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《ゲンコツサーマルの会》は群馬県・長野県でサーマルをヒットするパラグライダークラブです。

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鈴木ドンの昔話【1】suzuki's tale 1

特選傑作集 / 鈴木ドン作

パラグライダー昔話 / ケストレルの巻き

鈴木さん

鈴木さん

 長いこと飛んでます。ハングの練習に朝霧に通いだしたのは1983年、23歳だったでしょうか。翌年、講習中にサーマルで今までにない高さに上がってしまい、頭も舞い上がって、失速させ腕の骨を折りました。母親から「空を飛ぶ遊びだけはやめてくれ」と言われました。
 2年後に「パラシュートみたいなものを使って斜面を降りる遊び」を始めました。 さらに2年もたつと、斜面を降りていたはずが、なぜか空を飛んでいました。そのころよく行っていたのが白馬の五竜とおみです。滑空比が5.25もあるケストレルという、そのころのコンペ機に乗っていました。ブレークコードを頭の位置まで引くとバイクで峠道を攻めているようなGとバンクがかかり、胸まで引こうものならジェットコースターに乗っている気分が味わえる楽しいパラでした。
 ある月曜日、五竜とおみは晴れていて、今ならサーマルがよく出そうな日でした。当時はそういう条件でもサーマルは出ませんでした。そのかわり、普通に飛んでいても妙に揺れたりするのです。その揺れるところで360度旋回をするようなアブナイ人はそのころいなかったのです。360度旋回をすることが、なかなか大ごとだった時代。その頃よく姿を見かけた、
入澤ドン

入澤ドン

某、入沢幸夫という人が五竜の隣の飯森エリアで7回360度旋回をして「これは伝説になる」と、息巻いていた、そういうのどかな頃じゃった。それでなあ、その日の鈴木ドンのケストレルはいつもより、ちょっぴり長く飛んどった。800mのテイクオフから飛び出して、5分後には降りてることが多かったのに、20分ほど空にいたんじゃ。そしたらなあ、五竜の神様が「わしの背中をいつまで飛んでるんじゃあ!」と怒りなさってのお。ようやくランディングしようとしていた鈴木どんにフーッと息を吹き掛けたそうじゃ。
鈴木ドン

鈴木ドン

 あと20mほどで地面に足が着くと用意していた鈴木ドンは、ランディングの上でいきなり100m以上の高さに上げられてしもうた。「ここの竜神様はお怒りじゃあ」と慌てた鈴木ドンは、隣の飯森のランディング場に逃げていったんじゃ。それでも竜神様は見のがしてくれなんだ。あと5~6mの高さまで降りてきた鈴木ドンのケストレルを爪の先でチョンと弾いたんだとさ。哀れ、鈴木ドンはストーンと落ちてのお、足の骨を折ってしまったそうじゃ。
空飛ぶ村びと達は「ローターのたたりじゃあ」、「いや失速の神様の怒りじゃ」と、やいのやいの騒いだそうじゃ。それで鈴木ドンは、もう空は懲り懲りじゃと言ったと思うじゃろ。ところがのお、鈴木ドンはよっぽど打ち所が悪かったとみえてのお、村の若い衆を集めて「すかいじゃんきい」とかいう寄り合いを作っての。ますます竜神様の背中で飛んでるってことじゃ。今じゃ竜神様もあきれてしまっての。あんまりちょっかいも出さんそうじゃ。まあ、あんまり悪さをせんで遊んどるのが良いってことじゃのお。昔むかしの物語じゃ。若い者にはちょっと退屈じゃったかな。あっはっは。まあ、年寄りのざれごとじゃ。軽く聞き流してくれれば、いいんじゃよ。
あ、何を書いてたんだっけ