6人の兄達に送ったグループLINEチャット。
返事を待ちつつは朝ごはんを食べ始めた。
その頃の6人。
あれからジャニーズ事務所に到着。
地下駐車場に停められた移動車から挨拶をしつつ降りて行く。
借りる部屋の鍵を借り、6人でエレベーターに乗り込んだ。
「おい佐久間、お前もう少し気をつけろよ?」(岩本
「あ、うんホントごめん」(佐久間
「厳しく言ってるけど確かに正しい事だからね、くん守れるのは俺達だけだからさ」(ふっか
「俺らも改めて気をつけよう?2年間だけとは言えくんは俺らの末っ子だし」(舘さま
翔太も、ね?と優しくだが言い訳をさせない声音で宮舘が隣に立つ翔太に念を押す。
少しムスっとした顔の翔太はコクリと頷き、ごめんと呟く。
この会話を聞きながら照は少しギクリとした。
聞かれたから答えたと言えばそれまでだが照は滝沢にの存在を話している。
滝沢という人物の器を信じて打ち明け、念の為一般人だから何処にも話していないと断りは入れた。
それでも何れはメンバーに話しておく必要がありそうだなと照は感じ始めている。
隠し事と言うのは隠しきれないものだから。
Snow Man内でも隠し事はナシみたいな決まりが自然と出来上がっていた。
決まりって言うのはちょっと堅苦しいな?
自分達で言うのもあれだが、比較的何かあると黙っておかずに何でも話し合ってきた方だと思う。
多分・・5年か6年くらい前からそうして来た。
何でも隠さず話し合う事で今があるんだから今更隠すのは変なレベル(どんな
取り敢えず話すのは早い方が良いと感じ、今日の最終確認を終えてから話そうと照は決めた。
控室代わりに借りた部屋を開錠して各々の荷物を置いて行く。
今日の最終確認は、全体の流れを一度通してのチェックだ。
振り付けの最終確認もしたり、立ち位置の確認とかも行う。
レッスン場に移動するまでの間に照達はグループLINEに返信した。
きゅうりとネギが不得意、と照。
深澤と翔太は特にナシ(管理人がまだ知らないだけかもしれません)
宮舘は大豆製品と牛乳が得意ではないと打ち込む。
佐久間はお茶系が苦手と投下。
阿部も不得意な食材を入力してからiPhoneをズボンのポケットに入れる。
皆がレッスン着に着替え始める中、宮舘だけが追加の文章を個別のトークに打ち込んで送信。
¨食材は一応多めに保存してあるよ、もし欲しい食材があったら俺とのトーク画面に打ち込んどいてね¨
そう送信すると宮舘もレッスン着に着替える為、荷物を整理し始めた。
好きな食材を聞かず、不得意な食材を聞く辺りにの気遣いと料理を作れる人特有のものを感じ取る宮舘だった。
想像の範囲だが料理をある程度得意とする者は好きな食材で作れるものを考えるのではなく
相手が不得意とする食材を除いた他の材料だけで料理を作れる腕を持っている事になる。
宮舘も料理を作る事が趣味で、イタリアンすら自作出来る腕前を持つ。
自らも経験者だからこその個別トーク送信だ。
の問いかけから彼が今夜食事を作ろうとしてるのを察した。
どんな食事を作ってくれるのか今から楽しみだね。
「そろそろ行くか」
粗方準備が整った辺りでそう声を出したのは照。
他5人もすぐ応を返し、控室から6Fのレッスン場へと移動開始。
もうすっかり使う事が当たり前になりつつあるこの6Fのレッスン場。
何となくつい昨日の事を思い出したが、今ではそれも良い思い出だ。
レッスン室に入ると既にコンサートに関わるスタッフ達は揃っている。
皆口々に入りながらスタッフ達へ挨拶と会釈をし、室内へ入った。
24日に迫るジャニーズJr祭りは横浜アリーナで行われる。
全てのジャニーズJrが集結して行われるコンサートで規模もデカイ。
翌25日はSnow Man初の単独コンサートが行われ、メンバーの1人宮舘の誕生日でもある。
その事も本人に内緒でサプライズを用意する予定だ。
単独は25日のみ、26と27日は再びジャニーズJr全員でのコンサートに戻る。
1日ではあるが単独でやらせて貰えるのは物凄く嬉しいし楽しみで仕方がない。
「おーし、張り切るでやんすよ!」(佐久間
「張り切るのは良いけど気は抜かんようになー?」(ふっか
「今日は本当に本当の最終確認だから、分からんままにしないでちゃんと言うように」(岩本
「勿論俺多分照に聞いたりするかもしれないから宜しく」(阿部
「ん、分かった」(岩本
張り切る佐久間に釘をさす深澤に対し、若干目を逸らして応える辺りが怪しい。
それでもまあ言う時は言うしやる時はとことんやる佐久間を皆理解していた。
翔太と宮舘も頷き、通し確認の為の立ち位置の場所を確認しに鏡の前へ。
曲目曲順は全員が把握済み、後はこの流れに沿ってスムーズに進行出来るかのチェックだ。
ダンスの振りと位置もその都度確認したり修正したりする。
この一連を行う事2時間弱、一先ず全体の流れは確認を終えた。
ジャニーズJr全員で行うコンサートの確認より、単独の日に行う方を重点的に確認していく。
自分達がメインで自分達が主役の単独コンサートだ、夢見ていただけに力も入る。
これがデビューに繋がると決まった訳じゃないが一歩前進したようにも感じられた。
今の時刻が正午を迎える頃に休憩を入れる事とした6人。
各々で食事を摂り、食休みを挟んだ残り時間で更に詰めた確認をする。
随所のアクロの確認も入れるし、色々盛りだくさんだ。
「俺らは食堂行ってくるわ」(翔太
「1時間後くらいには戻れよ?」(岩本
「はいよ」(阿部
ストイックにアクロと振りのチェックを詰めていた照に声を掛けたのは珍しい組み合わせ。
翔太と阿部の2人が食堂で食べて来ると言づけ、レッスン場を出て行った。
見渡せばレッスン場にはまだ照を含め、3人ほど残っている。
宮舘もまだ自分のパート部分のチェックを入念にしているし
佐久間も佐久間でアクロの踏み切る位置を確認したりしていた。
振り覚えの遅い阿部が先に食堂に行くのもまた珍しい・・
まあ確認したい事があれば阿部も言ってくるだろう。
本番前だし明日は記者会見もあるから、あまり煮詰めるのも逆効果だ。
て言う事で照も一旦チェックを中断、深澤へ俺もメシ済まして来ると言付けてレッスン場を出る。
何歩か歩いた辺りで何となく思い出す数日前の記憶。
が風邪を引き、誰か1人だけでも良いから早抜け出来ない物かと滝沢に掛け合った日の事。
判断基準にする為にの事を聞いて来たとこの時の照は思う事にしていた。
質問を幾つか受けてから2週間近く経過しようとしている。
その間特に滝沢からの事を聞かれる事もなかったから忘れそうになっていた。
まさに絶妙なタイミングで照はまた誰かに呼び止められる。
つい数秒前まで考えていた2週間と同じように左側から声が飛んで来たのだ。
既視感を覚えつつ声の方を向いた瞬間、ギョッとしたのは言うまでもない。
「岩ちゃん今良いか?」
まるで2週間前の事を再現してるかのような滝沢の登場に口があんぐりと開く照。
正直今度は何だろうと内心警戒心丸出しになっていた。
流石に今回はの事じゃなくコンサートとか稽古の話をしに来たんだろうと予想。
しかしまた予想を裏切る言葉を滝沢は口にした。
お前ら全員が虜になってる末っ子くんは元気にしてる?と。
滝沢歌舞伎に関する用事だと思っていたが・・やたらと滝沢はを気にしている。
「――はい、お陰様で風邪も治ってます あと菓子折り有難うございました」
「そのくらい当然だから気にしないで」
でも一応聞かれた事には答え、目黒に持たせてくれたお土産の礼を言葉にした。
何だかんだレッスンの方もあったりで滝沢に礼を言えていなかったのである。
漸く言う事が出来て照も一安心・・したが、純粋な疑問も湧いた。
何故やたらと一般人にすぎないの事を気にするのかについて。
身内贔屓をするつもりはないが、の容姿はかなり目を惹くし整っている。
気も利くうえに経歴も凄まじくまさに天才の名に相応しい末っ子だ。
阿部が努力の天才なら、は生まれついての天才だろう。
本人はまだ誰にも話していないが、備わっていた能力が目覚めたのは2年前くらい。
伯父から逃れたい一心で無我夢中で勉強に励むうち、眠っていた能力が開花したのだ。
特異な特技と自称する能力は周りにひた隠しにしているが
クオーターやハーフ故の虐めや、能力の開花を迎えてからの苦悩を経て今も戦い続けている。
「岩ちゃんたちはさ、くんの持つ才能に気づいてるかな」
場所を滝沢の使う控室へ移した辺りで発せられた言葉。
才能というのは・・・天才故の頭の良さの事だろうか?と首を傾げる照。
「くんは凄い子だよ、彼は兎に角物覚えも良いし¨目が良い¨」
滝沢の言う目が良いが意味するのは視力ではなく
動体視力と言っておくべきか、兎に角対象の動きを捉える事に優れているらしい。
どこまで捉えられてるのかは細かいSnow Manの振り付けを完全再現した事で証明出来ている。
視覚で捉えた早くて細かい振り付けを脳に記憶し、再現する事にも長けているとの事。
あれぞまさに天賦の才だ、彼みたいな子はかなりの逸材だと思う。
(まだ滝沢は瞬間記憶能力者とは気づいていない&そういう表現を知らない)
とまあ大絶賛を滝沢は照相手に語った。
これを聞いた照・・・滝沢秀明に此処まで言わしめたの才が強い興味を湧かせる。
わざわざその話をしに来たのは何なのかは不明、院生なんですよと話したら
間違いなく滝沢は更にに対する興味を強くするだろう。
「・・・」
何となく滝沢が言わんとする言葉が予想出来てしまい、照は暫し押し黙った。
素晴らしい才能に溢れるを、滝沢がこんなにも絶賛している事はかなり嬉しい。
というか、滝沢はいつそのに備わる能力や良さを知ったのかが引っ掛かっていた。
会わせた事もないしそもそもの優れた能力を自分は滝沢の口から今初めて聞いて知った。
は自らひけらかす事もしないし驕る事もしそうにない・・・
何故会う前からこれ程に把握しているのか・・まさか?という考えが現実味を増す。
照がある程度の予感を感じたのを見計らったかのように滝沢が言葉を続けた。
「彼には何日か前、此処に招待してお前達のレッスンを見学して貰ったんだよ」
その時に類稀な才能と素質、優れた能力を見たと話す滝沢。
マジすか、と吃驚して言葉が詰まる照。
招いた理由も気になるが、それなら前以て言って欲しかった気もする。
「・・それはまた、どうしてですか?」
「折角なら兄であるお前たちがどんな仕事をしてるのか知っておくのも良いと思ったんだ」
がシェアハウスで暮らすようになってから約2週間、一度も聞いてこなかった。
でも滝沢くんには自分の気持ちを話したって事だよな・・?
俺自分で言うのもアレだけど、結構から信頼して貰えてると思ってたんだよねー・・
何れはに話すつもりでいたし、ただ、完成したステージでのパフォーマンスを見せたいと考えてた。
だからあいつ自身の気持ちとか話してくれると思ってたけど
でもまだ信頼されてなかったんかな、何か落ち込みそう。
その気持ちは表に出てしまい、少し伏し目がちに照は呟いていた。
「・・・・あいつ・・俺らには見学したいとも仕事は何をしてるのかすら聞かなかったのに」
「くんの口から聞きたかった?」
「そうっすね・・俺ら日は浅いけど暮らし始めて2週間くらい経ちましたし、少しは信頼してくれてると思ってました」
優しく促す滝沢に意外なほど包み隠さず照は思っていた事を言葉にして話してみる。
暫くは照の話を静かに聞いていた滝沢だったが、中々鋭い言葉を口にした。
「じゃあ逆に聞くけど、岩ちゃん達から彼に自分達の仕事はこういうんだよって話したの?」
「いえ・・・話してないです」
「なんで話してあげないの?」
「それは・・まだ俺ら、デビューしてないから・・・」
「成る程ね、そこがあって話せなかったんだな」
「・・・はい」
「俺はくんじゃないから本当の事は分からないけど、何となく察して聞けなかったのかもしれないね」
「かもしれないっすね・・」
滝沢に言われた言葉は鋭くて、何とも言い返せなかった。
何で聞こうとしないのか、そればかり考えてたけどもから聞いたりは出来ないよな・・
未だ俺達に遠慮して頼ろうともしないんだ、よくよく考えずとも気づけたであろうの性格。
「あとはアレかな、岩ちゃん達の性格からしてまだ学生のくんに面倒掛けたくなかったから言わずにいたんだろう?」
黙り込んでしまった照に対し、少し苦笑した滝沢から言葉を向けられる。
中々に鋭い指摘だ・・確かに考えなかった訳じゃない。
自分達が大学院側に芸能人だと知れ渡れば、若しかするとが良くない目に遭わされるのでは?
そういう懸念もあって未だには裏口から行き来して貰ってる。
一部の院生や講師陣は阿部と関わったのもあって芸能人だと知ってるが極力伏せてくれている。
最近も緊急事態が起きたから医務室の保険医、居合わせた講師と静という女子院生には養子同士の兄弟と話してある。
出来ればの卒業まで俺達の関係性が伏せられたままであって欲しい。
沈黙を肯定と見なした滝沢、長年舞台やステージを共にして来ただけの事はあり
照達が思い悩む理由もおおよそ言い当ててしまった。
「まあ兎に角何を言いに来たのかと言うと、くんや岩ちゃん達が良ければまた見学に呼びたいと思ってる」
――えっ?
滝沢の去り際の言葉に振り向くが、既に立ち去る背中が少し先を歩いていた。