アシマ   上演時間 1時間30分

脚本 若林一郎  演出 大野俊夫  音楽 岡田京子  美術 新谷優子  照明 白井良直  振付 熊谷 章

*現在休演中*


 中国のずっと南の方。 強い部族に追いやられた心やさしい族は苦しい暮らしの中で「元気をください」と神に祈った。 大空から花びらが降るように産声をあげた。民族の宝物、香り高く美しい娘・アシマ。 みんなにかわいがられ、すくすくと大きくなったアシマ。 兄さんのアヘイとくるくる働き、楽しい歌声でみんなの心をはずませた。 ところがこの年、アシマの身に恐ろしい不幸が降りかかってきた。

 お金持ちのルプパロウとその息子のアジーは、ひそかにアシマを嫁にしようと考える。 しかしアシマの心はお金や品物では動かない。 ついにはいやがるアシマを連れ去り、思うようにならぬと見るや、牢に入れてしまう。

 アシマを助けにきたアヘイは、謎解きに勝てばアシマを返してもらえることになる。 勝ったアヘイ。だがルプパロウとアジーにだまされ虎のえじきに… しかし村一番の力持ちのアヘイはみごと虎を退治しアシマを助けだした。

 帰るアシマとアヘイを阻止しようとするルプパロウとアジーは川の堰(せき)を切ってしまう。 押し寄せてくる水にのまれアシマは水の中へ。 川底にすむ川の女神は、心やさしいアシマをこだまにした。




 ●心の豊かさを求めて●

 日本にアイヌ民族や朝鮮民族のひとたちがいるように、中国にはたくさんの民族がいます。 ウーロン茶で有名な雲南省のサーニ族もそのひとつ。 歌と踊りを愛し、自然と共生する民族です。

 そこに伝えられる「阿詩瑪」という物語はつい最近日本に紹介されました。 貧しくとも誇り高く清らかに生きるサーニの人々の勇気とやさしさに満ちた宝石のようなお話です。 その物語の中身は、物質文明が浸みついた私たちにはときには理解できない程の 『心の豊かさ』というものを強く感じさせてくれます。

 精神の豊かさにうらうちされた文明こそ真の文明といえるのでしょう。 雲南省は、日本人のルーツといわれ、様々な文化の共通点があげられています。 ところが、今の私たちの暮らしは、すっかり変わってしまいました。 環境破壊や差別、そして戦争社会の中で失ってしまった『心の豊かさ』をなんとしてもとりもどす為に 雲南からの声に、子供たちと一緒に耳をかたむけたいと思い製作しました。




 ●アジアへの視線  脚本 若林一郎●

 北海道のアイヌの人たちの自然への接し方が、われわれと違うのにすっかり感心したことがあります。 例えば山の泉の水を汲むとき、彼らは水に断ってから汲むのです。 魚を探すために川の石をひっくり返したとき、彼らはそれを必ず元通りにして置きます。

 『アシマ』という叙事詩にめぐりあって、 それと同じような感性が中国の少数民族にもあることを感じました。 そういう感性は、私たちのルーツとも深く関わりあっているようです。  けれども、それをいまの私たちはすっかり忘れてしまっています。 こういう感性を、どうやったら子供たちにもう一度感じとってもらえるかということが 『アシマ』を台本にするときの私の課題となりました。

 日本人は外国というと、すぐにアメリカを思い浮かべます。 そして若い人たちの感性もアメリカ人に近づいてきているようです。 しかし、二十一世紀を迎えた子供たちには、まず身近なアジアの民族への興味を抱いてほしい そして異なった民族の価値観を理解し、尊重するように育ってほしいと思います。 この芝居のもたらす感動が、そのために役立ってくれれば、と願っています。



劇団ブナの木
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