたアニメとかを録画して、好きに編集したやつを焼いたんだろう。
これはマニアックな保存の仕方・・・・
ただもまだ16歳、アニメには少し興味もあった。
触れる機会が無かっただけでゲームにだって興味はある。
今度佐久間さんに色々教えて貰おうかな。
とはこの部屋の主、佐久間に聞いてみたいなと思いドアを閉めた。
次はいよいよ照さんの個室。
隣同士なのに今日まで一度も入った事がない、しかもピアノがある。
照さんが弾いてた音は初日聴こえてた、けど弾いてる所は見てない・・
いつか見せて貰いたいなあ・・と思いながらノックし、黄色いドアを開ける。
入ってみて意外と整理された空間だなと感心した。
白い床に敷かれた黒いベルベットのようなラグ。
壁際には中サイズの四つ足テーブル、その上には色んな種類のお守りと御朱印長が飾られている。
そう言えば、よく手首に数珠に似たアクセを付けてたっけな。
本棚には雑誌やトレーニング関連の本が並んでいた。
「これが元々私の部屋に置かれてたピアノか・・」
左の壁際に置かれていたピアノを見つける。
ピアノはすぐ見つかった、私が初めてここに来た日も照さんは此処に座って弾いてたんだね。
椅子の高さは驚く程高くなっておらず、私が座っても足は床に届いた。
これなら足元のペダルみたいなやつも踏める。
蓋を開き鍵盤に両手を添えてみた、ピアノを弾いた事はあんまり無い。
でも照さんがあの日弾いてた曲は鮮明に覚えてる。
実際弾いて貰えたら記憶出来るだろう・・音を探りながら鍵盤を押すから変なメロディになるね。
仕方ないから以前テレビで見た事のある演奏者の映像を記憶の棚から出し
目を閉じると頭の中の映像に沿ってその曲を弾き始めた。
「で照の話したい事ってのは?」
一方の照達はレッスン場に着き、宮舘が扉を閉めたのと同時に深澤が声を発した。
わざわざ場所を変えてまで話したい事となると仔細が気になる。
「・・俺も今日滝沢くんから聞かされた事なんだけどさ」
深澤が話を切り出した事で全員の視線が照へ注がれ
照も全員の方へ向き直り、数秒間をとってから重い口を開いた。
が熱を出した日、誰か1人だけでも良いから早抜け出来ないものかと滝沢に交渉しに行った事から
「ああーあの時ね、照が交渉しに行ってくれたおかげで阿部が目黒と行けたんだよな」(ふっか
「うんうん、・・あ!その菓子折りのお礼」(阿部
「お礼は言っといた今はそれじゃなくてもっと別の事な」(岩本
「何かマジっぽい顔してんなぁ・・・」(佐久間
話の流れでお礼を言い忘れてた事も思い出した阿部。
だが今回の件はそれじゃないと一瞬で照が否定する。
それならわざわざ場所を変えて話す事ってなんだよ
と5人の目が改めて照に注がれ、少しだけ目線を彷徨わせた後照は説明を続けた。