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《ゲンコツサーマルの会》は群馬県・長野県でサーマルをヒットするパラグライダークラブです。

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鈴木ドンの昔話【3】suzuki's tale 3

特選傑作集 / 鈴木ドン作

パラグライダー昔話 / 須坂村のカッシードンの巻き

airbow

Airbow

 『須坂の風』で思い出すのは、妙徳山のてっぺん に始めて行き着いたときのことじや。『えああぼう』という『ぷろでざいん』初の『はい あすぺくと ぐらいだぁ』
 乗り始めたばかりのころじゃった。たぶん、『須坂村』『おうぷん』したてのころ(1年目か2年目)で、《山頂を完全に『とっぷあうと』したのは1番乗りかも》なんて話もしていたと思うんじゃが。
鈴木ドン

鈴木ドン

 そのころ、『須坂の飛び村』では、まだ『ていくおふ』の尾根に沿って飛ぶ村人がほとんどじゃった。『ていくおふ』の左側の谷に飛び込む『あほう』など、と~んとおらんかった。ところが、このとき『ていくおふ』の前でちょっと上がった鈴木ドンは何を思ったか、左の谷に飛び込んだのじゃ。だ~れもいない左側の尾根がとっても気持ちの良いところに見えたんだそうな
 須坂村には昼過ぎて、いつもの『ぶろう』が入りだしとった。「せんたりんぐ」なんぞ、まだほとんどしたことない鈴木ドンは、斜面に沿って流れ上がる『さあまる』をえっちらおっちら、こすりあげるように乗り継いでいったとさ。いたずらな風っ小僧が、鈴木ドン『えああぼう』を揺すったりしたが、鈴木ドンはいつになく前向きな気持ちでおった。いままで、飛んだことのない尾根から見る、いつもとちょっと違う須坂村の景色が、鈴木ドンを夢中にさせとったようじゃ。
須坂村

須坂村

 こんとき、まだ、鈴木ドンは、自分を追い掛けてきている1人の村人に気付いておらんかった鈴木ドンは、後ろ側の上の方に見えている、妙徳山頂がだんだん近付いてくるのに興奮しとったんじゃよ「ず~とたけえと思ってた山頂まで、もう、いくらもなかんべえ。こりゃあ、すげえことだでなあ」とな。
corrado

Corrado

 そのとき鈴木ドンの胸のあたりから緊張した声がしただよ。空で話せるように、村人がみんな持ってる「糸なし電話」が叫んでたんだ。そうして、始めて鈴木ドンは自分の周りや状況を見回しただ。飛び出し場を見ると、風見さまが真横でよう。村人が総出で押さえてねえと出られねえぐらい、風っ小僧が暴れだしてただ。それよりも鈴木ドンが驚いたのはなあ、見覚えのあるぴんく の「こらあどが、鈴木ドンの飛んだあとを追っ掛けて来てたことだあ。「あんれま、あれは今日始めて須坂村を飛ぶカッシーどんでねえべか」。
カッシードン

カッシードン

 鈴木ドンが思った通り、カッシ-どんじゃった。以前、カッシ-どんは群馬の尾瀬岩鞍村の飛び師匠に習ってたのじゃ。ところが「おら、こんな村やだ~」と、掟やぶりの村抜けをして、菅平村にたどり着いたのじゃよ。尾瀬岩鞍村ではたけえとこも飛んでたカッシ-どんじゃったが、「おめえは、まだ、へたくそじゃ」と、中台村長に言われて、しばらく菅平村で修練しとった。この日は、初めての須坂村だったのじゃ。
 おっと、いいとこまで話したんじゃが、わしゃあ、もう眠うなってしもうたわ。この続きは、またの機会にしようかのう。まあ、年寄りのことじゃて、いつになることやら、いつまで続くやら、わからんがの。年寄りの話は長くなるものと、相場は決まっとるんじゃ。まあ、じゃけんにせんで、つきあっておくれよのお。はっはっは。